アンダーワークスの小林です。2024年3月26日〜29日の間にDOMO本社のあるアメリカのユタ州ソルトレイクシティで開催された「DOMOPALOOZA 2024」の参加レポートの後編をお伝えいたします。まだ前編を読んでいない方は、ぜひ前編も合わせてご覧ください。
 

あわせて読みたい! DOMOPALOOZA 2024参加レポート(前編)|海外視察

後編は以下のテーマを中心にお話しさせていただきます。

・DOMOPALOOZA2024で開催されたセッションテーマから読み解くトレンド
・今後の展望予測(DOMO.AIによる変化・私たちへの影響)

「AI」「エンパワーメントとリーダーシップ」

DOMOPALOOZA2024では2日間に渡り25のブレイクアウトセッションが開催されました。他社のDOMO活用事例など、DOMOユーザーとしても新しい気づきが得られるセッションでした。
 
私の中で印象に残ったセッションはDOMO ON DOMO、つまりDOMO社でのDOMOの活用事例です。CEO向けの”分かりやすさ”が優先されるダッシュボードと、見た目の美しさも重視したい開発者の心の葛藤も垣間見られ、人間味を感じる内容でした。
 
また、DOMO社の組織体制についても言及され、DOMO社では縦割り組織化への対策と社員のキャリアパスの観点から中央集権型であるという点も個人的には意外でした。そんなブレイクアウトセッションテーマからトレンドを読み解いてみたいと思います。
 
個人的な観点でカテゴライズしてみると以下のようなカテゴリと割合になります。「データ分析と最適化」が割合としては最も多いですが、このカテゴリはDOMOの普遍的なテーマですので、ここでは別の切り口で考察してみます。
 

見て分かる通り、「データ分析と最適化」以外ですと、若干ではありますが「AI」「エンパワーメントとリーダーシップ」の割合が多いです。ここから「データとAI技術を使用して、ユーザーや組織より力を持つ時代」になっていくことが読み取れます。

DOMO.AIによる「データの民主化」の加速

筆者の個人的な解釈ですが、BIツールとは「数値を数字に変換する手段」であると考えます。もちろんDOMOは単なるBIツール以上の機能を持ちますが、便宜上BIツールとして扱わせていただきます。
 
この場では数値と数字を以下のように定義します。
 
・数値:それ単体で意味を持たない数
・数字:それ単体で意味を持つ数
 
例えば、自社で運営するWebサイトの今月の訪問者数が1万人だったとします。この1万という数は単体で意味を持たないため、上記の定義では数値に分類されます。数値からは示唆考察が行ないので、アクションまで落とし込めません。
 
これが前月比較で50%減の1万だったとしたらどうでしょう。内的なのか要因なのか何かしらの要因があるため、示唆考察に繋がります。この場の定義では数字に分類されます。
 
マーケターは複数の数値や切り口を組み合わせることで、意味のある数字に変換し、示唆考察から仮説立案、アクションまで一連の動きが求められます。ただし、これらは個人の能力・経験に依存し、属人化される傾向がありました。
 
ご存知の通り、DOMOの画期的な点はデータ活用の敷居を下げ、データ活用を民主化したことにあります。SQLなどの専門コードを書けなくとも、DOMOのMagic ETL(GUI)により「何のデータをどのテーブルからどういう条件で抽出するか」を実行できます。
 
今回発表されたDOMO.AIを局所的(DOMO内)に見るとETL依存が減りました。専門性がさらに下がり、極端に言えば、AIとのチャット(一般コードの使用)だけで、カード(DOMO用語でグラフ)の作成を行えるようになり「データの民主化」は今後ますます加速されていくと考えます。

「調理」よりも「漁業」が人間の仕事に

DOMO.AIをユーザー視点で局所的に見ると「便利になった!」ですが、「データの民主化」により「データの二極化」現象も起こると考えます。つまり、データを活用できる個人・組織とそうでない個人・組織の格差が広がるということです。
 
データを活用できる個人・組織はこれまでよりも短い時間でカードを作成できるようになり、残りの時間を示唆考察や仮説立案などに充てられます。組織単位ではもちろんですが、同じ組織内の個人単位でも生産性の格差が広がり、仕事が集まる人とそうでない人に分岐していく可能性があります。
 
一方、DOMO.AIをユーザー視点で全体的に見ると、DOMOがカバーできる領域以外の重要性がますます高まってくるのではないでしょうか。具体的にはリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)、カスタマーデータプラットフォーム(CDP側)、さらにそれ以前のデータ取得の仕組みです。
 
DOMOはさまざまなデータソースから取得した数値を調理して数字を作るツールですが、DOMO.AIと言えど、大元のインプットデータ自体を生成することはできません。優れた調理ツールを活用できるか否かは「漁師」がどれだけ質の高いインプットデータをDOMOに流し込めるかに依存します。
 
また、そもそもの「課題特定」によるアプトプットの質の差も大きくなるのではないでしょうか。極端に言えば、解くべき問いを作ってしまえさえすれば、迅速にAIが最適解を導いてくれる時代です。誰でも正解が導けるようになった時代のため、解くべき課題「精度」こそがアウトプットの質の差を付けます。
 
ただ、AI時代と言えど、数字を基に最終的に意思決定するのは人間です。その人間のポジションであるCDO(チーフ・データ・オフィサー)の重要性も時代の変化に応じて高まってくると考えます。
 
自戒を込めてですが「AIは活用するものであり依存するものではない」という点は忘れてはなりません。依存するほど使いこなせれば良いのですが、実際には「便利と聞いたので、導入してみたが、使いこなせないので外注する」というユーザーも多く出てくるのではないでしょうか。

DOMOPALOOZA2024の表テーマと裏テーマ

DOMOPALOOZA2024を通じてDOMO社が私たちに伝えたかったことは何でしょうか。
 
「表テーマ」としては、やはりAI技術 × データです。DOMO.AIによって起こるわかりやすい変化としては前述の通り「データの民主化」が加速するという点です。言い換えると、データ活用が専門的な分野から一般的な分野にシフトされるということです。
 
例えば、これまでMagic ETLを使用できなかったジェネラリストがDOMO.AIによりカードを作成したり、示唆考察を行ったり、できることが拡張されます。ここは誰しもがイメージしやすい点かと思います。
 
では、「裏テーマ」は何でしょう。
 
それは「人間力の向上」ではないかと考えます。DOMOに限った話ではないですが、AIの話を聞く度に、人間力の重要性が高まっていくと感じます。正解が導きやすくなったということは、誰でも瞬時に同じ施策を思いつくことができるので、必然的に他者(他社)との差別化が図りにくくなります。
 
そのような外的環境の中、どこで差別化が図れるかといえば「この人が言うなら」という「信頼関係の構築度合い」に帰着すると考えます。AIから導いたデータを活用してアクションを起こすには社内の人間を納得させる必要があります。
 
同じことを話してもAさんとBさんで受け取り方が変わるのは、関係性です。この関係性を構築するための人間力はAI時代には最も大事なことではないかと考えます。

最後に

ここまで書いてきたように、DOMOPALOOZA2024のメイントピックはAI技術 × データでした。DOMO以外のプラットフォームでもAIが使用される場面は増え、従来のデジタルマーケティング戦略・施策にAIが当たり前のように組み込まれていくでしょう。
 
DOMOではフリーミアムモデルが2023年11月から導入されました。これは「使ってもらえさえすれば良さが分かってもらえる」というDOMO社の自社製品に対する自信も伝わってきます。
 
DOMOPALOOZA2024は新サービスの発表だけでなく、DOMOユーザーのエンゲージメントを高める側面もあります。DOMOというツールの機能面だけでなく、”DOMO社が提供しているツール”であるという意味の創造の狙いもあるのではないでしょうか。
 
この記事を読んでいただいたことをきっかけに、データ活用において今後人間に求められる役割をチームメンバーと話し合ってみてはいかがでしょうか。

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