インバウンド需要、と言えば中国、中華人民共和国からの訪日中国人による日本国内での消費をイメージされる方が多いと思います。
本記事では、東南アジア諸国、ASEAN加盟諸国とも言えますが、シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナム・インドネシア・フィリピン・ブルネイ・ミャンマー・カンボジア・ラオスの10カ国で構成される地域から訪日外国人によるインバウンド需要について調べてみたいと思います。
東南アジアの経済規模:名目GDPは日本に迫る
東南アジア諸国10カ国の人口を合計は約8億人。これは世界人口の約9.8%を占める規模です。最も人口が多い国はインドネシアで、約2.85億人、世界第4位です。フィリピン(約1.14億人)、ベトナム(約1億人)、タイ(約7,000万人)と続きます。
人口増加率では、人口の少ないシンガポールが約3%とトップです。シンガポールは日本以上に深刻な少子化大国で合計特殊出生率が1を下回る国ですが、移民の受け入れによって人口が増えているそうです。
経済規模ではどうでしょうか。これら10カ国の中でダントツに大きな市場規模を誇るのがインドネシアです。名目GDPはASEANトップの約1兆4,000億ドル(約215兆円、1ドル150円換算)であり、2位のシンガポール(約6,300億ドル、同、約95兆円)の2倍以上の規模となっています。
3位タイ約5,600億ドル(同、約84兆円)、4位ベトナム約5,300億ドル(同、約80兆円)、5位フィリピン約4,900億ドル(同、約74兆円)、6位マレーシア約4,400億ドル(同、約66兆円)と2位から6位までの各国はいずれも50兆円を超える規模で伸びています。
そして、東南アジア各国の名目GDPを合計すると2025年には4兆ドル(同、600兆円)になるとの予測がでています。インドネシア、ベトナム、フィリピンなどは年率5%を超える経済成長を続けており、ASEAN全体の経済成長率は4%後半との予測も多く、日本の名目GDP(約4.3兆ドル、約640兆円)をもうすぐ追い抜くと予測されています。
(国際通貨基金および世界銀行データを参考)
訪日外国人観光客の約12%が東南アジアから
では、そんなASEAN諸国からの訪日外国人観光客はどのくらいいるのでしょうか。
JNTO、日本政府観光局のデータによれば、2024年の訪日外国人観光客は約3,687万人と過去最高を記録しました。(2019年を約500万人、15%以上上回る)
国別訪問者では、1位韓国、2位中国、3位台湾、4位アメリカ合衆国、5位香港と東アジアの国が上位を占めており、東アジアからの訪日外国人だけで全体の2/3を占めています。(年間2,400万人以上)
東南アジア各国はどうでしょうか。6位のタイが年間約115万人、8位にフィリピン(年間約82万人)、9位シンガポール(年間約70万人)、10位ベトナム(年間約62万人)、12位インドネシア(年間約52万人)、13位マレーシア(年間約50万人)となっており、東南アジア諸国からの訪日観光客は合計で少なくとも715万人、全体の約12%を占めます。これは東アジア地域についで大きな規模です。
東南アジアからの訪日外国人観光客は約9,000億円市場
訪日時の消費額で見てみるとどうでしょうか。
最も消費額が多いのは、中国からの訪日客で1.7兆円を超えます。また、韓国・台湾・アメリカ合衆国なども訪問客数・一人あたりの消費額どちらも大きく、1兆円前後となっています。
比較して東南アジア諸国は、一人あたりの消費額はそこまで大きくなく、最も大きいタイからの訪日外国人観光客の消費額が約2,300億円とトップになっています。
しかし、タイ・シンガポール・フィリピン・ベトナム・インドネシア・マレーシアの6カ国を合計すると、年間約9,000億円程度になり、全体の約11%を占めます。したがって、訪日外国人観光客のインバウンド消費を地域別に考えると、東アジアには及ばないものの、北米からの訪日外国人観光客の消費総額(アメリカ合衆国・カナダ、合計で約1.1兆円)と僅差で3位の地域となり、決して見過ごすことのできない規模となっています。
高い経済成長率を背景に大きく増加が見込める東南アジアからのインバウンド需要
中国の経済成長によって、今後も東アジアからの訪日外国人観光客による消費=インバウンド需要はとても重要であり続けると思います。
一方で、東南アジア諸国全体の経済成長率は年率5%に迫る勢いで成長しています。特にフィリピンやベトナムの経済成長率は5%以上とも予測されています。これらの予測データに鑑みると、東南アジアからの観光客の消費総額が1兆円を超えるのは時間の問題でしょう。早晩、北米の消費総額を抜き、地域では東アジアに次ぐ地位になることも近いと考えられます。
経済成長率の高さや人口の多さから、東南アジア各国への進出、商圏拡大を検討する企業は多いと思います。今後は、東南アジア諸国からの訪日外国人観光客のインバウンド需要に関しても積極的に検討をしていくこで、自社の売上拡大を狙う企業が増えていくのではないでしょうか。