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【連載企画】CDPツールベンダーロングインタビュー①〜Tealium前編〜
デジタルマーケティングジャーナル(DMJ)にて連載企画が始動。
今回のテーマは、「各CDPツールベンダーを訪問し『CDP』についてのロングインタビューを行う」というもの。 第一回前編はTEALIUM JAPAN株式会社に伺いました。

CDPの参考記事:カスタマーデータプラットフォーム(Customer Data Platform、CDP)とは?
 


CDP(Customer Data Platform)の中でも、「中立性」「リアルタイム性」といった特徴をもつ「Tealium(ティーリアム)」。Tealiumは組織の各所に散在するデータを、あらゆるツールへ提供することを可能としている。
日本のCDPを牽引するTealiumに、自身の強みはもちろん、そもそもCDPとは?CDPを導入する際の注意点は何か?…など、様々な観点からCDPについての話を伺った。
今回第一回目のロングインタビューを引き受けていただいたのはTEALIUM JAPAN株式会社 Head of Channel Partnership 菅原 健三氏、同エデュケーションチーム テクニカル・トレーナー 海老澤 澄夫氏。インタビュワーはアンダーワークス株式会社 マネージャー 高橋 諭が務めた。    

CDPは統合的なメディア戦略を支援

高橋:
まずはCDPという言葉についてお話を伺えればと思います。そもそもCDPという単語はどのように考えればいいでしょうか。  
 
海老澤:
CDPという言葉が最近になって定着してきました。
 

TEALIUM JAPAN株式会社 エデュケーションチーム テクニカル・トレーナー 海老澤 澄夫氏


Tealiumもそうでしたが、当初はDMP(Data Management Platform)という言葉を使っていました。要は会社が保有しているデータをセールスやマーケティングに活用し、その結果としてお客様との関係を円滑にしよう、という考え方です。ところが言葉というものは独り歩きするもので、気づいたらDMPという言葉は広告分野で使われることが多くなってきました。もちろんこれはDMPに限った話ではありませんけれども。
 
Tealiumを前提とすると、そもそもペイド・オウンド・アーンドメディアがある中で、Tealiumはオウンドを中心としたソリューションを提供しているサービスです。なのでペイドで、ある広告によってコミュニケーションをとることに加え、広告で自社サイトいらっしゃったお客様に対して、サイト内の行動やコミュニケーションを最適化することまでがターゲット。そのためTealiumも最近ではCDPという言葉に切り替え、もっと幅広いことができるツールなんだということを伝えています。
 
高橋:
それはいつ頃からですか。
 
海老澤:
2015年くらいからですね。   最近になって、今度はCDPという単語が独り歩きしています(笑)。WEB接客こそがCDPだとか、データを溜めないとCDPじゃないとか。   ただこれらはあくまで言葉の話。CDPと呼ばれているものが本質的に必要とされているのは、企業活動においてカスタマーの意識や期待を正確に汲み取り、適切なレスポンスをするということ。これは昔から変わっていません。   そのためTealiumこそがCDPだというつもりもありません。繰り返しになりますが、Tealiumは広告だけ、オウンドだけという話ではなく全体を統合し、本質的なソリューションを提供することにフォーカスしています。  
 
菅原:
Tealiumはアメリカを中心にグローバルに活動していますが、とくに日本のマーケットを前提に言及するとすれば、CDPはいわゆる「ベンダーロックイン」を避ける必要があることは申し上げておきたい。あとでTealiumの説明をする際に詳述しますが、「中立性」ということですね。
 

TEALIUM JAPAN株式会社 Head of Channel Partnership 菅原 健三氏

高橋:
国内外でCDPに対しての考え方が違うのですか?  
 
菅原:
あくまで私の感覚ですが、海外だとインハウスのデジタルマーケターが、必要なことはなんでもやっちゃうんですよね。他方日本では、企業が自前でデジタルマーケティングに取り組むというよりは、ベンダーや代理店に依存する傾向が見受けられます。   そうすると代理店やベンダーの権限が相対的に強くなっていき、彼らの言うことを聞かなくちゃいけなくなる。自由に活動しにくくなるんです。
また日本はIT部門が強くて、マーケティング部門が弱いことも特徴です。そもそもマーケティングを経営レベルから司るCMOが少ないですし、マーケティング部門のシステム導入の話をしているのに、予算はIT部門がもっていたり。大手企業はとくにその傾向がありますね。   本当は大手企業ほど、組織のあちこちにカスタマーの情報が散らばっているので、データ統合の必要性が高く、結果としてCDPの必要性が高いのですが、なかなか理解してもらうのにハードルが高いですね。    

Tealiumの強みは「リアルタイム性」と「中立性」  

高橋:
なるほど。   CDPという言葉だけでも盛り上がってきましたが、CDPツールといってもさまざまな会社が提供しています。その中でTealiumの優位性、強みを教えて下さい。そこからCDPという概念を考えていければ。  
 
海老澤:
Tealiumの優位性は明確に2つ。「リアルタイム性」と「中立性」です。   まずはリアルタイム性について説明します。   そもそもCDPの前提としてデータ活用というのは、カスタマーデータをうまく活用すれば、カスタマーに役立つ情報を提供できる、というものです。   しかしそのカスタマーの分析に何時間もかけていたら、カスタマーはとっくに自社のサイトを離れてしまっているわけです。カスタマーがサイトから離れて何時間後にメールでフォローされたとしても、カスタマーは下手したらサイトを訪問したこと自体も覚えていません。つまりカスタマーのデータ分析はリアルタイムに実行し、施策を実行しなくてはならないのです。   その点Tealiumは、webサイトに使われている「タグ」をマネジメントして、リアルタイムでデータ分析を実践するお手伝いをしています。ログベースのCDPツールではリアルタイム処理は不可能です。   カスタマーがwebをみているときに、瞬間的に必要な対応をとることができる。ただ単純にたくさんのデータをとるのではなく、早くカスタマーに対してアクションできることがTealiumの提供するCDPの真髄です。
 

Tealiumの強みの2点目は先ほど菅原も申し上げました「中立性」。Tealiumはどんなツール(MAやA/Bテストツールなど)にも情報を提供できるため、ベンダーロックインから解放されるのです。   CDPの前提として、企業はアドネットワーク、MAツール、解析ツールなど様々な目的で多くのツールを利用していると思います。企業によってデータを使ってやりたいことというのは変わってくるので、当たり前ですがこの構成については、全部を一つのベンダーが提供するツールで揃えることが正解とは限りません。
 
ところが一般論としてベンダー側は、他社の製品の仕様なんて理解していないし、他社製品にデータを渡すなんてとんでもないと考える。もちろん自分たちの製品を販売したいというインセンティブもありますね。そんな事情もあって、技術的には可能だったとしてもデータを他社製品に受け渡すということが困難な状況が生まれるのです。   そうすると色々なベンダーのツールを導入したときに、データ形式が違ったりするので、企業がせっかくツールを導入したのに、統合的にシステムを使えなくなってしまう。さてどうしたらいい?というときに登場するのがCDPです。このような状況を解決しなくてはいけないので、CDPは特定のベンダーの形式によったものではなく、中立的である必要があります。   Tealiumは機能としてアドネットワークやメール配信という機能をもっていませんし、これからももたないでしょう。もしやってしまったらそれらを使うことに注力してしまい、中立性が損なわれてしまうからです。   長くなりましたが言いたかったことは、CDPにとって「中立性」というものは非常に重要だということです。Tealiumはあくまでデータのハブ。データの流通を円滑にするためのツールです。    

CDPとDWHの違い  

高橋:
中立性というのはCDPの前提であり、それが同時にTealiumの強みでもあるわけですね。  
 
海老澤:
CDPのCはCustomerのCだということを忘れてはいけません。つまりCDPは、カスタマーとのコミュニケーションを最適化するためのデータ管理をするもの。そこを効率よく最適な形で提供するという意味において、Tealiumは強いですね。 
 
高橋:
そういう意味でいうと今度は、DWH(Data WareHouse)とCDPの違いはなんでしょう。  
 
菅原:
データの更新が1日1回、または週に1回でいいのなら、DWHもCDPになりうるのではないでしょうか。ただ先ほども申し上げたように、ことBtoCビジネスの消費者の動きはリアルタイム性が必要だとは思います。  
 
海老澤:
これも繰り返しですが、消費者のためになっているかという視点は重要ですよね。極端な話、DWHでも消費者のために使ってるなら概念的にはCDPでしょうし、DWHを在庫管理に使うならCDPではない。  
 
菅原:
ガートナーのレポートによると、「CDPとはマーケティングのシステム。企業の顧客情報を、システム間のサイロを壊して相互に連携できるもので、顧客のモデリングやオファーの最適化を実現し、アクションにつなげることが重要」と指摘されてもいますね。
 

菅原:
DWHでもタグを発行することもなくはないですが、CDPにおいてはタグマネは必須。Tealiumはタグマネジメントを土台として、カスタマーからのデータのとり方を制御します。Tealiumのタグマネ機能さえ使っていれば、一旦Tealiumがデータをキレイにまとめて、その他ツールにデータを渡せます。   これはwebガバナンスの観点から非常に重要な視点です。カスタマーの宣言に応じて、データを取得していい人と、取得してはいけない人を瞬時に分類しなくてはいけない。   カスタマーごとに「このタグは動いていいよ」「このアクションは『商品名』という名前で取り込みなさい」といったようにタグマネが指示を出すので、各ツールでバラバラなデータの取得をしてしまいがちなところを、Tealiumが正規化して、各ツールに渡す事ができるのです。  
 
海老澤:
データをどう活用するかの前提に、データをどう加工するかという話がありますが、そもそもその元になるデータをどう収集するかという議論が抜けているケースが散見されます。   データ加工の大原則ですが、「ないデータは処理できない」。この観点が抜けていると、どんなに優れたAIでもデータからなにかを見出すことはできません。Tealiumではデータレイヤーを用いて、データの収集の部分から取扱い方を支えることができるのです。

Tealiumの強み、“データレイヤー”とは  

高橋:
“データレイヤー”がTealiumの強みと受け止めましたが、”データレイヤー”について解説頂けますか。
 
菅原:
データレイヤーについては、言葉だけでの説明は難しいので2つの絵を使用して解説します。まず、1つ目の絵をみてください(以下、参考図1)。「データレイヤーが存在しない場合」は、データとアプリケーションが1対1で接続されます。このケースでは、該当のアプリケーション単体で考えた場合は問題ありませんが、企業としてデータを活用する場合は、アプリケーション間で「データが意味すること」が変わってしまい、その整合性を取ることがとても難しくなります。
 

参考図1:データレイヤーが存在しない場合

次に2つ目の絵をみてください(以下、参考図2)。「データレイヤーが存在する場合」、これはTealiumが導入されている場合と同義ですが、この場合は、データレイヤーの中でデータを一度、整理統合します。この整理統合によって、「データが意味すること」を共通化・正規化した上で、各アプリケーションに渡すことが出来るのです。これが、先程海老澤が申し上げた「データの収集の部分から、取り扱い方を変える」ということになるのです。
 

参考図2:データレイヤーが存在する場合

海老澤:
”データレイヤー”を一言で言い表すならば、「ユーザーがWebサイトにアクセスしてきたときの行動などを、整理し、インデックス(目録化)するレイヤー」という表現が適切でしょう。
 
高橋:
GTM(Google Tag Manager)にもデータレイヤーはあると思いますが、TealiumとGTMのデータレイヤーとの違いはなんですか?  
 
海老澤:
基本的な考え方は同じだけど、目的が違います。   CDPの仕事は中立的にデータを渡すこと。なので特定のサービスやベンダーに依存してはダメで、それはデータレイヤーに対しても同じです。   他方でGTMのデータレイヤーは、Google AnalyticsなどのGoogle社のサービスに特化されているので、CDPのデータレイヤーではないとTealiumでは認識してます。  
 
菅原:
データレイヤーを弊社のCDPである Tealium AudienceStream™ に繋げるという思想も違いますね。たとえばMAツールだけでは、カートの情報はとれるけど、そのページをどこまで見ているかというのはすぐに確認できないという状況があったとします。   そんなときTealiumでは、Tealiumのデータレイヤーから、「このカスタマーは、この情報やページを良くみていますよ」という情報を、Tealium AudienceStream™ からリアルタイムの属性をつけてMAツールにデータ連携します。Tealiumではリアルタイムにつける属性を「バッジ」と呼んでいます。バッジは予めいくつか設定しておき、カスタマーのウェブの行動があるたびにバッジが変わっていきます。もちろんこの情報は他のツールでも利用可能です。
 
TealiumはSalesforceやMarketing Cloudとセットで使っているお客様が多いです。SalesforceやMarketing Cloudでとれない情報をTealiumが取得し、データレイヤーにキレイに格納して、その提供先のひとつとしてSalesforceとかMarketing Cloudがある、という構図です。それをさらにAdobe AnaliticsやLookerで分析して、Optimizelyに渡してコンテンツをパーソナライズして、ということをやっていきます。この思想はGTMにはないですよね。
 


今回から始まったCDPを深く知るための連載、前編は如何だったでしょうか?
 
引き続き後編では、BtoBのTealiumの活用方法や、CDPをハブにしたデータ連携、GDPRの対応などについても踏み込みます。
 

続きはこちら! CDPを考える上で重要なことは「カスタマーを中心に据えること」Tealiumが語るCDPの活用法 | 連載企画・後編
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