今回は、筆者がMartechの出張時に体感したニューヨークエリアのデジタル顧客実体験事情をレポートしたいと思います。Martechの出張記事は以前お伝えしたものになります。 「Martechって何?」という方はぜひこちらのMartechイベントレポートも合わせてご覧くださいね。
>>アメリカのデジマケ界隈で話題のCDPから紐解く、これからの顧客データ管理とは?
空港では配車アプリ専用駐車スペースが設置されている
国境超えの旅の始まりは、入国審査官からの質問攻めから。その質問攻めをなんとかクリアしたら、次はホテルへの移動です。今回の移動手段はタクシーを選択しました。タクシー(正確には配車アプリ)というと、日本ではUberが有名ですが、ここではあえて日本未進出のLyftを使ってみました。
アメリカの空港には、写真のような配車アプリ専用の駐車スペースがあります。このスペースがあることで、その土地の土地勘がなくても配車場所を指定しやすいため、利用者とドライバーと合流しやすくなっています。これは非常に良い仕組みだと感じました。わざわざ整備の手間をかけて公共の場に駐車スペースが準備されているということからも、アメリカでの配車アプリの定着度合いが伺えます。
化粧品専門店SEPHORAで感じるデジタル接客とは
化粧品専門店のSEPHORAの顧客体験もお伝えしたいと思います。今回のアメリカ訪問の中では、SEPHORAのデジタル接客が、最も進んでいると感じました。
上の写真は、SEPHORA店内に設置されている端末です。ユーザーが肌やメイクに関する悩みをタッチパネルで入力していくと、ユーザー自身に合った商品が提案されるようになっています。
また、こちらの写真はSEPHORA店内に設置されているARミラーです。 ARミラーは、ARの技術を使って、自分が実際にその商品を使ったらどうなるかをバーチャルに体験することができます。もちろんメイクアップ商品は、店内のテスターを使って実際に自分の肌で試すことができます。しかし、試したメイクを落とすことを手間と感じたり、そもそも他人も使うテスターに抵抗がある、といった理由から、積極的に試したがらない顧客も多いのが実情です。 ARミラーでは、そういった顧客のニーズを十分に満たしていると言えるでしょう。
また、ARミラーでのタッチアップはパネルで即座に切り替えられるので、リアルで試すよりもスピーディに多くの商品を比較できます。結果として、商品との接点を増やすことができるため、顧客が気に入る商品と出会う確率が高まるのではないでしょうか。
Amazonカスタマーレビューが実現した、次世代の本屋
他にもAmazon.comのリアル店舗を訪問してみました。店内の本は、備え付けのバーコード読み取り機で価格がわかるようになっています。 Amazon.comの店舗というだけあって、Amazon.comのカスタマーレビューに基づいて書籍の紹介をしたり、レビュー数が10,000件を超える書籍といった自分たちにしかできない観点でコーナーを作っているところはさすがですね。
こちらのAmazon.comのリアル店舗ではAlexa搭載スマートスピーカーやKindleシリーズも販売しています。日本においてもKindleなどのAmazon.comオリジナル製品は、家電量販店で実物を見たり、試したりすることはできないこともあるので、いきなり通販で購入するのは迷うこともあると思います。
ECの業態のオリジナル製品はリアル店舗で実物に触れられるようにすることによって、バーチャルだけでは得られない安心感を与えられるのではないでしょうか。
さらば、アメリカ。旅の終わりに現地マックを堪能する
筆者は、海外旅行に行く際、必ずその土地のマクドナルドを訪問し、その国のお国柄を楽しむようにしています。 今回訪れたニューヨークJFK空港のマクドナルドでは、モバイルアプリで事前予約が可能でした。 事前予約が出来ることで、待ち時間が短縮されますし、心に余裕を持ってオーダーできますね。特に空港では乗り換えなどの時間がタイトなことも多いので、出国審査の合間に注文することができると、待ち時間をとても有効に使えると思いました。
ちなみに事前予約ができるのはマクドナルドのような大手フランチャイズチェーンだけではありません。ベーカリーカフェのような個人店でもアプリで事前予約ができました。 個人的には、事前予約が日本でもっと流行って欲しいと思います。事前予約のためのプラットフォームができたり、大手が事前予約プラットフォームを取り入れたりするなどのブレークスルーが起きることに期待します。NoShow問題はありますが、お店側だけがキャンセルリスクを背負うということはなくなるのではないでしょうか。
デジタルによるスピーディーでノンストレスな購買導線を実現するアメリカの小売店
今回のアメリカ出張で特に実感したことは、現金はおろか、クレジットカードすら使うタイミングがかなり減ったと言うことです。 もともとアメリカはクレジットカードの普及率が高いので、現金を使わないことは想定内だったのですが、UberやLyftのような配車アプリにクレジットカードが紐づいていることで、移動時にはクレジットカードを財布から出すことすらなくなり、非常に便利だと感じました。おかげさまで米ドル紙幣をほとんど使いませんでしたので、むしろ余ってしまっています。(笑)
最後に、アメリカでの小売店のデジタル施策に共通して言えることは、顧客が迷ってしまうような導線はデジタルを活用し、極力排除している、ということです。 その背景は、多言語・多文化国家であることや、はたまたニューヨーカーはせっかちで無駄な時間を過ごすのが嫌いだからではないかなど様々にあると推測します。
いずれにせよ、日本でも、顧客が迷って離脱するような導線をデジタルで排除・フォローし、迷わずスピーディに購買できる仕組みやUIをブラッシュアップしていくことが競合との差別化ポイントになると考えます。 海外への旅行や出張の機会がある読者の方も多いと思いますので、ぜひ現地の小売店でのおもしろいデジタル施策を探してみることをおすすめします。今回の記事が読者の皆様の新しい発見の参考になりましたら幸いです。