ChatGPTやGemini、Claudeなど、生成AIの名前を聞いたことがある、実際に使っている、という方が日増しに増えています。そうした中、いわゆる汎用の生成AIを単体で使うだけではなく、複数のAIを組み合わせ、目的に応じて自律的に動く、すなわち「エージェント型AI(Agentic AI)」という考え方が登場し始めています。そんなエージェント型AIの分野でいま注目されているのが「Genspark(ジェンスパーク)」というプラットフォームです。
 
本記事では、Gensparkのユニークな機能や、創業の背景、そして業務活用における可能性についてご紹介してみます。
 

Gensparkのトップページ

検索体験の変革をキーワードに2023年に設立されたスタートアップ

Gensparkは、カリフォルニア州パロアルトを拠点とするスタートアップ、MainFunc Inc.によって開発・運営されている検索AIプロジェクトです。
 
創業者のエリック・ジン氏とカイホア・ジュウ氏は、中国BaiduやGoogleでAI開発に携わった経験を持ち、とくにジン氏はBaiduの音声アシスタント「小度(Xiaodu)」の開発を率いたことで有名です。Gensparkのビジョンは、従来のWeb検索が抱える広告やスパム、バイアスの問題を根本から見直し、AIエージェントを活用してリアルタイムに信頼性の高い情報ページ(Sparkpages)を生成することで、検索体験の変革を実現することだと言われています。
 

MainFunc社のWebページ

新しいWebのカタチ、Sparkpagesと情報の再構築

Gensparkを一躍有名にしたものが「Sparkpages」という独自のコンテンツ生成形式です。これは、ユーザーの質問に対して、リンクの一覧ではなく、AIが調査・分析・編集を行った結果を「答えページ」として提示するというものです。
 
Google検索で「Genspark 会社概要」と検索してみてください。Gensparkの運営会社であるMainFunc Inc. ではなく、Gensparkで生成されたページ(Sparkpages)が大量に表示されるはずです。これがまさに、ユーザーがGensparkを使って調べた内容が1つのページにまとまって生成されたページになっています。
 
このSparkpagesは、ファクトチェック済みの情報ソースに基づき、背景や要点、図表、FAQ、さらには画像や動画までも含めて、構造化された知識ページとしてリアルタイムに生成されます。Gensparkの中では、「一読ニュース」や「Genspark Travel」など、Sparkpagesを通じて最新ニュースや旅行情報をまとめてチェックできるポータル的な使い方も広がっており、まるで自分専用のAI新聞・AIガイドブックが毎回自動生成されるような感覚を味わえます。
 

Sparkpagesの中で旅行プランに特化したGenspark Travel

Mixture-of-Agentsで複数の生成AIを自在に使いこなせる

Gensparkのもう一つの特徴は、「Mixture-of-Agents(MoA)」によるマルチAI連携生成です。ユーザーが指示を出すと、タスク内容に応じて以下のようなモデルが裏側で自動的に使い分けられます。
 
執筆時点(2025/6/18)においては、月額19.99ドルの有料プランではあれば、OpenAIのo3、AnthropicのClaude 3.7 Sonnet、GoogleのGemini 2.5 Pro、DeepSeek R1など、多くの最先端AIモデルが使い放題になっています。ユーザーは用途に応じて各AIの使い分けをしたり、有料課金を検討したりする必要がなく、「実現したいこと」をGensparkに入力するだけで結果を得ることができるプラットフォームになっています。
 

様々な生成AIを自動選定、自分で選択することもできる

機能特化したエージェント型AIも続々リリース

Gensparkの魅力は、革新的なエージェント型のアプリケーションをGenspark内でどんどんリリースしていることにもあります。以下は、Gensparkが現時点で提供しているエージェント機能の一例です。
 

様々なタスクに特化したエージェント機能をGenspark内で提供

 
スーパーエージェント:目的を与えると、AIが自律的にサブタスクを分解・遂行。
通話代行AI:レストランの予約や問い合わせなど、ユーザーに代わって電話をかけて会話を進めてくれる機能。日本国内の通話にも対応。
AIスライド:テキスト(プロンプト)やファイルから、内容を解析し、スライド資料に自動変換、PDFやPowerpointo形式でダウンロード可能に。
AIシート:リサーチ結果やデータを自動で構造化し、スプレッドシート化、グラフ化まで対応。
AIドライブ:調査で取得した情報を自動分類・保存できるAIストレージ。
Gensparkブラウザ:Web巡回をAIに任せられる専用ブラウザ。閲覧中のページを要約したり、ダウンロードを代行。(リリース直後はアクションまで代行していたが、現在は停止中)
MCPツール:Google Drive、Notionなど外部サービスと双方向連携。コミュニティで作成されたMCPサーバーはすでに600以上存在。
 

他のツールとの連携を可能にするMCPツール

まとめ:Gensparkは他の汎用生成AIとは異なるエージェント思考のAIプラットフォーム

現在ユーザー数の多い生成AI、ChatGPTやGemini、Claude等は「1つの大規模言語モデル(LLM)」をチャットで操作するという構造です。また、これらの生成AIは、マルチモーダル化(テキストだけでなく、画像や動画なども生成)してきていつつも、まだまだエージェント型(コンテンツを生成するだけでなく、タスクを完了まで自律的に行うAI)の機能は発展途上といえるかもしれません。
 
一方、Gensparkは、「Mixture-of-AI(マルチLLM、複数の生成AIを使い分ける)」を標榜しながら、Sparkpagesによる検索体験の変革、スライドや通話などのタスク完了までを担うアプリケーションの提供などをどんどん実現しており、現時点においてエージェント型AIプラットフォームの最右翼と言って良いかもしれません。
 
法人で利用するには、ユーザー管理機能がない、などまだまだハードルは高いかもしれませんが、AIによる業務代替・一歩進んだAI活用を考える際には有力な選択肢になると思います。

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