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はじめに:AI議事録は「改善」フェーズへ

前回の記事でご紹介した、「tl;dv」と「Gemini」を活用したAI議事録の全社導入から数ヶ月経過し、初期導入期間を終え、現在は本格的な「改善フェーズ」へと移行しています。そのため、現場でのリアルな使用感を把握し課題を洗い出すため、詳細なアンケートを実施し、その結果を基にAI議事録のプロンプト改善を進めました。

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本記事では、アンケートで浮き彫りになった現場のリアルな声、直面した課題、そしてそれらを乗り越えるための具体的な改善策、さらにAI議事録の今後の展望について解説します。

導入成果:全体的に工数短縮の声が多数

全社展開後の成果を総括すると、初期目標であった「品質の高い初稿レベルの達成」は概ね実現できました。特に議事録作成・要約にかかる一次アウトプット作成の手間は大幅に削減され、工数削減効果は着実に表れている結果となりました。

全体として見れば、議事録作成・要約にかかる工数は削減傾向にあります。特に会議直後の一次アウトプット作成の手間が大幅に減ったことが、この成果を牽引しています。

ただし、社内アンケートの結果、ごく一部の声ではありますが、役割や作業者の属性により、メリットの実感に差があるとの声も上がりました。

使用者の声

・作業者(議事録作成担当): 多くの作業者が6〜7割の工数短縮を実感。ただし、一部ケースにおいて、Geminiに出力後の調整時間が、自身で作ったメモを議事録として最終化するよりも手間を感じているとの声も上がりました。

・レビュアー(内容確認者): 手直しや確認を行うメンバーの工数はそこまで減っていないとの声も上がっており、どうしてもAIの生成した「初稿」を「納品レベル」に仕上げる最後の工程に、人間の手が必要な状態です。

・ツールへの信頼性: tl;dvとGeminiの連携については非常に良い使用感を維持しており、ツール起因の大きな課題はありません。

「使わない方が早い」「レビュー工数は変わらない」という課題感については、今後、品質レベルをさらに向上させる上での重要な課題と捉えました。

議事録の品質を一段上げるプロンプト改善の実践

私たちが直面した課題の多くは、「AIへの指示の出し方(プロンプト)」に起因していました。AIが期待通りの成果を出すためには、求める内容を明確に伝えることが不可欠です。

現場からのフィードバックに基づき、私たちはプロンプトの「精度向上」と「ルール統一」を目的とした具体的な改善に着手しました。

【プロンプト改善で取り組んだ主な課題と解決策】

1. 構造の曖昧さの解消

・課題: 「決定事項」と「今後のアクション」の切り分けが曖昧になりがちでした。
・解決策: 「決定事項」=会議で合意した事項・役割分担、「今後のアクション」=直近1-2週間で対応すべきタスク、と明確に定義を追加し、切り分けを指示しました。

2. 出力内容の冗長性の削減

・課題: 一方的な共有事項や説明が長々と記載されてしまうことがありました。
・解決策: 今回の会議で「新たに議論された内容のみ」を記載するよう、プロンプトで記載スコープを明確化しました。また、要点は「結論ファースト」「1文で簡潔に」と、具体的な要約スタイルを指示するよう追記しました。

3. ルールの統一

・課題: 文体や表現、出力フォーマット(出力結果にHTMLタグ(<br>、<mark>など))、日付表記の統一にばらつきが出ていた。
・解決策: 望ましい表現、フォーマットで出力できるよう具体的な指示を追加。さらに、プロジェクト固有の専門用語リストをプロンプトに設け、優先的に使用するよう指示する欄を追加しました。

これらの改善は、大規模言語モデル(LLM)の性能を最大限に引き出すためのプロンプトエンジニアリングの基本です。単に漠然とした指示を与えるのではなく、AIが目指すべき理想的なアウトプットの形式、構成、ルールをプロンプト内で構造的に明確化することで、出力の精度と安定性が劇的に向上します。AIとの協業においては、人間が意図を正確に伝え、AIの出力を具体的な「型」に落とし込む作業が不可欠であることが改めて確認できました。

AI議事録導入の先に見えた「会議の質向上」という副次効果

課題解決を進める中で、AI議事録導入の真価は、単なる効率化を超えた部分にあると確信しました。

AIが「ファシリテーションの鏡」になる

AIは、会議での「文字起こし」に依存して要約を生成します。このため、会議中のファシリテーションの質が、そのまま議事録の精度に直結します。

AI議事録の精度が高い会議: ファシリテーターが論点整理や結論、ネクストアクションを明確に確認しながら進行する会議。

AI議事録の精度が低い会議: 発言内容に曖昧さが多く、結論やネクストアクションが明確になっていない会議。

この結果から、AI議事録を導入したことで、「質の高い議事録を作るには、まず質の高い会議が必要」という認識が社内で浸透し始めています。これは、AIとの共存がもたらす重要な副産物でした。

また、こうしたAIが苦手とする、文字に起こされない部分のコミュニケーション(≠空気を読む)や、複雑な状況への創造性や適応能力を発揮することにこそ、人が介在する価値があるのではないでしょうか。

まとめ

現在のAI議事録は、一次アウトプットの工数を大幅に削減し、確実に「品質の高い初稿」を生み出しています。今後は、真の業務効率化、すなわち「高品質の維持と抜本的な効率化」の両立を目指し、「初稿レベル」から「次のレベル」への進化に引き続き取り組んでいきます。

また、AI議事録の導入をきっかけとして、会議の質が向上するように、私たちはAIとの「対話」から自ら学び、業務の質を上げていく文化を大切にしていきます。

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