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【連載企画】CDPツールベンダーロングインタビュー④〜INTEGRAL-CORE後編〜
デジタルマーケティングジャーナル(DMJ)にて連載企画が始動。
今回のテーマは、「各CDPツールベンダーを訪問し『CDP』についてのロングインタビューを行う」というもの。 今回はINTEGRAL-CORE後編(全2回)をお送りします。

 
INTEGRAL-COREは、EVERRISE社が提供するCDPツール。CDPの領域では外資系のツールが多い中、国産のCDPとして提供しています。今回はCDPとしてのINTEGRAL-COREについて株式会社EVERRISE 代表取締役 倉田 宏昌氏、取締役 伊藤 孝氏にお話を伺った。インタビュアーはアンダーワークス株式会社 マネージャー 高橋 諭が務めている。

インタビュー前編はこちら
CDPの参考記事:カスタマーデータプラットフォーム(Customer Data Platform、CDP)とは?
INTEGRAL-COREサイトはこちらから
 


ツールベンダーとユーザーの観点でのCS

高橋:
最近ツール ベンダーはユーザーのCS(カスタマーサクセス)を充実させている印象がありますがその点御社はどうお考えでしょうか?

伊藤:
CSをツールベンダー、ユーザーのどちらの観点から見るかにもよると思っています。

ツールベンダーから見ると、我々もどのタイミングでどう行動してもらうとオンボーディングになっているか、この機能を使っていると解約リスクが低い、などはもちろん見ています。クライアントが成功しているラインの定義があるはずなので、そのラインに対するアプローチをサポートするのが ツールベンダー側の観点では重要です。

しかし、あくまでそれは我々ツールベンダー側の観点であり、クライアントが本当に課題と感じていることはツールと関係ないところであるとも思っています。

我々はデジタルマーケティングテクノロジーを売りにしている会社であり、ベースとしては開発会社です。そのため、ソリューションでクライアントの課題を解決してあげたいと考えています。その課題解決のエンジンとしての CDPであるだけで、 その周辺の開発も我々がお手伝いすることもできます。

果たしてCDP単体のツールとCDP単体のCS だけで解決できる課題なのか?と聞くとほとんどのクライアントはそうではないと答えると思っています。CDPのみならず周辺の開発もできるといったような、 CSをもう少し広義で捉えているべきだと考えています。

高橋:
CDP を入れると決めた場合でも、結局ユーザーとどうコミュニケーションを取るのかがはっきりせず結局CDPを入れたまま上手く使えていないケースも多いと思います。しかしながら、入れたけれども使えていないというのは健全じゃないですよね?その辺りの支援も行っているのでしょうか? 

倉田:
コンサルティングは我々もやっています。ツール入れる前提というよりはフラットにデータ活用について捉えています。しかし、中には「なんとしてもデータ活用しなきゃ」みたいな恐怖感が先走り目的を見失っているクライアントもいますね。

本当に何のデータを持っているのか、これからどういうデータが出てくるのか、そしてそれをどうビジネスに反映させるチャンスがあるのか、などから相談させていただく場合もよくありますね。

近い将来CDPはコモディティ化していく

高橋:
CDPツールの価格についてはどう考えていますか?

倉田:
業界全体で言えることですが、価格はもっとコモディティ化すると思っています。 顧客データを統合するプラットフォームは今で言うと会計システムのような世界観になっていくのではないでしょうか。会計システムがない会社は現在ほぼないじゃないですか。全部の会社に入っていますよね。

そのように今後顧客データを管理しない会社はないという世界になり、それに合わせて価格帯もコモディティ化していくのではないかと考えています。
 

株式会社EVERRISE 代表取締役 倉田 宏昌氏

伊藤:
現在は数百社程度しか入っていないと思いますが、例えばグーグルアナリティクスのような数万数、数十万社レベルで導入されているようになっていくと考えています。企業が普通に入れるようなシステムになっていくことで普及が進み今よりは圧倒的に安くなるのではないでしょうか。

成功のポイントは課題の整理と推進体制

高橋:
なるほど。現在CDPの導入を検討しているクライアントもいると思いますがCDPを成功するポイントはどのように考えていますか?

伊藤:
もともと持ってらっしゃる課題感が何十個も何百個もあるその中で、まず最初に課題を解決するための整理が必要なはずです。その後にようやく導入すべきツールや取り扱うべきデータが出てくる。しかし、そのプロセスを踏まないクライアントが非常に多い。まずは整理整頓をきちんと行い、順序立てて対応していくべきだと考えています。

実は我々としてはCDPが入ることだけに興味を持っているわけではないのです。クライアントの課題感を整理し、そのために必要な打ち手をご提案していきます。やりたいことが明確になれば、技術的に要件をクリアできるか、クライアントの社内的な壁でデータがもらえないなどないか、といった懸念点を潰していくだけになります。課題の解決に向けたアプローチは徹底しています。
 

株式会社EVERRISE 取締役 伊藤 孝氏

倉田:
個人的にはDXという文脈だと課題ではなくデータから見るべきだと考えています。例えば、JRなら顧客の行動履歴や決済のデータ、トヨタなら車の走行データ、位置情報などデータを持ち得るという目線から新たなビジネス、サービスを構築するという文脈が大上段にあると良いのかなと思います。

伊藤:
大きい絵を見せる上で、小さい成功体験を積み上げることが、特に最初は重要であると思います。弊社でもまずは1部門の1部署から始めましょうという話はします。我々のケースだと目先の小さいROIが合わせていくケースが多いです。

倉田:
最初は広告利用など小さいスコープでROIをあわせるのが継続するのに大事なのではないでしょうか。どういう結果なら成功と判断できるのか、合意をとっていく。あとは定性的な部分ではありますが、担当者が本当にデータ活用を推進していく気があるという点は重要でしょうね。

高橋:
担当者というワードが出ましたが、デジタルマーケティング領域は慢性的な人手不足です。人材がいない企業はどのように取り組んでいけばいいと考えていますか?

伊藤:
現状導入しているケースだと、1人は強い推進者がいるので上手くいっています。その人に依存しているとも言えなくもないが、やはり推進する力が、もやっとしていると失敗するケースが多いです。

倉田:
逆にアンダーワークスさんのようなパートナーがデータ活用をどうするのかを啓蒙するのが日本のフェーズではいいのかもしれないですね。

プライバシーデータの保護は実は追い風

高橋:
プライバシーデータへの取り組みについてはどう考えていますか?CDP=顧客データを扱うという意味ではどう管理していくのかは大事になってくると思いますが。

伊藤:
本質的には、事業を行っている者が、ユーザーに対して損をさせるデータの使い方はまずいはずです。データをどう使うのかの点においてはツールベンダーとしても正しいデータの活用方法の啓蒙が必要だと思っています。

また、顧客との同意をしっかり取得するべきだと考えています。しかし、様々なツールごとにそれぞれの同意を取得し、同意のデータを管理することは現実的には難しいでしょう。そのため、CDP のような1箇所にデータを集めて同意を管理することが必要になります。例えば、メールで商品提案していいか、広告でCookie データを利用していいかなど、細かく管理すべきです。INTEGRAL-COREとしても同意管理についてベーシックな機能は用意しています。
 

株式会社EVERRISE オフィス

倉田:
個人データの保護について大きな文脈で捉えると、業界にとっては逆風ではないと思っています。個人情報をしっかり同意を取った上で利用しなければいけないと言うことは、闇で個人データを買ってきたりすることが出来なくなるということです。確実に1st partyで同意の元データを取っていく方向性は CDPの方向性としては良い方向になる。現在はネガティブのニュースも取り上げられやすくもありますが、今は過渡期にあるだけだと考えています。

米国CDP 協会のDavid Raab 氏も言ってたんですよね。「個人情報の管理が厳しくなればなるほど企業がちゃんと同意を取ってそれを管理しなければいけないということ。 CDPとしてはしっかり同意をとってそれを活用していくことはCDPの役割だろう」と。

個人データ保護の潮流は業界にとっては追い風です。

データ活用していく未来はもっといい未来である

インテグラルコアインタビュー風景

高橋:
ありがとうございます。最後に現在CDPを導入している、または導入を検討しようとしているクライアントにメッセージをお願いします。

倉田:
伝えたいことは「データ活用していく未来はもっといい未来なんだ。」ということです。

「技術が創る世界がもっといい世界である。」という想いで経営しているので悪い方向に行かないで欲しいとも思っています。

これは、単に競合とのシェア争いという話ではないと思っていて、他社のCDPツールメーカーとも、良いデータ活用がされる世界を作りたいと思っています。

業界全体でそういった世界を作っていきたいと考えています。現在はネガティブな面が語られる文脈もあるが正しいデータ活用をしていけば、必ず社会としてはプラスになると信じています。

高橋:
弊社も事業を通じて「正しいデータ活用をしていく未来」に向けてぜひ尽力していきたいと思います。本日はありがとうございました

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