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  • 国内CDP市場規模は世界の1%未満、市場の可能性とベンダーの動き

 
データ統合・活用のニーズにより、CDP(Customer Data Platform/顧客データプラットフォーム)への注目度が年々高まっています。本記事では、今後のCDP市場の可能性について、国内外の市場規模予測やベンダーの大型調達やM&Aなどのニュースを通じて解説します。
(書き手:宿木 雪樹、編集:DMJ編集部)

国内外の顧客データプラットフォーム(CDP)市場規模

CDP市場の成長はめざましく、世界の市場規模は2020年の推計24億ドルから2025年には103億ドルに達すると言われています。国内CDP市場の21年度売上額も前年度比18.4%増加の103億と予想され、堅調に増加しています。
一方で、2025年の国内売上予測値である198億円は、世界市場の同年予測値の約0.8%にあたり、1%にも及ばないことがわかります(2022年1月時点)。企業による個客データ統合・活用のニーズは高くあるものの、グローバルにおけるCDP市場のうち日本が占める割合はまだまだ少ないからこそ、今後国内市場が一層伸びていく可能性は高いのではないでしょうか。

なお、2020~2025年の国内CDP市場のCAGR(年平均成長率)は17.9%と予測値されており、単なるトレンドと一蹴できない存在感で拡大し続けています。
このCAGR17.9%という数値をイメージしてもらうために、他領域のCAGRと比較してみましょう。例えば、多くの業界に通ずるDXの要と言われる“第3のプラットフォーム”市場のCAGRは、同2020~2025年5.5%と予測されています。また、過去の例ですが、2018~2020年の国内ウェアラブル市場のCAGRも同様の5.5%です。いずれもビジネストレンドとしては各メディアを賑わせていますが、それでも市場の年平均成長率は5%程度だったと言えます。

CDP市場のCAGR17.9%と近しい数値として挙げられるのは、世界のインターネット広告市場です。世界のインターネット広告市場規模は、2020~2027年でCAGR17.2%と予測されています。つまり、年平均成長率についてのみ言及するならば、CDP市場とインターネット広告市場は近しい期待値で拡張・浸透していると言えるでしょう。

ベンダーの大型調達やM&A事例

CDPツールを提供するベンダーにおいても、直近数年で大きな動きが相次ぎました。全体の傾向としては、“包括”が挙げられます。CDPとしての機能に特化したソリューションを展開する企業が、より包括的なマーケティングツールやデジタル体験プラットフォームを開発する企業に買収され、リッチなソリューションへと昇華するケースが増えているようです。また、老舗のCDP企業は勢いを増し、大型の資金調達に成功しています。そうしたCDPに関連する動向が見える最新ニュースをいくつか紹介します。
 

トレジャーデータの資金調達と新ツール

トレジャーデータ社は2011年に設立され、設立当初から「Treasure Data CDP」を提供してきたCDPのリーディングカンパニーです。国内市場シェア1位というだけでなく、大企業ブランドを顧客にもつことで確固たる地位を確立しています。

同社は、2021年11月2億3400万ドルの資金調達に成功しました。 CDP領域単独の資金調達ラウンドとしては最大という今回の資金調達は、CDPツールのさらなる進化とグローバルにおける成長加速を目指したものです。ここで注目したいのは、同年9月にリリースされた「CDP for Sales」と「CDP for Service」の提供についてです。

「CDP for Sales」は法人向け営業を高度化するデータプラットフォームで、部門を横断した顧客データの統一管理と分析を実現します。昨今注目されるABMの概念にも紐付いており、今後の進化が期待されます。

一方、「CDP for Service」はコールセンターを起点とした顧客接点を包括管理するためのプラットフォームです。データ分析によるLTV(顧客生涯価値)予測やネクストアクションの提案といった機能を充実させ、コールセンターによる顧客価値向上を目指します。

これらはいずれもマーケティング領域を越え、セールスやユーザーコミュニケーションから取得し得るデータを活用し、より包括的な顧客分析を実現するトレジャーデータ社の意図を汲み取ることができるプロダクトです。トレジャーデータ社は『Beyond Marketing』をビジョンに掲げており、企業の深い顧客理解をデジタルとリアル双方から考えていく姿勢を示しています。
 

SitecoreのCDP領域進出

Sitecore社は2001年デンマークで設立されたCMSのリードカンパニーであり、日本国内でも広く浸透しています。主力のCMSサービス「Sitecore Experience Manager」はサイトのコンテンツ管理だけでなく、デジタルマーケティングに役立つデータ管理機能も充実させています。

2021年3月、Sitecore社はCDPを提供するBoxever社を買収。大規模な製品革新計画の中で特にCDP領域への進出意欲を見せました。さらに同年11月には「Sitecore CDP」を発表し、Sitecoreの既存ソリューション群と併せた包括的アプローチを実現しています。こうしたデジタル体験プラットフォームの提供企業からリリースされるCDPも、今後は増えていくかもしれません。
 

Lyticsのデータ活用に向けた新機能

米国Lyticsが提供するマーケティング施策連携重視のCDP「Lytics」は、2021年12月、クラウドインフラからデータを直接連携できる新機能「Cloud Connect」を発表しました。マーケティング担当者は、Google AdsやAmazon Adsなど、多くのプラットフォームでの広告セグメントを有効化することができるようにもなります。

Lyticsのように、個客データの管理だけではなく、マーケティングアプローチまでサポートするCDP機能が一層強化されていくことで、企業によるデータ活用の促進が一層見込まれるのではないでしょうか。
 
>>参考「【マーテク比較シリーズ:CDP】Customer Data Platformとは?8つの製品を比べてCDPを理解する。」

CDPニーズは今後も増加し、技術進化が期待できる

グローバルのCDP市場は急速な成長を遂げており、その成長速度は未だ衰えることなく続いています。国内市場が占める割合はまだ小さいものの、だからこそ今後の成長に可能性があるといえるでしょう。CDP関連製品を提供する企業は、資金調達や買収などの活発な動きを見せており、今後はより強力な機能を備えたCDPツールの開発が一層進むことが予想されます。

その市場成長の要因として挙げられるのは、デジタルデータに関する法規制のアップデートや、コロナ禍におけるデジタルマーケティングの興隆です。これらは、いずれも自社のデータをいかに集め、活用するかという課題に収束します。

CDPはこれからの時代のセールス、マーケティング、カスタマーサクセスといったあらゆる業務をデータで結びつけ、顧客とOne to oneのコミュニケーションをとるために必要不可欠なツールであり、現在のインターネット広告やSNSマーケティング同様、無視できない存在になっていくでしょう。アフターコロナでは、自社の部署や担当にこだわることなく、顧客データを軸とした柔軟な対応と戦略を再考すべき時代なのかもしれません。

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