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アンダーワークスのグループ会社には、シンガポールを拠点とするデジタルマーケティングエージェンシー「Clickr」社があります。本記事では、Clickrが現地のB2Bマーケティング分野で注目している最新トレンドを、海外支社からのレポートとしてご紹介します。
 
今回のテーマは、近年関心が高まっている「エージェンティックAI」です。マーケターの手を離れ、自律的に判断・行動するAIが、B2Bマーケティングにどのような変化をもたらしているのか。海外の最新事例も交えながら、その動向をわかりやすく解説します。

エージェンティックAIとは?―従来の自動化との決定的な違い

エージェンティックAIとは、あらかじめ定められたルールに従うだけの従来型ツールとは異なり、状況に応じて自ら判断し、能動的に行動できるAIを指します。これにより、これまで人の手を必要としていた業務をAIが自動で遂行できるようになり、B2Bマーケティングの現場に大きな変革をもたらしつつあります。
 
たとえば、見込み客の行動をリアルタイムで分析し、次にどのような情報を提供すべきかをAIが自ら判断。さらに、そのコンテンツ配信からフォローアップ、営業チームへの引き渡しまでを一貫して自律的に実行することが可能になります。

実際に進む「マーケティングの自律化」

エージェンティックAIは、もはや遠い未来の概念ではありません。すでに、B2Bマーケティングファネル全体における見込み客や顧客との関わり方を再構築し始めています。ここでは、エージェンティックAIが「自動化」「パーソナライゼーション」「スケーラビリティ」の観点から大きな価値を生み出している、インパクトのある3つのユースケースをご紹介します。
 

1. AIによるリードナーチャリングの自動化

これまでマーケターが担っていたリードの分類、メール配信、配信タイミングの調整といった作業を、エージェンティックAIがすべて自動で実行します。たとえば、資料のダウンロード履歴やWebページの閲覧履歴に応じて、最適なメッセージをリアルタイムで配信。さらに、関心が高まったタイミングで営業ミーティングを自動的に設定するなど、“動くインサイドセールス”として機能します。
 

2. 顧客ジャーニー全体の最適化

複雑化するB2Bバイヤーの購買ジャーニーにおいて、エージェンティックAIは各接点でのユーザー行動を把握し、次に取るべき最適なアクションを自ら判断します。たとえば、ウェビナーに参加したものの反応が見られないユーザーには、業界別の成功事例を提示するなど、一人ひとりの興味関心に合わせたフォローアップが可能になります。
 

3. リアルタイムでのパーソナライゼーション

ユーザーがWebサイトにアクセスした瞬間に、その業界や職種、関心度に応じたコンテンツを動的に出し分けます。チャットボットも、ユーザーの属性や行動履歴をもとに、最適なメッセージを表示。これにより、「誰にでも同じ体験」から「一人ひとりに最適化された体験」への転換が実現します。

ABMとの親和性が非常に高い理由

エージェンティックAIは、アカウントベースドマーケティング(ABM)との相性がとても良いテクノロジーです。ABMでは、ターゲット企業ごとにメッセージをカスタマイズし、複数のチャネルで一貫したコミュニケーションを行う必要があります。その分、施策の設計や運用には多くの時間や労力がかかるのが現状です。
 
エージェンティックAIを導入すれば、こうした高度なABM施策も効率的にスケールさせることができます。
 

・アカウントの行動を常にモニタリングし、関心の兆しをリアルタイムで検出
・業界に応じたWebサイトやメールコンテンツの出し分けを自動で実施
・価格ページの閲覧など特定の行動をトリガーに、営業アプローチを自動で開始
 
これにより、ターゲットごとに高い関連性を持たせたパーソナライズ施策を、精度を保ったまま大量に展開することが可能になります。
 

あわせて読みたい! ABMのコンセプトを理解する | レベル別ABM実践 #1

海外での活用事例:マーケティングの現場で“自律型AI”はどう使われているのか?

エージェンティックAIはまだ比較的新しい概念ではありますが、海外ではすでに先進的な企業が導入を進め、実際に成果を上げています。ここでは、その代表的な事例を3つご紹介します。
 

1. Drift:営業の“前さばき”を担うAIチャットボット

会話型マーケティングの先駆者として知られる Drift では、エージェンティックAIを活用したチャットボットを導入。Webサイト訪問者とのエンゲージメントを自動で行い、営業につなげる仕組みを構築しています。
 
・訪問者の属性(会社情報や業種)をリアルタイムで判別
・チャットボットが自動で質問を投げかけ、ニーズを把握
・条件を満たせば、その場で営業担当とのミーティングを即時に設定
 
営業担当が介在する前に、“AIが一次対応を完了させる”流れを構築しており、リード獲得から商談化までのリードタイムを大幅に短縮しています。
 

2. PathFactory:コンテンツを導く“キュレーターAI”

PathFactory は、B2Bのコンテンツマーケティングに特化したプラットフォームで、閲覧データに基づき、ユーザーごとに「次に見るべきコンテンツ」をAIが選び出す仕組みを構築しています。
 
・コンテンツの閲覧時間やクリック傾向をAIが分析
・ユーザーの興味関心に合わせて、関連コンテンツをリアルタイムで出し分け
・資料請求やデモ動画など、商談に結びつく行動を促進
 
「一斉配信型のキャンペーン」ではなく「1対1の会話」のような体験が実現され、平均的なコンテンツ消費量が大きく増加したと報告されています。
 

3. Salesforce Einstein:AIが“提案”だけでなく“実行”まで支援

Salesforceが提供するAI機能 Einstein は、CRMに蓄積されたデータをもとに、営業やマーケティングの次のアクションをAIが導き出してくれます。
 
・見込み客ごとの反応率や過去の接点を分析
・最適なタイミングや内容、チャネルをAIが提案
・フォローアップメールの送信など、一部のアクションは自動で実行
 
さらに、リードスコアの自動最適化や商談の優先順位付けといった戦略判断にも寄与しています。導入企業の中には、営業生産性が20〜30%向上したという報告もあります。

導入の第一歩:小さく始めて、大きく育てる

すべての業務をいきなりAIに任せる必要はありません。まずは、日々の繰り返し作業や、ルールに従って処理している業務を洗い出し、小さなステップから導入を始めることがポイントです。
 
・まずは、CRMやマーケティングツールのデータ連携を整理・最適化
・パーソナライズメール配信やリードスコアリングなど、一部の業務でパイロット導入
・効果を見ながら、少しずつチャネルや対象部門を拡大
 
こうした段階的な進め方なら、現場に過度な負担をかけることなく、スムーズにAI活用を定着させていくことができます。

まとめ

エージェンティックAIは、これまで人の手に頼っていたマーケティング業務を、リアルタイムかつ自律的に実行できる新たなテクノロジーです。その導入により、リードナーチャリングやパーソナライゼーション、ABM施策が、より少ない工数で高精度に実現できるようになりました。
 
マーケターはこれにより、煩雑なオペレーションから解放され、戦略や顧客理解といった本質的な業務に集中できるようになります。顧客の期待が高まり続ける今、エージェンティックAIは、成果と効率の両立を可能にする有力な選択肢といえるでしょう。
 
アンダーワークスおよびClickrでは、こうした最新の潮流を現場でとらえながら、企業のマーケティング変革をご支援しています。AIとともに進化していくB2Bマーケティングの未来に、ぜひご注目ください。

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