最近、日本でもTVCMが放映されるようになり中高生を中心に認知度が広まってきている動画投稿プラットフォームのTik Tok (ティックトック、中国語名:抖音)。
そのTik Tokは中国のメディア企業Bytedanceが提供するスマートフォンのアプリケーションです。
Tik Tokでは、音楽に合わせたオリジナルの動画を作ることができ、作った動画を全世界へ発信することができます。2018年6月には、全世界でアクティブユーザーが1億5,000万人に達し、2018年の第1四半期に世界で最もダウンロードされたアプリとなりました。Tik Tokの推定ダウンロード数は4,580万回です。
筆者がTik Tokを知ったのは2016年頃です。そして2017年には、あれよあれよと中国で大人気になり、10代や20代の若者は、ほぼ全員利用していました。今回は今注目すべきTik Tok のグローバル・ローカルそれぞれのマーケティング戦略についてご紹介します。
Tik Tokを提供するByteDanceのグローバルマーケティング戦略
ByteDanceのグローバルでのマーケティング戦略は、3つのポイントが挙げられます。
・ネットで人気を集めるタレントと、少なくともTV番組に出て通じるレベルのタレントを採用
・ユーザー数を増やすための技術強化
・Facebook、Twitter、Instagram、YouTubeといった各チャネル間の連携
ネット人気タレントとテレビ番組での人気タレントの採用
Tik Tokのようなサービスは、文化の違うグローバル市場に進出することが容易ではありません。
サービスを進出させたい地域のコンテンツ消費習慣や文化の理解不足などの問題は、サービスを提供する企業がぶつかる壁であり、それはByteDanceについても同じです。
TikTokがまだ中国国内で知名度が無いとき、Tik Tok 中国チームは、中国国内の人気サイト(weiboやkuaipaiなど)ですでに人気になっている人だけではなく、芸術学校のこれから人気になりそうな若者(いわゆるインフルエンサー予備軍)約300人を掘り起こし、TikTokを利用してもらうという投稿動画のフレームワークを設計しました。
フレームワークを作ることで一般の人でも動画が作りやすくなり、Tik Tokの人気は出始めました。
一方、日本進出の際には、中国国内で展開したときと異なった手法を取りました。それは初めからすでにインターネット上で人気になっているタレントとTV番組に出るような人気タレントだけを採用する、というものです。 また、インドネシアに進出する際には、BytedanceがTik Tok での人気ユーザーを集めてパーティーを行いました。ユーザー同士で自分の動画のアイデアを交換するなどTik Tok への帰属感と忠誠心を生み出す狙いがあったようです。インドネシアでインフルエンサー予備軍の若者とすでに人気のあるタレントを上手く活用して進出したと言えるでしょう。
このように、Bytedanceは、Tik Tokを各国に進出させる際に、その国に合った進出方法を選択しているのです。
ユーザー数を増やすための技術強化
Bytedance 技術(AIラボ)チームは、「Tik Tok 製品がグローバル進出の際に若者達にすぐ人気になる大きな理由のひとつは、Tik Tok製品がYouTube や Instagramなどにない様々な動画技術を備えていることだ」と言っています。
各チャネル間の連携
TilTokではユーザーが Facebook、Twitter、Instagram と YouTube などの他のSNSプラットフォーム上でもTik Tok のコンテンツを送信することができます。
ある国にて人気なコンテンツがある場合は、TikTokのコンテンツチームが他の国に適しているかどうかを判断し、他の国でも人気が出ると判断すれば、その国にコンテンツを投下します。こういったチャネル間の連携は非常に重要です。
ByteDanceのローカル戦略
続いてTik Tokのローカルマーケティング戦略ですがこちらはポイントとしては2つ挙げます。
・各国の文化慣行を理解したチームでローカライズコンテンツを作成
・その国での認知度向上のため、大規模なマーケティング投資を行う
各国の文化慣行を理解したチームでローカライズコンテンツを作成
グローバル市場を拡大するにはコンテンツの運用が最重要課題であり、それはローカライズされた運用でなければなりません。
Bytedance日本の代表は2001年に来日し、17年間日本で過ごしているため日本人の感覚をとても理解し、加えて、チームメンバーも日本に対する知見を多く有するメンバーが揃っています。日本という国の文化慣行を理解したチームを形成していると言えるでしょう。
例えば、日本は調和を大切にするカルチャーが強いため、チアリーダーのダンスなど学生がまとめて参加できるような形式をデザインします。『協調性を尊重する』という日本の文化に応えるためにTikTokはグループチャレンジにふさわしい企画をリリースしています。
認知度向上のための大規模なマーケティング投資
また、Tik Tok は日本で様々なリアル・デジタル含めさまざまなチャネルに投資を行っています。皆さんもなにかの媒体で、少なくとも『TikTok』という名前は見かけたことがあるのではないでしょうか。
筆者の日本人の友人はTwitterでTik Tok の広告を見て、そのままTik Tokをダウンロードしたそうです。Tik Tokは認知度向上のためテレビCMから交通広告などいろいろな媒体に投資をし、その国での認知度を一気に広げています。
動画文化普及による影響・・・学生でも物が売れる時代がやってくる?
最後に中国では短編動画アプリでもEC機能を持つようになっています。これはTik Tokも例外ではありません。
動画のリンクをクリックするとTaobaoが開き、動画閲覧者は出ているTik Tokユーザーが使っているコスメや服が買えるようになっています。
このEC機能を追加したことで画期的なことは、スタイルの変化を生み出したことです。
これまでのライブ購入は「ものを売るための動画を上げる」ことが必要でした。
それに対し、短編動画アプリにEC機能がつくことで、既にファンがついている人気者(高校生、中学生など)が「動画を上げて、ついでに物を売る」ことができるのです。
インターネットとSNSそして動画文化が生んだトレンドが、今後のお金の稼ぎ方やライフスタイル、引いては、働き方までを変える可能性を秘めています。
そして、今後は言語や国の違いを乗り越え、最初からグローバルへの進出を模索する企業が増えていくと考えます。特にデジタルに関わるサービスに関してはその特徴が顕著に現れることでしょう。
インターネットとSNSが加速させた動画時代では、これまでの常識は通用しない時代になるのかもしれません。