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2021年に改正された障害者差別解消法が2024年4月から施行(*1)されました。この法改正は、障害を持つ人々の権利をさらに強化し、彼らがより平等に社会に参加できるようにすることを目的としています。デジタルの文脈では、デジタル社会の進展に伴い、行政機関や事業者は合理的配慮の一環としてWebアクセシビリティに対してより積極的に取り組むことの必要性に注目が集まっています。本記事では、障害者差別解消法の概要、最近の法改正のポイントについて解説します。
 
(解説:アンダーワークス マネージング・ディレクター 田口裕)
 

日本で法律が制定された背景と基本的な内容

障害者差別解消法(正式名称:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)は、行政機関や事業者に対して、障害を理由とする「不当な差別的取扱い」を禁止し、「合理的配慮の提供」を求め、障害のある人もない人も互いにその人らしさを認め合いながら、共に生きる社会(共生社会)を実現することを目指して制定された法律です。この法律の重要性は、障害者の人権を守り、社会全体の意識を変えることにあります。
 
日本の障害者差別解消法は2013年(平成25年)に制定され、2016年(平成28年)4月1日に施行されました。この法律が制定された背景には、障害者の権利に関する国際的な動きがあります。2006年に国連で採択された「障害者権利条約」がその一例で、日本も2007年に署名し、2014年に批准しました。
 
この法律は、障害者が社会において平等な権利を享受し、障害を理由とする差別がなくなるようにするための法的枠組みを提供しました。また、「不当な差別」や「合理的配慮」についてその意味、必要とされる行動や社会全体の対処の重要性が詳細に示されたことも大きな意義がありました。
 

障害者差別解消法の目的

・障害者への差別の防止:正当な理由なく、障害を理由としてサービスの提供を拒否することや、サービスの提供に当たって場所や時間帯を制限すること、障害のない人には付けない条件を付けることなどの差別行為を禁止し、障害者が平等な権利を享受できるようにする。
 
・合理的配慮の提供:障害者の社会参加を妨げるバリアを取り除くために、何らかの支援を必要としていると意思表示があった場合、可能な限り必要な配慮を提供することを義務付ける。
 
・共生社会の実現:障害者差別の防止と合理的配慮の重要性について、社会全体の理解を深めるための教育と啓発活動を推進し、障害がある人もない人も平等な環境で共に生活、労働や社会参加ができる社会を目指す。
 
<2013年に障害者差別解消法が定めた義務の範囲>

2021年(令和3年)の法改正

2021年5月に改正された改正障害者差別解消法(正式名称:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律)が2024年4月から施行されました。この改正では、これまで事業者に対しては努力義務となっていた合理的配慮が義務化され、行政機関だけでなく、事業者も積極的に障害者のための環境整備を行うことが求められるようになりました。
 
<2021年の改正障害者差別解消法が定めた義務の範囲>

合理的配慮の意味とWebアクセシビリティ

障害者差別解消法における「合理的配慮」の定義(*2)は、障害者が社会に参加するために必要な配慮を意味します。具体的には、障害者が施設やサービスを利用しやすくするための調整や、障害者が働きやすい環境を整えるための措置が含まれます。今回の改正により行政機関だけではなく事業者も、障害を持つ人から、何らかの対応を必要としているとの意思が示されたときには、負担が重すぎない範囲で対応することが求められています。

法8条2項

「事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするようにしなければならない。」

法律の文中では合理的配慮の具体的な対応に関する定義は規定されていないため、政府の資料やポータルサイトに掲載されている情報などを参考にしつつ、必要に応じた対処を実行することになります。
 
障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針
関係府省庁所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針
障害者の差別解消に向けた理解促進ポータルサイト
 

事業者が求められる合理的配慮の具体例

・物理的環境の改善:オフィスや店舗の段差解消やバリアフリー設計、視覚障害者のための点字案内など
・コミュニケーションや情報提供の改善:聴覚障害者のための字幕や手話通訳の提供、視覚障害者のための音声案内など
・ルールやプロセスの調整:勤務規定の柔軟な調整や、ユニバーサルな業務プロセス設計、障害を持つ従業員を踏まえた作業設計など
 

Webアクセシビリティに対する注目と取り組みの意義

Webアクセシビリティとは、「利用者の障害の有無やその程度、年齢や利用環境にかかわらず、Webで提供されている情報やサービスを利用できること、またはその到達度を意味」します。(*3
 
これは視覚障害、聴覚障害、運動障害、認知障害など、さまざまな障害を持つユーザーだけではなく、広く人々がインターネット上の情報やサービスを利用しやすくするための取り組みを指し、Web上に公開されている情報や機能へのアクセスを容易に使用できるようにするための設計が含まれます。
 
一般的に「Webアクセシビリティが確保できている」状態とは、具体的に次のような状態になることが望まれます。(*3
 
・目が見えなくても情報が伝わる、操作できること
・キーボードだけで操作できること
・一部の色が区別できなくても情報が欠けないこと
・音声コンテンツや動画コンテンツでは、音声が聞こえなくても何を話しているかわかること
 
Webアクセシビリティの取り組み自体は今回の改正で義務化されたわけではありませんが、前述の合理的配慮の一環として考えることができ、情報へのアクセスが危機管理、仕事や社会生活の質に直結する現代のデジタル社会では非常に重要と認識されています。

まとめ

障害者差別解消法は、障害者が社会の一員として平等に生活し、働くことができる環境を整えるための重要な法律です。障害を理由とする差別を防止し、障害者が必要とする合理的配慮を提供することを義務付けることで、共生社会の実現を目指しています。
 
特に、最近の法改正によりWebアクセシビリティの重要性が高まっています。企業や公共機関は、障害者がインターネット上の情報やサービスに平等にアクセスできるようにするための取り組みを強化する必要があります。これにより、障害者のデジタル社会への参加を促進し、すべての人々が共に暮らし、共に成長する社会を築いていくことが求められています。
 
次回の記事ではWebアクセシビリティに関してより詳しく解説します。
 

注釈

*1 )https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/pdf/gouriteki_hairyo2/print.pdf
*2) https://shougaisha-sabetukaishou.go.jp/goritekihairyo/
*3)https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/08ed88e1-d622-43cb-900b-84957ab87826/9f89625f/20230512_introduction_to_weba11y.pdf
 
 

解説者


田口 裕
マネージングディレクター / Managing Director
 
日系産業機器メーカーの駐在員としてアメリカで勤務後、ベンチャー企業にて、海外事業パートナー開拓、市場調査、現地法人の設立や新規事業企画・開発に従事。海外在住経験や海外の事業パートナーとのビジネスを通じて培ったグローバルビジネスや異文化コミュニケーションへの深い理解を活かし、グローバルエンタープライズのデジタルガバナンス戦略策定・実装、大規模Webサイト開発、コンテンツ運用基盤(CMS)導入、顧客データマネジメント戦略、国内外のプライバシー保護規制対策プロジェクトの支援を得意とする。

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