先回、デジタルマーケティングにおけるアクセス解析の位置付けについて説明した。今回は、アクセス解析における基本的な分析手法である“セグメンテーション分析”について説明したいと思う。
セグメントはMECEに分けること
言い換えると、ヌケモレなく・ダブりなく指標を分ける、ということだ。 そもそも分析とは、全体像から分けた対象物を比較することで、それらの関係性(何らかの傾向、相関性、突出した数値、ターニングポイントの有無など)をつまびらかにする作業のことである。したがって、全体像を表しきれていない分析や、重複のある対象物を比較した分析は、筋の悪いアウトプットしか出せない。
たとえば、調査パネルを持つ企業にアンケート調査を依頼する時には、こうした分析設計(対象者、設問など)を予めきちんとしておくべきだ。さもないと後々、分析をする段になって「何も言えない」というオチが待っていることもある。事前に立てた仮説を基に、「仮説検証するにはどんなインプットが必要だろうか?」という問いに答えられる分析設計をしておくと良いだろう。
新規・再訪問で分ける
新規訪問/再訪問で集計する手法。新規訪問の方が検索経由での訪問が多かったり、再訪問の方がCV率が高かったり、一訪問あたりのPV数が高かったり、直帰率が低かったり・・・こうしたデータから、売上向上/コスト削減につながる施策を考案する。
特に、訪問回数でセグメントを分けることは、ユーザーの心理を洞察することにつながる。何度目の訪問でユーザーは意思決定をしているのか?という問いに答えることは、再訪問という事象をどう捉えるべきかの方針策定に貢献することだろう。
流入元(参照元)で分ける
直接流入、検索流入、他サイト流入でそれぞれ集計する手法。検索流入の方がCV率が高かったり、ある流入元のスパイクがあった後に異なる流入元の訪問数が増えたり・・・という様な事象が確認されたりする。 最近のアクセス解析ツールでは、ソーシャルメディアを他サイトと区別して集計しているツールも存在する。参考に、Site Catalystでどの流入元がソーシャルメディアとして定義されているのか?そのリストを見ていただければと思う。(List of social networks)
また、広告流入やメルマガ流入を区別するような設計とすることも大切だ。一般的には、ツール上ではそれぞれ他サイト流入や直接流入に区別されているため、これらの流入にツール上でフラグを立てて管理することが必要になる。 尚、「直接流入」と一言でいっても、その内訳には様々なトラフィックが存在している。直接流入は、別名“ノーリファラ―”と称される。すなわち、アクセス解析ツールが流入元を表すデータ(≒リファラ―)を取得できないトラフィックが「直接流入」に分類されているのが実際なのだ。
こうしたトラフィックには、ブックマーク/お気に入り、URLの直打ち、Outlookなどのメールクライアント経由の流入、https通信→http通信への遷移によるセッション切れなどが含まれる。 直接流入とは、斯くも“曲者”な事象なのである。
デバイスで分ける
PC、スマートフォン、タブレット型端末、フィーチャーフォン(ガラケー)でそれぞれ集計する手法。PCで閲覧するユーザーはクレジットカード決裁のフォーム遷移での離脱率が少なかったり、スマートフォンで閲覧するユーザーはソーシャルメディア経由の訪問が多かったり・・・という様な事象が確認されたりする。
スマートデバイスの普及が進んだ昨今、Webサイトのスマートフォン対応/フィーチャーフォン対応の実施是非について頭を悩ます担当者も多いことだろう。
いつ、どのタイミングで、何の目的で対応すべきか?たとえば、スマートデバイス経由の訪問数の経時的な変化を、増加率も含めて検討することで、こうした問いに答えるためのインプットの一つになりうるだろう。
「ある事象」と「その他」で分ける
コンバージョンした/していないユーザー、直帰した/していないユーザー、特定のページを閲覧した/していないユーザー・・・などなど、ユーザーの特定のアクションをしたデータとそうでないデータを分けて集計・分析する手法。
こうしたセグメントは、アクセスログ解析ツールのデフォルト設定には用意されていないこともあるため、自由な発想で独自のセグメントを定義することもありうる。
どのようなアクションに注目すべきかは、サイトの特性や目的に依って異なると考えられるが、一般的には先述の様なアクションを見つつ、これまでの分析で気になるポイントを深掘りしていくような形になることが多いだろう。
この分析作業の時間帯効果はアクセス解析ツールの理解度や担当者のスキル・ナレッジに依存するため、管理者は適宜必要なリソースを考慮すべきだろう。 以上、ざっくりとではあるが、セグメンテーション分析手法の全体を見てきた。今後のアクセス解析の一助となれば幸いである。