アンダーワークスのカオスマップ・プロジェクトチームです。いよいよ公開直前を迎え、プロジェクトメンバーは総仕上げに取り組んでいます。今回は、2024年の注目テーマのひとつであるECプラットフォームについて取り上げます。ECプラットフォームは、単なる「販売チャネル」から、リアルとデジタルを融合した「顧客体験基盤」へと大きく進化しています。オムニチャネル化の加速により、実店舗とECの境界は曖昧になり、AIやソーシャルコマースなど新技術との統合も進んでいます。本記事では、進化を続けるECプラットフォームの最新動向と、企業の活用事例を紹介します。
2024年のECプラットフォームを取り巻く環境
2024年、日本国内のEC市場は力強い成長を示しており、2023年のBtoC-EC市場規模は24.8兆円(前年比9.23%増)、BtoB-EC市場は465兆円(前年比10.7%増)に達しました。特筆すべきは、BtoB市場のEC化率が40%を超え、BtoC市場のEC化率(物販系)も9.38%に到達したことです。
BtoC-EC 市場規模の経年推移(単位:億円)
BtoB-EC 市場規模の推移
物販系分野の BtoC-EC 市場規模及び EC 化率の経年推移
(市場規模の単位:億円)
出典:経産省(2024年9月/令和5年 電子商取引に関する市場調査報告書)https://www.meti.go.jp/press/2024/09/20240925001/20240925001-1.pdf
このような市場拡大の中で、特に注目すべきは以下の市場動向です。
・モバイルECの利用率が全EC取引の75%を超え、スマートフォンファーストの時代が本格化
・サステナビリティへの関心が高まり、環境配慮型のEC施策が競争優位性を獲得
・5G通信の普及により、没入型ショッピング体験が一般化
・D2C(Direct to Consumer)ブランドの台頭による市場の多様化
・地方発のEC事業者の成長による地域経済の活性化
消費者行動においては、オンラインとオフラインの境界が一層曖昧になり、シームレスな購買体験への期待が高まっています。
ECプラットフォームの最新トレンド
急速に変化する市場環境を背景に、ECプラットフォームでは新たな技術や施策が次々と導入され、顧客体験の向上と競争力強化が図られています。
AIパーソナライゼーションの高度化
生成AIの進化により、購買履歴だけでなく、ソーシャルメディアでの興味関心を含めた精度の高い商品レコメンデーションが実現しています。これにより、より個別化された顧客体験を提供することが可能です。
ソーシャルコマースとライブコマースの発展
ソーシャルメディアを活用した直接購買が一般化し、特にライブコマースは年間成長率40%を記録しています。インフルエンサーマーケティングとの連携により、高いエンゲージメント率と購買転換率を実現しています。
サステナビリティへの取り組み強化
環境負荷を最小限に抑えた配送オプションや、リサイクル素材を使用したパッケージングの採用が標準化されています。消費者の環境意識の高まりに応え、サステナブルな商品提供が競争力の源泉となっています。
次世代ECプラットフォームを支えるテクノロジー
次世代ECプラットフォームは、最新のテクノロジーによって革新的な顧客体験を提供する基盤へと進化しています。その中核を担う主な技術を以下に紹介します。
AIレコメンデーションエンジン
AIが顧客の購買履歴や閲覧データ、トレンド情報を分析し、個別化された商品提案を行います。この技術により、顧客のニーズに即した提案が可能となり、満足度や購入率が向上します。
AR/VR技術
AR(拡張現実)を活用して、商品を購入前に自宅の仮想空間で配置し、サイズやデザインを確認する機能が普及しています。VR(仮想現実)を活用したショッピングモールでは、実店舗のような体験が可能となり、購買プロセスをより直感的で楽しいものにします。
次世代チャットボット
自然言語処理を搭載したチャットボットは、24時間体制で顧客サポートを提供します。簡単な質問だけでなく、複雑な問い合わせにも対応可能で、迅速な解決が顧客満足度を向上させます。
Web3.0技術
ブロックチェーンを活用して商品履歴を追跡し、透明性を高める技術が注目されています。また、NFTを活用したデジタル商品の販売や所有権の証明が新しい購買体験を提供しています。
ECプラットフォームの具体的な活用事例
ここでは、具体的な企業事例をもとに、最新のECプラットフォームの活用方法を紹介します。
食品・飲食業界:イオン
イオンは英国ネットスーパー大手「Ocado(オカド)」と提携し、次世代型ネットスーパー「Green Beans」を展開しています。ここではGreen Beansの特に革新的な取り組みを3つ紹介します。
① OcadoのAI物流技術
Green Beansの核となるのが、OcadoのAI技術を採用した物流システムです。このシステムは、数万種類の商品を効率的に管理し、AIとロボットによる自動ピックアップで注文商品を迅速に用意します。また、1秒間に1400万通りもの配送ルートを計算し、最適な配送計画を策定することで、顧客に迅速かつ正確な商品提供を可能にしています。
② 倉庫型ネットスーパーの新モデル
従来の店舗型ネットスーパーとは異なり、専用の倉庫型システムを採用しています。誉田CFC(顧客フルフィルメントセンター)を中心に、商品管理から配送までを効率化し、欠品の少ないスムーズなサービスを実現しています。
③ AIによる買い物体験の向上
「スマートカート」と呼ばれる機能では、AIが顧客の嗜好を分析して商品を提案します。AIが自動的に商品をかごに追加し、不要なものを外すだけで注文が完了するため、買い物時間を大幅に短縮できます。これにより、顧客にパーソナライズされた便利な買い物体験を提供しています。
家具・インテリア業界:IKEA
IKEAは、家具・インテリア業界におけるEC後発組ながら、オムニチャネル戦略を強化し、デジタルとリアルの融合による顧客体験の向上に注力しています。この取り組みにより、EC売上を大幅に伸ばし、従来の実店舗中心のビジネスモデルから進化を遂げています。
IKEAアプリの機能強化
IKEAのオムニチャネル戦略の中核を成すのが、IKEAアプリの進化です。このアプリは、単なるオンラインストアではなく、商品検索や在庫確認、店舗でのスキャン機能、注文履歴管理といった利便性を提供しています。さらに、AR技術を活用した「IKEA Place」では、自宅に家具を仮想的に配置し、購入前に商品のサイズ感やデザインを確認できます。この機能は、オンラインと実店舗をシームレスにつなぐ役割を果たし、顧客の購買体験を大きく向上させています。
IKEA渋谷(2024年)での革新的な取り組み
2024年にリニューアルオープンしたIKEA渋谷は、イケアの最新戦略を体現する革新的な店舗です。都心型店舗として、限られたスペースを活かしながら、顧客の暮らしに合わせた展示や体験型コンテンツを提供しています。オンラインと連動した注文サポートや、自宅配送サービスの強化により、ECとリアル店舗の垣根をなくしています。また、来店者がアプリを活用して商品をスムーズに注文できる仕組みを整備することで、都心部における利便性を高めています。
まとめ
ECプラットフォームは、技術の進化に伴い今後もさらなる発展が予想されます。特に、メタバースとの統合による新しい購買体験や、生成AIを活用した超パーソナライズ化、サーキュラーエコノミーへの移行、そしてグローバルなデジタルマーケットプレイスの台頭が注目されています。
企業には、これらのトレンドを取り入れた戦略立案と迅速な実行が求められます。変化の激しいEC市場で競争優位性を維持するには、最新技術を活用しつつ、顧客体験を継続的に改善することが不可欠です。
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