(出典:「CONTENT MARKETING DAY 2025」トップページ)
「AIが情報を探し、整理し、行動する世界」が、すぐそこまで来ています。
CMD2025では、アンダーワークスの田島 学と田口 裕が登壇し、生成AIによるカオスマップ制作の裏側、そして“検索のない未来”における情報との関係を語りました。
マーケティングの根幹が変わる今、人とAIの協働が生む新しい価値を探ります。
「マーケティングテクノロジーカオスマップJAPAN (ウェブ版)」が描く、情報の再構築

(出典:「マーケティングテクノロジーカオスマップ JAPAN (ウェブ版)」)
「情報は溢れているのに、全体像が見えにくい。」
そんな課題意識のもとで始まったのが、アンダーワークスが毎年制作する「マーケティングテクノロジーカオスマップJAPAN」です。
2025-26年版では、これまでにない試みとして、制作工程の大部分に生成AIを導入しました。田島は登壇で、その実験的プロジェクトの概要を紹介しました。
従来は3〜5名のチームが3〜6ヶ月をかけ、1,000時間以上を要していたカオスマップ制作を、今回はほぼ1人で約50時間という短期間で完了させ、調査、分類、整理といった工程の約9割をAIが自動化することで、生産性を10〜20倍、慣れれば100倍に高められる可能性を示しました。
制作では、複数のAIツールが組み合わされました。企画段階では「ChatGPT」、文章生成では「Gemini」、分類やHTML化には中国製のAI「Manus」を活用。
ManusはHTMLやCSSのコーディング、さらにはウェブページの制作まで担い、従来のPDF制作よりも効率的な出力を可能にしました。また、ツールの統廃合やカテゴリ分類の判断には、過去データを学習させたカスタムGPTが用いられました。
AIが主に得意とするのは、論理的な分類構造の設計です。人が行う場合に生じがちな「ムラ」を排除し、一貫した基準で情報を整理することで、より明快なマップ構造が実現されました。
一方で、ロゴの収集や最終プロセスでのチェックといった品質担保が求められる領域は、依然として人間が担う必要があることも明らかになりました。「AIにどこまで任せられるのか、そしてどこに人の判断が残るべきか」といった検証に対しても一定の示唆を得ることができました。
最後に田島は、エージェンティックAIの潮流についても言及しました。
AIの「自律性」が高まることで、今後はAIが業務プロセスの変革まで担い、「業務そのものがAIに置き換わっていく時代」が到来すること、さらに顧客購買行動においても、「顧客がAI化する未来」が予測されているとの見通しを示しました。
2030年、検索のない世界へ ──AIブラウザが変える情報との関係
田口のライブ配信では、生成AIが変えるコンテンツ体験をテーマに、2025年6月に公開された「Genspark AI Browser」、10月に一般向け無償版が公開されたPerplexity AIの「Comet」やOpenAIのAIブラウザ「Atlas」を起点に、「人が“検索する”世界から、“AIと対話する”世界へ」という根本的な変化が語られました。
従来のウェブブラウザは、ユーザーが自ら検索キーワードを打ち込み、検索結果に表示された複数のサイトを自らクリックして訪問し、情報を閲覧する「情報探索型」でした。一方で、AtlasのようなAIブラウザは、ユーザーが自然言語で質問を投げかけると、AIが情報を探索・閲覧・要約・比較し、最適化された回答を瞬時に提示します。
「これまでの“探す検索”は、“聞く検索”に変わっていく。 AIが司書のように、私たちの曖昧な質問を理解して、最適な答えを返す時代です。」
田口は、次の進化としてAIが自律的に依頼された作業を実行するAIエージェントの将来像にも触れました。現在の生成AIとのチャットのように依頼した内容に基づいて単に情報を要約するだけでなく、「6畳用のヒーターを5万円以内で買って」といった指示に対してAIエージェントが自律的に行動して購買まで担う未来もすぐそこまで来ていると言います。
また、AIブラウザやAIエージェントといった技術の普及が急激に進む現状を踏まえると、今後はウェブサイトへのアクセス構造が大きく変わることも指摘しました。AIがウェブを巡回し、情報を収集・要約することで、「人間の訪問者よりAIの訪問者が多くなる」という現象がすでに始まっています。
Adobe社の調査では、2025年5月時点で米国の小売業界のAIトラフィックが前年比4700%増になっていたという報告もあり、2028年にはAIアクセスが人間のオーガニックトラフィックを超えると予測されるほどです。
このようなウェブサイトへの流入環境の変化により、従来の「認知→関心→比較→購買」というファネル型モデルを代替する、AIが中間層(情報探索・比較)を代行する新しい構造、「PRCAモデル」が登場していることも紹介しました。

(出典: PLAN-B「生成AI時代の新たな購買行動モデル「PRCA(プルカ)」を公開 同モデルを基盤にしたマーケティング支援をスタート」 (2025.07.07))
「PRCAモデル」では、企業のウェブサイトを最初に「AIが読み」、その要約やまとめを「人間が評価」して最後のアクションに至るという特徴があり、ウェブサイトの最初のビジターとなるAIが読みやすい構造化データ(GEO/LLMO対応)化や情報を辿りやすい行動導線の設計が不可欠になります。
人とAIの共創によるマーケティングの再構築
田島と田口、両者の登壇には共通して「AIと人間の協働」というキーワードがありました。カオスマップではAIが情報整理を担い、マーケターが構造を設計する。AIブラウザの世界では、AIが検索・分析を代行し、人間が戦略と判断を担う。どちらも「AIが支える“人間の創造性”の強化」という思想に根ざしています。
おわりに:CMD2025が示した未来への指針
生成AI、AIエージェント、そしてAIブラウザの台頭により、マーケティングのあり方は今後数年で劇的に変化する見通しです。その中心には、「AIをどう使うか」ではなく「AIとどう共創するか」という視点が不可欠です。
アンダーワークスは、こうした変化の中で、今後も業界の未来を見据えた知見を発信していきます。