• HOME
  • メディアDMJ
  • 日本企業におけるDX課題解決策となるデジタルガバナンスとは

 
2021年までにデジタルトランスフォーメーション(DX)の貢献によって生み出されるデジタル製品やデジタルサービスが日本のGDPの約50%を占める可能性がある(*1)。
 
一方で、日本企業が後述する(少なくとも)3つの課題を克服できない場合、DXが実現できないのみならず、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性も示唆されている。(*2)
 

*1)アジアにおけるデジタルトランスフォーメーションの経済効果調査

*2)経済産業省 『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』

DXに向けた取り組み

DXを含む企業におけるデジタルの取り組みには、「Digitization(デジタイゼーション)」「Digitalization(デジタライゼーション)」「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の3段階が存在する。
  

Digitizationとは、様々なデータをアナログ形式からデジタル形式に変換すること。いわばデジタル化の下準備として必須の活動である。

・Digitalizationとは、ビジネスの現場に様々なテクノロジーが導入し、デジタルデータ、デバイスやテクノロジーの利用によりビジネスの現場における手法、プロセスや生産性に大きな変化を起こすこと。こちらの取り組みもDX実現に向けて必要不可欠な作業である。

・Digital Transformationとは、日々発展・変化する社会環境、顧客のニーズやテクノロジーに対してビジネスモデルや戦略を適応させていく継続的な営みを続けることを意味する。上図の通り2つの取り組みはあくまでDXの要素の一部である。

もし、企業がDigitization、Digitalizationの要素をDXそのものと捉えてしまった場合、企業内における取り組みも狭くなってしまい、結果として本当のDX実現は遠退いてしまうだろう。

DX実現に向けて直面する課題

DX実現に向けて多くの大企業が直面している課題は「データの分断」、「独自システムの負債化」、「市場競争力の低下」であり、これは先に紹介したデジタルの取り組み3段階の全ての段階において課題が顕在化していると考えられる。

・Digitizationの課題
大企業では、事業組織別に複雑化・ブラックボックス化したレガシーシステムが複数運用されていることで、データに互換性を持たず全社的に活用できない「データ分断」が起こっている。
結果として、自社が持つデータ資本を利用する妨げになっている。

・Digitalizationの課題
パッケージ製品ではないスクラッチ開発のレガシーシステムは、長期的には維持管理に多くのリソースを消費するうえに老朽化したシステムがセキュリティリスク要因となることもあり得る。

・Digital Transformation(DX)の課題
変革リスクを恐れ、レガシーなシステムを高コストで運用し続けてデータ分断を許容した結果、データ資本を活用して新たなビジネスモデルを創出するための組織や仕組みの整備を推進ことができず、グローバル市場において今後ますます日本企業の競争力が低下する恐れがある。

デジタル化におけるリーダー企業と旧来企業では、ますます格差が広がる

実際に新しいデジタル技術でビジネスを創造するリーダー企業と旧来の事業の延長線でパフォーマンスの低下に悩む企業との間でますます格差が広がっていることが最近の調査でも伺える。

デジタルに対する取り組みが欧米企業と比較して遅れていると感じている日本企業の割合が約8割(*3)を超えているだけではなく、日常的に業務で利用しているデバイスやアプリケーションが「かなり古い」と「2~3世代遅れ」との回答が約4割(36%)と主要先進国の中で最も高く、多くの企業でレガシーな環境がDX推進を阻んでいることが伺える。

また、データは次の時代の石油であると例えられることもあるほど注目されているにも関わらず、日本企業はアジアのリーダー企業と比較してデータ資本を活用した売上やビジネスモデルの創出に対する関心が低い(マイナス20%)(*4)

*3)https://japan.zdnet.com/article/35117573/

*4) IDC InfoBrief, “Unlocking the Economic Impact of Digital Transformation in Asia,” January 2018 (doc #AP15008X), commissioned by Microsoft

ますます重要性を増すデジタルガバナンス

デジタルガバナンスとは、デジタル施策を戦略に基づいて企業全体で最適化しつつ実行し、企業が持つデジタルの顧客接点において、効率的かつ安全な運用と高度なユーザー体験を両立してビジネス成果を得ること。これは、まさに本質的にDX推進の鍵となり得る。
  

デジタルガバナンスから得られる以下のような成果は、企業のDX推進に直接的に貢献するものと思われる。

・経営層と現場層が同じビジネスゴール、戦略や指針を共有し、企業全体でデジタル施策に対する共通意識を醸成すること。

・Webチャネルやデジタル施策における「縦割り行政」を廃止し、統一されたブランド訴求、効率化されたオペレーション、安全なWebチャネルの運用を実現すること。

・Webチャネル、システム運用やデジタル施策を企業全体で最適化して、一貫したブランディングやユーザー体験の提供を実現すること。

・オンラインやオフラインで収集したデータを連携・分析し、社会やユーザーの変化・ニーズを踏まえてデジタル施策を継続的な改善を実現すること。

2025年の壁を回避し、日本企業がグローバル市場で再び競争力を取り戻すためにも今こそDX戦略として攻めのデジタルガバナンスに取り組むことを推奨したい。

関連記事

デジタルマーケティングジャーナル 一覧