テクノロジーやサービス、データをAPIで“つなぐ”ことで生まれる新たな価値

APIエコノミーという言葉を聞くことが年々増えてきていると感じます。APIとは、アプリケーション・プログラミング・インターフェース(Application Programing Interface)の略称です。概念も実装も古くからあるものですが、APIを利用してシステム間を連携させることは日増しに増えてきています。
 
APIとは「異なるシステム間で、データのやり取りを行うための標準化された取り決め」という意味です。コンシューマーとして考えた場合、実は意識せずにAPIを使っていることが、既に日常です。例えば、Google Mapで経路を見ているときに、徒歩・電車・車のとなりにUberが表示されると思いますが、これはGoogleMapとUberのサービスがAPIで連携しています。
 
また、FacebookのIDを利用して新しいサービスに会員登録したりする「ソーシャルIDでのログイン」などもAPIを利用した典型的なサービスです。既に私達のデジタル生活はAPIを利用してできているサービスの方が多いと言っても過言ではありません。

デジタルマーケティングの業務にもAPIは当たり前になりつつある

ある2つの異なるシステム、例えば「Web解析ツールのGoogle Analytics」と「データを可視化・レポーティングするBIツールのDOMO」があったとします。これらの2つのシステムをつなぎ、Webサイトへの訪問者データ(Google Analyticsに蓄積される)を、BIツール(DOMO)から閲覧したい時、どのようにつなげることができるでしょうか。
 
もちろん、専用のシステムを一から開発し、Google Analyticsからデータを抽出し、DOMOに渡すということもできると思います。しかしこれは、一からシステム開発をすることになりますから、時間もお金もかかります。
 
FTPを利用する、というのはよく使われてきた手法です。あるシステムからあるシステムに対してデータをFTPで定期的に置きに行く(もしくは取りに行く)といった形でデータのやり取りをします。ただ、これはデータの取得だけですし、「どのデータを」「どこに格納する」といった細かなことを実装するのは大変です。
 
APIの仕組みを使えば、Google Analyticsに蓄積されるデータを、BIツールに表示するための仕組みを設定し、ほぼリアルタイムにデータをBIツール上に表示することが簡単にできます。これは、両者の間でAPIに関する取り決めが予め標準化されており、自由にデータのやりとりができるようになっているが故に実現できるのです。
 
そして、こうしたAPIの標準化が進み、最近では(FacebookのソーシャルIDで会員登録する時のように)ノンプラグラミングでシステム間のデータのやりとりをできるようになっているテクノロジーが多く出てきています。

API同士で簡単につながることで成り立つサービスが多くでてきている

最近はGoogle HomeなどのAIスピーカーが話題です。このAIスピーカーなどは、APIエコノミーを代表する市場です。例えばGoogle Homeで家の電気(フィリップスのHue)をつけたり・消したりする場合、それらはAPI経由で繋がります。
 
他にも、Amazon のEchoでタクシーを呼ぶ際は、Alexaと全国タクシーのアプリケーションがAPI経由でつながっているために、「タクシーを呼んで」と話しかけるだけで全国タクシーのアプリ経由でタクシーが配車されます。すなわち、AIスピーカーは、世の中のAPIでやりとりできるWebサービスとつながることによって、その本質的な価値の提供ができるようになっています。

APIによる繋がりによって価値が大きくなる経済の仕組み=APIエコノミー

こうした、APIのよる異なるテクノロジーの繋がりをベースにサービス・価値が提供される経済の仕組みをAPIエコノミーと呼んでいると考えられます。IBMの試算によれば、このAPIエコノミーと呼ばれる市場は、2018年に2.2兆ドル(120円換算で264兆円)の市場となり、APIを持つサービスはここ数年間は150%以上の拡大を見せるだろうと予測しています。
 
通常、年率10%で成長する市場は急拡大市場だと言われていますので、1.5倍成長というのは非常に急激な成長市場と考えます。

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