CMS比較にフォレスターの調査を活用してみる
CMSの比較をする際に、どのようなCMSを比較対象にすべきかに迷うと思います。
そうした時には、フォレスターやガートナーの調査から示唆を得ることが有効かもしれません。こうした調査は、市場で一定のシェアをもつCMSを定期的に調査し(評価の信憑性はどうあれ)比較に有効な情報を与えてくれます。
フォレスターリサーチによる最新のCMS(コンテンツ管理システム)評価「The Forrester Wave™: Web Content Management Systems, Q1 2017」がちょうど先日発表されました。
フォレスターによるCMS比較と評価
The Forrester Waveによれば、Adobe、Acquia、Episerverが最も評価が高い「リーダー」に、Hippo、Sitecore、SDLが次に評価の高い「ストロングパフォーマー」に選ばれています。
一方、HPからOpenTextに資本が変わったTeamSite、買収したFatWireとOracleUCMを統合しつつあるOracleなどは「コンテンダー」と評価が低くなっているようです。
今回は「The Forrester Wave™: Web Content Management Systems Q1 2017」で評価の高い6つのCMSを、「2017年に注目すべき6つのCMS」として紹介します。
Adobe Experience Manager(Adobe)
Adobe Experience Managerは、Adobeが2010年に買収したDay社のCQがベースとなっているエンタープライズ向けCMSです。国内でも錚々たる大手企業に採用されるハイエンドCMSです。
Adobe Creative Cloudとの連携やグローバルサイトへの展開機能、優れたユーザーインターフェースの管理画面などを搭載するAdobe。コンテンツ管理からエクスペリエンス管理へとCMS業界をリードするAdobeは2017年も注目すべきCMSの1番手と言えるでしょう。
Acquia(Acquia)
Acquiaと聞いてピンくる方はあまりいないかもしれません。CMSに詳しい方なら「Drupal」の・・と言うとピンと来るかもしれません。
Acquiaは、オープンソースCMS「Drupal」開発者のDries Buytaertがエンタープライズ利用を目的に立ち上げたプラットホームサービスで、企業がDrupalを導入する際に活用されるプラットフォームです。Drupalはバージョンも7から8へと進化し、オープンソースCMSの牽引役としてますます注目を浴びそうです。
参考:デジタルマーケティング担当者が今知っておくべき4つのオープンソースCMS
Epi Server(Epi Server)
Epi Serverも国内ではとてもマニアックなCMSです。筆者の知る限り日本企業でEpi Serverを導入している大手企業は1社しか知りません。
Epi Serverは米国ニューハンプシャー州とスウェーデンのストックホルムに本社をベースとする企業。.NETアーキテクチャを採用しているCMSです。.NETアーキテクチャーと言えば「Sitecore サイトコア」のイメージがありますが、Epi Serverも.NETベースCMSの選択肢になると覚えておきましょう。
Hippo(BloomReach)
今年1番の注目はこの「Hippo」に間違いないのではないでしょうか。市場認知がほとんどなかったところから、突如としてストロングパフォーマーとして評価されたことは、欧米のメディアでも大きく取り上げられています。
Hippoは1999年から続くJavaベースのオープンソースCMS。昨年2016年に、BloomReachに買収されています。オープンソースなのに私企業に買収される、というのがなかなか理解できないところではありますが、ソースコードはオープンになったままのようです。
HippoはContent as a Service (CaaS)という概念でCMS業界において非常に注目を浴びています。特にパーソナライゼーションなどのデジタルエクスペリエンスの提供に強みをもっており、Forresterだけでなくガートナーの調査などでも高い評価を受けています。2017年の一番の注目の的です。
Sitecore(Sitecore)
Sitecoreは、デンマークに本社を置く企業で、.NETベースのCMSを開発販売しています。国内で.NETベースのCMSを選ぶならSitecoreが有力な選択肢となります。
Sitecoreの強みも、マーケティングオートメーション機能やパーソナライゼーション機能などのデジタルマーケティング領域。特にEメールキャンペーンの機能もサポートしているところは独特で、CMS単体でコンテンツだけでなく、キャンペーン管理・マーケティングオートメーションまで実現することができるのが特徴です。
SDL Web(旧Tridion)(SDL)
SDLは、1992年にイギリスで設立された企業で、CMSだけでなく翻訳支援ソフトなどで有名なソフトウェア企業です。Tridionというブランド名は最近「SDL Web」と改称され、デジタル体験の向上を支援するパーソナライゼーションの機能が充実してきています。
SDLの特徴は、何と言ってもグローバル対応とローカライゼーションです。グローバル企業が全世界のWebサイトの管理・翻訳などをスムーズに行うことができるよう、グローバル関連機能が充実しています。
CMS比較で注目したい6つのCMSからの示唆
以上、2017年に注目したい6つのCMSを紹介してきました。
コンテンツ管理からエクスペリエンス管理への発展
Forrester Waveの評価を俯瞰すると、「コンテンツ管理をドキュメント管理・ファイル管理」と、捉えられてきたCMSから、「デジタルエクスペリエンス(パーソナライゼーションなど)」機能を充実させてきたCMSへの世代交代が現実となりつつあるのかもしれません。
しかし、こうしたトレンドがどこまで進むのかは色々な意見があるでしょう。筆者個人的には、MA(マーケティングオートメーション)やDMP・CDP(カスタマーデータプラットフォーム)がどんどん市場に浸透していく中で、CMS自体のデジタルエクスペリエンス機能が必要なのかは若干懐疑的に感じる部分もあります。
本来のコンテンツ管理機能に回帰する動きも
むしろ、CMSの本来の価値である、コンテンツの管理機能に注目が回帰するトレンドも考えられそうです。そうなると、ドキュメント管理やコンテンツのAPI提供、DAM(デジタルアセット管理)などに強みを持つTeamSiteやOracleなどのCMSが再評価される可能性もあると思っています。
そういう意味では、最近耳にすることになってきたヘッドレスCMSやContent as a Serviceというキーワードも重要かもしれません。コンテンツとプレゼンテーション(デザイン・レイアウト)を分離し、APIを利用してコンテンツの利用性をあげようという考え方です。
オープンソースの台頭
また、オープンソースがシェアを広げつつあることも注目です。近いうちに、Apache(Webサーバー)やPHP(アプリケーション言語)、MySQL同様にCMSもオープンソースが当たり前になる時代がやってくるかもしれません