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【連載企画】CDPツールベンダーロングインタビュー④〜INTEGRAL-CORE前編〜
デジタルマーケティングジャーナル(DMJ)にて連載企画が始動。
今回のテーマは、「各CDPツールベンダーを訪問し『CDP』についてのロングインタビューを行う」というもの。 今回はINTEGRAL-CORE前編(全2回)をお送りします。

 
INTEGRAL-COREは、EVERRISE社が提供するCDPツール。CDPの領域では外資系のツールが多い中、国産のCDPとして提供しています。今回はCDPとしてのINTEGRAL-COREについて株式会社EVERRISE 代表取締役 倉田 宏昌氏、取締役 伊藤 孝氏にお話を伺った。インタビュアーはアンダーワークス株式会社 マネージャー 高橋 諭が務めている。
 
CDPの参考記事:カスタマーデータプラットフォーム(Customer Data Platform、CDP)とは?
 


日本ではプライベートDMPとCDPはほぼ同義

高橋:
はじめにCDPという言葉について。昨今デジタルマーケティング業界ではバズワード的に広まっている感覚がありますが、その一方で言葉がいろいろな解釈で1人歩きする懸念もあります。御社としてはCDPをどのようなものだと捉えていますか?
 
倉田:
元々弊社はアドテクノロジーの開発から始まっています。マーケティングがデジタル化されていく中で、やはり顧客データが今後キーになっていくと考えるようになりました。「一人の顧客を描き出せるツールとして、最適なデータ基盤であるべきだ」と、当初我々もプライベートDMPと名乗っていました。しかしながら、日本だとプライベートDMPとCDPという言葉の大きな違いがないところもあり、たまたま米国のCDP 協会(CDP Institute)のCDPの定義を見て、「考えていることは一緒だな」と思い、我々もCDPと名乗るようになったのです。

CDPは『顧客データを管理するプラットフォームであるべき』ということを我々は一番に考えています。そのためにまずどのような機能が必要であるかと言うと『ID統合機能』だと考えています。1人の顧客を描き出す機能がないと話にならないからです。

さらに、今後はGoogleの提唱するところのマイクロモーメント、いわゆる顧客の様々な瞬間を捉えることが必要になります。これは確実にデジタルマーケティングで重要なポイントになってくるでしょう。よりリアルタイムに顧客を捉えるということがCDP、次世代の顧客データ基盤という文脈では重要になってくるのではないでしょうか。
 

株式会社EVERRISE 代表取締役 倉田 宏昌氏

高橋:
もともとのプライベートDMPからCDPと名乗っていく中で意識の変化はありましたか

倉田:
個人的にはIDを統合していくことやリアルタイム性を気にするようになりました。どちらかと言うと広告利用のためだけにデータを貯める、Webサイトの行動履歴を溜めるだけの箱ではなく、もっとオフライン・リアルの情報であったり、様々な情報を統合して一人の顧客を描き出すことができるツールを目指している状態です。

当初は次世代CRMの開発からスタート

高橋:
他社のCDPでいうとTreasure DataさんはDWH、Tealiumさんもタグマネージャーという文脈から語られることも多いと思います。元々御社のINTEGRAL-COREは CDPという形で開発を進めたのでしょうか?
 

アンダーワークス株式会社 マネージャー 高橋 諭

倉田:
今はINTEGRAL-COREという製品なんですが、元々はINTEGRALを作りたかったんです。

高橋:
それは・・どういう意味でしょうか?

倉田:
元々作ろうと思っていたのは次世代のCRMです。オンラインもオフラインも全部リアルタイムで顧客のモーメントが捉えられる次世代のCRMを作るんだ、ということでINTEGRALというプロダクトを7〜8年前に立ち上げました。今で言うとスイート製品のようなものを目指していました。しかしながら、やはり機能が膨大なためすべてを満たそうとすると開発が大変なわけです。そこで重要な”コア”のデータプラットフォーム部分だけを切り出して製品化したのがINTEGRAL-COREの最初の一歩です。

開発のきっかけは自身の顧客体験

伊藤:
構想を立ち上げ始めたきっかけは倉田が飛行機での出張が多かった時に受けたサービスが原体験にあります。

倉田:
ボーディングブリッジを通過する際にスタッフの方から「いつも有難うございます。」と声をかけて頂ける。機内で着席してからも、CAの方がわざわざ席まで来てくれて「倉田様いつも有難うございます。」と迎えてくれる。たったそれだけで私は大切にされていると感じ、少々価格が高くても毎回同じ航空会社を使う動機を与えられていました。

これはそれなりの顧客データが、それなりのスタッフに共有されていて初めてサービスを提供できるんですけど当時まだまだそれが出来ていない会社が大多数だった。しかし、顧客体験・サービス体験として顧客に寄り添ったものであるべきじゃないですか。
 

インテグラルコアインタビュー風景

また、経営者仲間の中には当時から店舗とECを持っている仲間も多かったのですが、オンラインとオフラインでデータをバラバラで扱っている、全く統合されていない状態だったそうです。
 
ITリテラシーが高いはずのベンチャー企業でさえ、お客さまとして統合された心地よい体験の提供が全く出来ていないという事実が当時ありました。一方で例えば、先程の航空会社では、オンラインでチケットを買った場合でもチケットカウンターで一連の流れでサービスが受けられる。
 
当時感じた、優良な顧客体験を多くの企業が生み出せていないという課題感を解決したいという想いで、とりあえず作り始めました。僕らの中では次世代CRMというイメージでしたがスタートはそこです。

強みはリアルタイム性とカスタマイズ性

高橋:
なるほど、当時感じた原体験が開発のきっかけだったんですね。それでは他社ツールと比較してINTEGRAL-COREにおけるCDPとしての優位性はどういったところにあるでしょうか?
 
伊藤:
まず製品単体でいうとリアルタイム性能はすごい重視しています。リアルな位置情報をビーコンで受け取るなど顧客のマイクロモーメントにどう対処していくのか。そこにはリアルタイムの分析が必要ですし、顧客の反応(リクエスト)があった時にすぐアクション(レスポンス)がリアルタイムで返せるようなシステムです。
 
例えば、既存のお客さまがWebサイトに来訪している状態はいわゆるホットリードと定義することが出来ると思うんですが、その時に営業マンのSlackに「ホットリードが来ている」と通知がされて、その瞬間に電話をかければ、電話も繋がるし、課題が持ってる瞬間にコミュニケーションが取れる。そういったコトが今後どんどん求められると思っている。 

もう1点は国産ベンダーでSIerであるという点です。海外ベンダーだとグローバルスタンダード以外だと基本的に受け付けないというケースも多いと思います。しかし、日本企業だとグローバルスタンダードが必ずしも正解とは限らないケースも多いため、クライアント要望に応じたカスタマイズの対応ができます。また、システム的なサポートもワンストップで出来るという点も強みですね。
 

株式会社EVERRISE オフィス

リアルタイム性を実現する背景にはアドテク開発の経験が

高橋:
リアルタイム性の観点で言うとCDPにはデータを溜める、データを処理する、そしてアクションに繋げるという3ステップあると思います。その中でも一番大変なのはリアルタイムにデータを処理するというステップだと思います。データの名寄やセグメンテーションをリアルタイムに行う必要があると思いますがその辺りはどう考えていますか?

倉田:
リアルタイムでなければ、このようなツールは作らなくていいと考えています。リアルタイムだからこそ、このプロダクトを作る意義があります。ただ・・リアルタイムが本当に必要だというクライアントもなかなかまだいないというのも現実ですね。(笑)

高橋:
確かにエアライン系のクライアントや検討期間が短い商材を扱うクライアントはリアルタイム性が重要かもしれませんが、まだそこまでリアルタイム性を必要としないクライアントも多いかもしれないですね。

倉田:
ただ本当に DX みたいなものを考えると、やはり今後リアルタイム性はやはり重要になってくると考えています。

伊藤:
弊社は元々アドテク屋です。リターゲティング広告って今は数秒後ぐらいにリターゲティングされるじゃないですか。昔って1日遅れだったり数時間遅れだったんですが、時代の発展とともにその時間が短くなっている。これはその瞬間に出ている情報をその瞬間に使わないと鮮度が落ちるということです。

いわゆる購買に近い刈り取りの部分なのかもしれないですが、その瞬間の情報を使えば使うほど成果が高いことがわかっているためアドテクもその方向に進化してきている。デジタルマーケティングでもリアルタイムの方向性は変わらないと考えています。

ブランド理解や顧客体験向上などの観点ではどこまでリアルタイム性が必要なのか我々も模索中ですが、少なからず大きな流れではリアルタイム性が求められるという方向性は間違いないと考えています。
 

株式会社EVERRISE 取締役 伊藤 孝氏

高橋:
リアルタイム処理をする場合、データが多ければ多いほど大変になってくると思いますが、その点はどのように対応していますか?

倉田:
アドサーバーって秒間何万アクセスに耐えなければいけないし、1日に何TBも出てくるようなWebログ、何十億レコードをデータとして扱わなければいけません。弊社はアドテク屋としてそのハイトラフィックな状況で創業からインフラの立ち上げなどもやってきているため、リアルタイムかつ大量データの取扱は一番の得意所です。

今は Web やアプリからのビーコン程度ですが、 IoT のビーコンが飛んでくるようになり、そのデータもきちんと蓄積してリアルタイムで使っていく。このノウハウが創業以来一番取り組んできた領域なので、僕らがCDPを作る意味があると思っています。

クライアントのさまざまな要件に柔軟に対応

高橋:
先程、カスタマイズという話が出ていましたがINTEGRAL-COREはSaaSサービスではないのでしょうか?

伊藤:
弊社側の環境そのままご利用頂くケースもあればクライアントの環境上に我々のモジュールをそのまま再現することもできます。大手規模でもう既にそれなりのトラフィックなどを捌けているのであれば、その安定的なインフラ環境上に機能を再現します。他にも銀行や大手企業のようなオンプレ環境でしか提供できない場合はオンプレ環境に構築するというケースもあります。
 
インタビュー後編へ続きます。
INTEGRAL-COREサイトはこちらから

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