EloquaやMarketoなどマーケティングオートメーションと呼ばれるツールの多くはクラウドで提供されている。また、多くは、WebサイトにJavaScriptのタグを設置し、ユーザーのWeb閲覧履歴を蓄積・顧客データとの紐付けを行なう仕組みとなっている。
つまり、Webページ設置されたJavaScriptをGhosteryのようなツールで調べれば、どのようなマーケティングオートメーションツールを利用しているのかが分かる。(もちろん精度は完璧ではないし、取得できないタグもあるだろう。)
今回は試しに、SNL Financial Bank ranking が発表している全米トップ30銀行のWebサイト上からどのようなマーケティングオートメーションツールを利用しているかを調査し、こうしたクラウド型 /JavaScriptタグ設置型マーケティングオートメーションツールの金融機関における普及率を把握してみた。
全米トップ30銀行のマーケティングオートメーション普及率は約4割
マーケティングオートメーションというとBtoB、それも電機・機械・IT/通信のような業態での取り組み事例が多く、あまり銀行のようなところで実践されているイメージがないかもしれない。
だが意外なことに調査結果はトップ30の金融機関のうち、13金融機関以上がEloquaやMarketoといったマーケティングオートメーションツールをなんらかの形で導入しており、導入率は4割を超えている。
トップ15金融機関に限ればその割合は半分を超えている。 金融機関によって利用方法はそれぞれ異なるだろうが、中小企業向けや大手企業向けに法人サービスを行なっている金融機関におけるデマンドジェネレーションには、マーケティングオートメーションツールの活用余地が高いのだろう。
また、BtoCであっても住宅ローンや退職金運用などのサービスであれば、BtoBと同様に「長い検討期間」「育成の必要性」「最後はリアル接点でのクロージング」とBtoBマーケティングに近いマーケティングが行なわれていることもその理由かもしれない。
1.JPMorgan Chase (NY) –
2.Bank of America (NC) –
3.Citigroup (NY) –
4.Wells Fargo (CA) Eloqua
5.US Bancorp (MN) –
6.Bank of New York Melon (NY) Marketo
7.PNC Financial Services (PA) Eloqua
8.Capital One (VA) –
9.HSBC North America (NY) Eloqua
10.State Street (MA) Pardot
11.TD Bank (NJ) –
12.BB&T (NC) Silverpop
13.SunTrust Banks (GA) Eloqua
14.American Express (NY) Marketo
15.Ally Financial (MI) –
16.Charles Schwab (CA) Marketo
17.M&T Bank (NY) Experian
18.Fifth Third Bank (OH) Eloqua
19.Citizens Financial (RI) –
20.USAA (TX) –
21.BMO (IL) –
22.Regions Financial (AL) –
23.Santander (MA) Unica(IBM)
24.Northern Trust (IL) –
25.MUFG Americas (NY) –
26.Key (OH) –
27.Banc West (CA) –
28.Discover Financial (IL) –
29.BBVA Compass (TX) –
30.Comerica (TX) Eloqua
※ 調査方法は、Ghosteryを使ったタグの検出とツールベンダーの事例を組み合わせて集計
※ ページ全体でなく部分的なページに設置されている場合も含む
※ Unica(IBM Campaign)に関してはクラウド型ではないと思われるがタグあったため集計に加えた
※ 金融機関のランキングは SNL Financial Bank rankingを利用
取り組みの兆しが見えない国内金融機関のマーケティングオートメーション
国内の金融機関に目を移すと、恐らく現時点においてクラウド型のマーケティングオートメーションツールの導入を行なった銀行は存在していないのではないかと思われる。(2015年7月現在)
何社かの取り組みに関わった経験からすると、マーケティングオートメーションのようなデータを活用したマーケティング施策の必要性を感じつつも、顧客データをクラウドで保有するということに対するリスクヘッジの方が話題の中心となってしまっている。
一方で、SAS Marketing Automationのようなオンプレミス型のマーケティングオートメーションツールの導入は順調に進んでいるようだ。ただし、Webサイトの訪問履歴やEメールの配信・開封履歴などとマーケティングオートメーションツールとの連携にはこれからという企業が多いと感じる。
(参考)東京スター銀行、マーケティングオートメーションで目指す「リレー型営業体制」
金融機関、特に銀行は、ネットバンク、Eメール、電話、店舗、ATMなど様々なチャネルを持つ業態だ。そうしたチャネル間の連携を進めるためにもデジタル接点のマーケティング強化の一端を担うであろうマーケティングオートメーションへの取り組みを真剣に考え始めても良い時期にきているのではないだろうか。