アジアマーケティングの熱気と勢い

2024年12月3日、4日の2日間、マレーシアのクアラルンプールで開催されたWhat’s Next in Marketingに参加してきました。本イベントは、メディア会社であるMARKETECH APACが主催しており、アジア各国で年に数回開催されています。アンダーワークスとしては前回のシンガポール開催に続いて2回目の参加となり、弊社のグループ会社であるClickrは今回のイベントでシルバースポンサーとしてブース出展しました。
 
MARKETECH APACは「アジア太平洋地域(APAC)全域におけるマーケティング産業の利害関係者、たとえばブランド、代理店、テクノロジー企業、メディア、プラットフォーム、中小企業(SME)に公平に呼びかけ、相互に学び合うためのエコシステムを構築する」というミッションを掲げており、それを体験できるとても有意義なイベントでした。

活気のある街、クアラルンプール

東南アジアは全域でGDP成長率を高水準で維持しており、マレーシアはそれに加えて、政治面・物価面でも安定しています。またGDPの6割が個人消費ということで、街全体が活気にあふれていると感じました。ちなみに消費大国のアメリカの個人消費はGDPの7割弱、日本は5割強です。
 

こうした背景もあり、今回のイベントではB2Cをテーマとした内容が中心となりました。加速する個人消費に対して、いかに正確にパーソナライズをし、マイクロモーメントを捉えるのか。そして、それを効率的かつ効果的に実現していくために、AIをどのように活用していくべきなのか。これらのテーマについて、リテール業界のAEON、オンライン学習プラットフォームのMindvalley、ストックフォトサービスのShutterstock、さらにマーケティングテクノロジー業界からはオムニチャンネル対応の顧客コミュニケーションサービスを提供するSleekFlowなどが実践的な内容のプレゼンテーションを行いました。
 
まさにMARKETECH APCAが掲げるミッションにふさわしい、マーケティングに関わるさまざまな立場からの知見が共有されたイベントでした。

熱気を帯びたテーブルディスカッション

本イベントの大きな魅力は、一方的に話を聞くだけでなく、参加者同士が活発に意見交換できる機会が多数設けられていることです。特に、午前中の最後に各テーブルで各テーマについて1時間みっちりディスカッションする時間は、非常に有意義でした。主催者側から各テーブルに2名コーディネーターが入り、ディスカッションを盛り上げてくれました。
 

イベントDay1のディスカッションのテーマは以下でした。
 
・Content Marketing
・Customer Engagement
・Customer Experience
・Customer Insights
・Data & Analytics
・Digital Advertising
・Generative AI
・Influencer Marketing
・Omni-channel Marketing
・Performance Marketing
  
1テーブル8名なので、限られた時間の中、参加者全員が全てのテーマで発言することは難しいですが、各テーブルにはうまく業界が振り分けられており、それぞれの立場でとても活発な意見交換がされました。
 
その中でも顧客接点としてよく出てきたのはメッセージアプリである「WhatsApp」の使い方でした。日本人としてはLINEを思い浮かべるところですが、グローバルのシェアでみるとWhatsAppが圧倒的シェアを誇っています。海外プロジェクトに数多く関わってきたこともあり、肌感覚としては分かっていたのですが、あらためて数字で見ると圧倒的な存在感に驚かされます。
 
ちなみにグローバルで各種業界の統計データや調査レポートを提供しているStatistaによると、2023年時点のメッセージアプリのランキングは以下のようになっています。
 
【メッセージアプリランキング2023(月間アクティブユーザー数)】

1位 WhatsApp:20億人
2位 WeChat:13億人
3位 Messenger:9億人
4位 Snapchat:7.5億人
5位 Telegram:7億人
6位 QQ Mobile:6億人
7位 LINE:2億人
 
(出典:Statista: Most popular global mobile messenger apps as of April 2024
https://www.statista.com/statistics/258749/most-popular-global-mobile-messenger-apps/)
 
LINEは日本でのシェアが8割を超えているものの、ほとんどのユーザーがアジアの数カ国に限られているため、世界的に見るとマイナーなツールになってしまいます。一方で、WeChatとQQ Mobileの利用者数は中国国内に限られる数字なので、改めて中国マーケットの大きさを感じます。
 
自分が参加したテーブルはディスカションが終わりきらず、ランチタイムが始まってもしばらく続いていました。その流れで、ランチをとりながらのネットワーキングも活発に行われ、午後はテーブルのメンバーで意見交換しながらプレゼンテーションを聞くといった雰囲気になり、より有意義な時間となりました。
 
2日目は別のテーブルで、異なるメンバーと一緒になりましたが、1日目の流れを体験しているので、朝テーブルにつくなり自然と自己紹介や会話が始まり、1日目以上にネットワーキングがしやすい雰囲気になっていました。

イベントブース

また本イベントのシルバースポンサーであるアンダーワークスの現地パートナーClikr社がブースを出しており、イベントに来訪していた50社以上と会話する機会がありました。
 

ブースでは、主に以下のような話題が中心でした。

・Marketing automation/segmentation
・Media buying
・MarTech
・Lead generation
・Social media marketing
 
Clikrとしてはマレーシアでのイベント出展は初めてでしたが、人々はみなフレンドリーで、会話もオープンでさまざまな情報交換ができました。ただし、マーケティング予算は比較的タイトで、意思決定に時間がかかる傾向があり、戦略立案は外部へ委託するものの、人件費が比較的安価なためコンテンツ制作系は内製するパターンが多いようでした。

余談とまとめ

今回は2日間のイベント参加とその後2日はワーケーションという形で現地に残り通常業務を行い、週末を使って帰国しました。4日間の滞在を通して最も印象的だったのは、まさに「勢い」という言葉に尽きます。イベントでは参加者自身が意見を積極的に発信し、周りはそれに対するそれぞれの見解をぶつけ議論が行われており、アジアの若いマーケターの前のめりな姿勢に圧倒されました。街は週末の夜にもなると、まっすぐに歩けなくなるくらいの人が集まり、ショップは夜遅くまで営業しており、飲食店も深夜までにぎわいを見せていました。
 
1杯1500円以上のクラフトビールや、1杯1,000円近いサードウェーブ系スペシャリティコーヒーを提供する洗練されたお店も人気を集めており、シンガポールや日本からの新規出店も相次いでいます。また1レッスン3,000円近くする世界で人気急上昇中の最先端インドアスポーツであるHYROXのジムも、ビジネスアワー後は多くの人がトレーニングに取り組んでいました。GDPの6割を個人消費が占めるというのも、うなずける光景でした。
 
今回のマレーシア訪問は、公私ともに良い刺激を受けるとともに、前職で日々実感していた「現地現物」の大切さを改めて認識させられる貴重な経験となりました。

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