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B2Bのデジタルマーケティング業界で期待が高まる「ABM(アカウントベースドマーケティング)」の実践を考える本連載。前回の記事では、レベル3(上級)のABM施策として、自社のビジネスにおける重要アカウント=ターゲット企業の購買意志を把握するために役立つインテントデータの活用について解説しました。
今回は、レベル4(エキスパート)の施策として自社のファーストパーティーデータ、サードパーティーデータの統合利用によるマーケティングと営業の施策連携について解説します。

(スピーカー:アンダーワークス マネージング・ディレクター 田口裕、編集:西塔穂波)

ABM視点でマーケティングと営業のオペレーションを統合

ABM戦略に基づくマーケティングと営業のオペレーションにおいても、基本的な流れは変わりません。Webを通じて集めたリードをアカウント(企業)軸で振り分け、広告、コンテンツ、E-mailマーケティング等でフォローした後に確度が高まったものを営業チームに引き渡し、営業チームが更にインサイドセールスや個別アプローチでフォローして受注に繋げていくオペレーションです。
 
一方、ABM施策においては、このプロセスを常に「アカウント軸で行う」ことが重要になります。既存のチャネル、テクノロジー、データやプロセスを、アカウント軸で統合できるプラットフォームを自社のテクノロジースタックに追加することで、より統合されたマーケティングと営業間のオペレーションを実現できます。
 
ここで強調しておきたいのは、「ABMプラットフォーム」と呼ばれているテクノロジーは何かを置き換えたり、単一で効果を発揮するものではないということです。ABM施策の成功とは、個別のデジタルマーケティング施策やそれを下支えする高度な顧客データマネジメントの効果的な組み合わせであり、ABMプラットフォームはそこに一気通貫した「アカウント」という軸を与え、個々のチャネル、施策の組み合わせ、プロセスやデータを最適化することが役割となります。
 

「ABMプラットフォームとは、マーケターがアカウント選定、企画、エンゲージメントやレポーティングを大きな規模で実行することを可能にするものである。プラットフォームはユーザーに対してディスプレイ、リターゲティング、ソーシャルといった各種広告、コンテンツの第三者媒体配信、WebサイトのパーソナライゼーションやE-mailといったあらゆる手段でアプローチし、プラットフォーム独自の機能や他のテクノロジーとの連携によってユーザーに更に他のチャネルでの行動を喚起する。」

引用:The Gartner Magic Quadrant for ABM Platforms(2022年3月16日のウェビナーより)

ABMプラットフォーム導入を成功させるポイント

 
現状のデジタルマーケティングの棚卸し

冒頭に記載したように、ABMプラットフォームを単独で利用しても大きな効果を得ることは難しく、既存のテクノロジー、施策やプロセスとの連携が必要です。ABMプラットフォームの連携においては、まず現状のデジタルマーケティングの施策、運用体制、利用しているテクノロジーを把握し、ABMプラットフォームの導入にあたって更新・改善が必要な要素・要件を洗い出します。ここで整理した要素・要件は、ABMプラットフォームを選定するにあたっての拠り所となります。
 

マーケティングと営業でのターゲティング基準合意

本連載の第1回でも、ABMは、ターゲットとなる「企業(アカウント)」を明確に定義することが全てのアクションのスタートであり、マーケティングチームと営業チームが密接に顧客データや分析示唆、キャンペーン等を連携して優先するターゲットをフォローすることである旨を解説しました。マーケティングと営業チームの双方で具体的な優先度や定義付けを確認・合意した「自社のビジネスにおける売上インパクトが大きなアカウント」や、ターゲティング優先度に基づきABM施策を実行していくことになります。
 

マーケティングと営業でのプロセス合意

B2Bのマーケティングと営業の現場で長く共有されている課題感は、主に以下2点に集約されます。
 
・マーケティングは営業にリードを引き渡してもフォローしてくれないと感じている
・営業はマーケティングが有効なリードを引き渡してこないと感じている
 
ABM施策は、営業がターゲットにしたい「企業(アカウント)」を明確に定義するところからスタートしますので、この齟齬が解決しやすいというのも普及している理由ですが、現場のオペレーションを具体的に回していくためにも、アカウント軸のリード創出、リードナーチャリング、引き渡し、営業フォロー、フィードバックといったプロセスをマーケティング・営業チーム間でしっかりとすり合わせしながら進めたいところです。
実際に私が実際に支援しているプロジェクトの中には、営業チームに専属のプロセス改善コンサルタントが伴走しながら、ABMプラットフォームを導入しているケースもあります。

主な統合ABMプラットフォーム

エンタープライズ向けの統合ABMプラットフォームとして高い評価を得ているソリューションは、コンセプト発案の地であるアメリカで多くのベンダーによって提供されています。ここ数年でテクノロジーや市場が成長している分野であるため、ベンダーの数はまだそれほど多くありません。
 
これらの統合ABMプラットフォームの特徴としては、複数チャネルを横断したエンゲージメント機能、他テクノロジー・データとの連携、人工知能(AI)や機械学習(ML)を多用したデータの深い分析とった高度な機能が挙げられ、これらによって複雑なユーザーの購買行動のフォローを可能にしています。

ここでは市場でリーダーとして認知されている3つのソリューションをご紹介します。
 

6sense
6senseは、静的データ、人口統計、企業統計に依存する基本的な予測リードスコアリング・ツールとは異なり、Webから得られる何千ものインテントデータを結び付けて予測を行います。AIや機械学習を使用して、あらゆるチャネル、さまざまなデバイス、複数の個人にわたる膨大な数の購買行動シグナルを解析してターゲティングや施策実行を支援します。

6sense

  

Demandbase One
既にABMプラットフォームとして高い評価を得ていたDemandbaseがEngagioを買収し、機能補完をして統合サービスとしてリリースしたものがDemandbase Oneです。Demandbase Oneは、独自データ、サードパーティデータ、および企業独自のファーストパーティデータを組み合わせることにより、収益チームに、購買ジャーニーの各段階における顧客と見込み客の完全なビューを提供するとともに、高度なAIと機械学習により、商談に最も転換しやすく、最終的に価値ある顧客となるアカウントを提示します。
 

demandbase

   

Terminus
Terminusは、マーケティングと営業チームがABMキャンペーンのターゲット設定、実行、測定、最適化を支援し、デマンドジェネレーション、セールスパイプライン、顧客マーケティングのための自動化されたキャンペーンを容易に開発することができます。各キャンペーンにおいては、異なる購買段階、ペルソナ、アカウント、その他の基準に応じた施策を実行するとともに、エンゲージメント分析、インテントに基づく効果測定が可能です。
 

Terminus

まとめ

日本のB2B企業で既に顕在化していたデジタル化やデータ活用の課題に加えて、2020年から続くコロナ禍がもたらした社会、認知、行動の変容はマーケティング・営業の現場にも多くの課題とチャレンジを突きつけています。既存のマーケティング・営業活動にデジタルテクノロジーを組み入れていくことはもはや避けて通ることが出来ない状況です。
 
全7回の連載を通して、デジタルマーケティングにおいて注目が高まるABM(アカウントベーストマーケティング)について解説してきましたが、ABMの本質は、複合的なデジタルマーケティングと高度なデータ活用の実践に他なりません。課題を持っているB2B企業こそ、ぜひこのABMという施策に取り組んで欲しいと思っています。
 

解説者


田口 裕
マネージングディレクター / Managing Director
 
日系産業機器メーカーの駐在員としてアメリカで勤務後、ベンチャー企業にて、海外事業パートナー開拓、市場調査、現地法人の設立や新規事業企画・開発に従事。海外在住経験や海外の事業パートナーとのビジネスを通じて培ったグローバルビジネスや異文化コミュニケーションへの深い理解を活かし、グローバルエンタープライズのデジタルガバナンス戦略策定・実装、大規模Webサイト開発、コンテンツ運用基盤(CMS)導入、顧客データマネジメント戦略、国内外のプライバシー保護規制対策プロジェクトの支援を得意とする。

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