7月14日に、アンダーワークスが発表した「マーケティングテクノロジーカオスマップJAPAN 2021」。
2017年より毎年発表している当カオスマップは、今年で5回目のアップデートになり、広告やSNS、プライバシー関連など、幅広くマーケティングテクノロジーと捉えて、国産・海外のツールを名称と共に掲載しています。
今回は、国内で利用可能な主要マーケティングテクノロジー1,317種類(2021年3月時点、昨年比7%増)を、独自調査に基づき分類・一覧化しています。
>> マーケティングテクノロジーカオスマップJAPAN 2021
この記事では、「4つの”V”」をキーワードに、2021年のカオスマップに基づく今年のマーケティングトレンドを解説していきます。
今回掲載したマーケティングテクノロジーは1,317種類(昨年比7%増)。前回発表時の分類軸を再整理・統合した新たな13分野と、109の詳細分類で整理、一覧化しています。
今年のマーケティングテクノロジーに関する特徴と、前回発表時から見られる変化は、以下の「4つの”V”」です。
・Virtual:オフラインのデジタル化
・Variety:顧客接点の多様化
・Vertical Integration:オールインワンの出現
・Verification:プライバシーへの配慮
Virtual:オフラインのデジタル化
コロナ禍でリモート(バーチャル)での活動が激増したことに伴い、リモート化のテクノロジーがますます増加してきました。
「オフライン+イベント管理」のテクノロジーは70%増、「バーチャル展示会」は400%増、「ウェビナー」は23%増、「オンライン商談」は60%増と、それぞれ昨年比で増加傾向にあります。
また、新設された「MEO」(Map Engine Optimization:マップエンジン最適化)の分野には12のテクノロジーを分類しています。
リモート下でのセールス・マーケティングは、今後の働き方によって大きく変わってくるでしょう。
コロナ前の状態に回帰すれば、オンラインイベントや商談系テクノロジーは一時的なブームで終焉する可能性もあります。
逆にこのままリモート状態が継続すると、新たな名刺交換(顧客データ管理)やVRなど体験向上関連のテクノロジーが台頭してくるかもしれません。
現実的には、リモートとオフラインが混在する働き方が続き、ライブ配信やオフラインとオンラインをつなぐテクノロジーが台頭してくるであろうと予測しています。
Variety:顧客接点の多様化
二つめに、カスタマーサクセスや音声SNSなど、新しい顧客接点の出現や、マーケティングのカバー領域が広がっている傾向があります。「カスタマーサクセス+チャーン予測」のテクノロジーは昨年比で2倍に増えました。新設の「サブスク支援」分野にも13のテクノロジーが分類されています。
今後、ポストセールスを重視する企業が増え、より複雑な独自のカスタマーサクセスモデルへの対応や、プレセールスを含めた顧客データの活用ニーズなど、テクノロジーによるスケール化が加速し、ますますカスタマーサクセスのテクノロジーは増えていくと予想されます。
また、今年は「モバイルアプリケーション」分野が新設され、アプリに特化した最適化や施策ツールが多様化していることがわかります。
「音声広告」「デジタルOOH広告」など新たな分野も増えており、予約型広告、テレビCMなど、伝統的な分野がテクノロジーを活用して運用型になっている特徴もわかります。
このように、デジタルマーケティングは従来よりも顧客接点が広がり、同時にできること、やるべきことも拡大していると言えます。
Vertical Integration:オールインワンの出現
3つ目の特徴は、「オールインワン」ツールと呼ばれるテクノロジーが増えている点です。
国産の「b→dash」などを筆頭に、多様化する顧客接点のデータやテクノロジーを連携・統合させようという動きが加速しつつあります。
Verification:プライバシーへの配慮
4つ目の特徴は、個人情報保護に関するサードパーティークッキーの規制から、プライバシー管理の分野が台頭している点です。
分野としても「サードパーティDMP」は今年度から廃止され、サードパーティクッキーの利用を前提としたDMPモデルは事実上無くなったと言えます。
また、ヨーロッパでは、単に同意のポップアップを出してクリックさせるだけの既存のクッキー同意管理が問題視されており、その流れは国内でも進みつつあります。
本来は、顧客に個人情報の利用ポリシーを提示し、どのデータをどう利用するかを選んでもらい、同意を得るべきですが、それを可能にするテクノロジー(CMP)も徐々に注目され始めています。
データ活用についても、セカンドパーティデータを見直す動きが国内で増えていく可能性や、顧客が自ら情報を提供してくれるゼロパーティデータに注目され、そのためのツールが増えることも考えられます。
分断から「マーケティングオーケストレーション」へ
このように、「マーケティングテクノロジーカオスマップJAPAN 2021」に基づくさまざまな今年の特徴や変化がわかります。
しかし、顧客チャネルが多様化しテクノロジーも急増する一方で、マーケティングに関わる組織や施策が連携できていなかったり、各ツールを連動できていないといった課題を抱える企業は少なくありません。
そこで、一人ひとりニーズの異なる顧客に対し、あらゆる顧客データを活用し、様々な顧客接点でパーソナライズされたコミュニケーションを行い、一貫した顧客体験を実現することで顧客とのエンゲージメントを促進する「マーケティングオーケストレーション」の動きが、今後はより一層重要になってくるでしょう。