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「モノからコトへ」という表現は、顧客の消費行動の変化を意味し、購買体験の重要性を指摘するものです。この傾向を踏まえ、より良い顧客体験を創造するためには、PIM(プロダクト・インフォメーション・マネジメント)の活用が欠かせません。本記事では、Contentserv社が日本で提供しているPIMの特徴や活用方法について、前編と後編に分けて解説します。後編では、Contentserv社のサービス概要や導入事例に焦点を当てて紹介します。
 
(話:株式会社Contentserv 代表取締役社長/アジア太平洋地域マネージングディレクター 渡辺 信明 氏)
 

あわせて読みたい! 顧客体験を最適化するContentserv(前編)|PIMベンダー特集 vol.1

PIMからPXMへの進化

――PIMの先に、PXM(プロダクトエクスペリエンス管理)という概念があると聞きましたが、これは何を意味しているのでしょうか?
 
PIMは、従来のMDM(マスター・データ・マネジメント)では提供できない営業・マーケティングが必要とする商品情報管理機能を提供してきました。対象となるコンテンツは、商品仕様に加えて、プロモーションコンテンツや広告素材、商品画像や動画などとなります。
 
そしてこれらの商品属性は、AIとの相性が非常に高いものです。PXMは、AIを活用して商品コンテンツを顧客のニーズに合わせてパーソナライズし、最適な顧客体験を創出するアプローチとなります。
 
レコメンデーションエンジンの進化により、商品レベルでのパーソナライズは実現できつつありますが、コンテンツレベルでのパーソナライズは困難とされてきました。AIとPIMの発展によって、現在では商品コンテンツレベルでのパーソナライゼーションが可能になっています。
 
 
――PIMの世界はPXMへと進化していますが、実際にPIMを使っている現場での変化はありますか?
 
日本ではこれまでメーカーを中心にPIMが活用されてきましたが、小売業界でもPIMの利用が広がりつつあります。
 
メーカーにおけるPIMでは、主に代理店や小売店、エンドユーザである消費者それぞれに最適な商品コンテンツを提供する仕組みが実装されています。そして小売店の場合は、サプライヤーとの商品情報運用の効率化に対するニーズが高い傾向にあります。
 
例えば、ドラッグストアの株式会社サンドラッグでは、これまでサプライヤーとの商品情報のやり取りを表計算ソフトやメールを通じて行ってきましたが、サプライヤーがPIMに直接データを登録できるセルフサービスシステムを導入しました。サプライヤーによって登録されたデータは自動的に品質が検証され、問題がなければシステムに自動登録されます。このプロセスにおいて、AIは「灰色」や「グレー」、「mm」や「cm」のような表現の違いを必要に応じて調整し、自動的にデータをマッピングすることで、データ管理の効率を大幅に向上させることができます。PIMに実装されたワークフローに基づきコンテンツが最終化され、最終承認された商品は、Eコマースシステムに自動連携されます。
 
小売業者は、多様な商品を複数のチャネルを通じて販売しています。ドラッグストアを例にすると、同じ薬でも錠剤形態か粉末形態か、対面販売専用かオンラインでも販売可能かといった、商品バリエーションであるSKU(ストック・キーピング・ユニット)が大量に存在し、その対応が求められます。マーケットプレイスえで商品を販売する場合には、マーケットプレイス毎に画像の解像度や文字数の制限などが異なります。PIMは、このような販売チャネルが求める細かい仕様に応えながら、プロセスを自動化することができます。

日本企業のDXを支えるContentserv

――他にもContentservの導入事例をご紹介いただけますでしょうか。
 
パナソニックグループにおいて​B2Bソリューション事業の中核を担うパナソニックコネクト株式会社では、ビジネスパートナー支援の一環として、オンラインでの情報提供に力を入れています。販売代理店の属性に応じて情報をパーソナライズし、必要な情報を適切に提供するための基盤としてContentservを活用しています。
 
オフィス関連機器をグローバルに展開している株式会社リコーは、多様な商品情報をグローバルで共有するために、グローバルPIMを構築しました。機能の豊富さと迅速な実装を評価してContentservを選択し、わずか8ヶ月で本番稼働を開始しました。
 
スポーツブランドの美津濃株式会社は、PIMとDAM(デジタル・アセット・マネジメント)を同社のDXの出発点と考え、事業変革を推進しています。これまで世界中の販売子会社に散在していた商品情報をContentservで統合し、各地域のEコマースサイトを含むさまざまなチャネル向けのシームレスな商品情報管理基盤を構築しました。
 
電子顕微鏡分野で世界首位の日本電子株式会社は、アフターサービスビジネスの強化を目的として、Contentservをシステムの中心に据えてアフターサービス・システムを刷新しました。本体に加えて技術情報やサービスパーツ情報をContentservで一元管理し、消耗品のB2Bコマースを通じた販売や、フィールドサービスのオペレーション効率化に活用されています。
 
最近、製造業においては売切型収益モデルからの脱却を目指す事業変革が進んでいます。すなわち、製造業のサービス業への転換が進んでおり、アフターサービスやフィールドサービスの重要性が高まっています。そして、日本電子のように、このアフターサービス分野におけるPIMの活用事例も増えてきてます。

PIMの導入は、アジャイルに進める

――Contentservを導入する場合は、どのようなフローになるのでしょうか。
 
Contentservを導入する際のプロセスには、主に3つの重要なステップがあります。まず第一に、商品情報を格納するための「データモデル」の最適解を見つけることです。次に、商品情報を最適化するための業務フローを整理することです。そして最後のステップは、基幹システムなどからの基礎データの取り込みと商品コンテンツを外部システムで活用のためのインタフェースやAPIの設計です。
 
Contentservは導入自体は、大きな開発作業を伴うものでは有りません。基本的には、設定作業が中心となります。そして、PIMの導入プロジェクトにおいては、アジャイル方式の採用を推奨しています。これは、顧客のタッチポイントやカスタマージャーニーを基に、求められるデータモデルの最適解を模索することが重要だからです。特定の事業、販売チャネルや商品カテゴリから始める段階的な導入アプローチも、大企業においては効果的な導入方法論となるでしょう。
 
いずれにせよ、基幹システム起点ではなく、顧客起点でのPIMの設計や運用が大切です。
 
 
――導入期間はどれくらいが目安でしょうか。
 
PIMプロジェクトの導入期間については、3ヶ月でプロトタイプを実施し、6ヶ月で本番稼働を迎えるのが理想と考えています。初期のプロジェクトスコープは企業によって異なりますので、一概に期間を定義することは困難ですが、これまでの実績では半年から1年で本番稼働を迎えることが多いです。
 
最近では、データモデルの設計や設定にAIが組み込まれ、プロジェクト工数の削減が期待されています。
 
また、Contentservはシステム間連携機能の強化にも注力しています。APIの強化に加えて、簡単な設定で外部システムと連携できるコネクタも多数用意されています。
 
 
――国内の販売パートナーは何社ありますか。
 
現在、日本における販売パートナーは6社です。日本を除くアジア地域では、シンガポール、オーストラリア、インドとベトナムで5社のパートナーと協業しています。現時点では日本からの売上が大きいですが、今後は日本市場を基盤としながら、アジア市場での成長を目指していきます。

PIMに加えて、分析機能を強化

――今後の開発計画やビジネス戦略について教えてください。
 
現在は、AIの活用と分析機能の強化が重要テーマです。AIによる商品情報の自動生成、そして生成されたコンテンツの効果を測定し、さらに最適化するためのDSA(デジタル・シェルフ・アナリティクス。詳しくは前編の記事を参照ください)の機能強化に注力しています。
 
 
――販売パートナー以外の協業については、どうお考えでしょうか。
 
販売パートナー以外での協業に関しては、EコマースやCRM、ウェブCMSのソリューションベンダーとの協業が中心となっています。Adobe社やSalesforce社などのソリューションとの連携はお客様にとって重要な機能で、そのためにはベンダー同士の横の繋がりが大切です。
 
そしてこれから大手企業でのPIMの投資対効果を最大化していくためには、企業のエンタープライズアーキテクチャにPIMが正しく組み込まれることが非常に重要です。その点においては、コンサルティングファームとの連携を強化し、日本企業の再興に向けたベストプラクティスの提供を共に進めていければと考えています。
 
 

話者

株式会社Contentserv 代表取締役社長
渡辺 信明 氏
 
国内SI企業、外資系ソフトウェア企業を経て、2005年にベンチャー企業の創業に参画。ソフトウェア事業を統括し、株式上場を果たす。2017年に株式会社Contentservを設立し、代表取締役に就任。Contentserv日本・アジアパシフィック地域を統括する。 
 
「商品情報は顧客接点のラストワンマイルです。商品情報管理を制する者が、マーケティングを制すると言っても過言ではありません。私たちContentservは、全く新しい文脈的な商品情報管理手法によって、お客様のデジタル変革を支援します。」 

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