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  • 営業報告書を10秒で作成する – Salesforce × Zapier × Google Drive x…

 
週次の営業会議の報告書、皆様のチームではどのように作成されていますか。毎週Salesforce等CRMのダッシュボードを確認し、数値を転記してグラフを作成し、報告資料としてまとめる――。こうした定型的な業務プロセスは生成AIでどこまで自動化できるでしょうか。
 
今回は、Salesforce、Zapier、Google DriveそしてGenSpark(AIスライド)という3つのツールを連携させ、営業レポートを「完全自動」で作成する実験を行ってみました。GensparkのAIスライドを自動実行させる機能が現時点では存在しないため、完全自動には至りませんでしたが、実質手作業10秒で週次受注状況報告スライドを生成する仕組みを構築することができました。
 

検証の背景と狙い

今回の実験は、クラウドSaaS(特にSalesforce)と自動化ツール(Zapier)のポテンシャルを最大限に活用したいという従来からのアンダーワークスの強い関心に加え、GenSparkに代表されるスライド生成AIの急速な進化を背景に、「単純なレポーティング作業はAIに代替できるのではないか」という想いが出発点です。
 
もちろんAIが発展する中で、多くの人が「AIエージェントによって多くの業務が自動化されるだろう」と主張しています。しかし、コンセプトレベルの話が多いのも現実です。そこで、現時点においてどこまで自動化できるのかを実際にやってみようというのが根底にあります。
 
また、単なる効率化だけではないメリットもあるのではないかと思いました。人間が解釈する数値ではなく、実際にCRM(Salesforce)内に存在するデータだけで資料を作る、考察するのはAIだけ、という資料は、恣意性が排除され、より客観的な視点の資料になるのではと思いました。
 
実際にどのように仕組み化したのかを書いてみます。

営業報告書のAI自動化フロー実験の実際

今回構築した自動化のプロセスは、以下の通りです。
 
1.Zapierを使い、Salesforceに定期(毎週月曜日の早朝)アクセスし、今年度の商談データと前年度の商談データを抽出。(データの指定が複雑になるため、一旦昨年度までの全商談・全データ(項目)を取得)
 
2.抽出したデータをZapierのCode by Zapier機能のJavascriptでJSON形式に変換(構造は「商談名」「クライアント名」「金額」など基本的な項目に限定)。JavaScriptの生成はChatGPTを利用して作成しました。
 
3.生成したJSONファイルをGoogle Driveの指定フォルダに保存。ファイル名には、取得日のデータも付与し、いつ時点のデータかがわかるようにしました。
 
4.上記1〜3の一連の処理を、ZapierのSchedule by Zapierで毎週特定の曜日・時間に自動実行するよう設定。
 
5.GenSparkのAIスライド機能から、Google Drive上のJSONファイルを直接読み込み、設定したプロンプトに基づいてスライドを1枚自動生成。Gensparkではあらかじめ、GoogleDrive内のファイルへのアクセスができるような設定をしておきました。
 

 
Zapierでは、現時点(2025年6月)においてGensparkにデータを送ったり、トリガーを引いたりはできません。よって、完全自動化はできないのですが、「GoogleDrive内のファイルを指定する」「あらかじめ作っておいたプロンプトをコピー&ペーストする」さえ手作業で行えば(実質10秒)、あとはGensparkが報告資料を作成してくれます。

検証結果と評価

画像は、実際にGensparkが生成した営業報告書です。(とはいえ、公開できない情報しか入っていないため、全体にモザイクをかけざるを得ません)
 

 
受注状況を昨対比や目標数字から見てどのような状態かを一行でメッセージングし、受注額や月次の推移、昨対比、テーマ別の割合、新規・既存の割合、受注単価の大きな商談の一覧などが掲載されています。
 
生成されたスライドは1枚ですが、主要なKPI(商談数、売上、前年対比など)が網羅されており、数値は全てSalesforceのデータソースに直結しているため、極めて正確でした。CSVやエクセルのファイルを添付するのではなく、JSON形式にしてGensparkにデータを提供したことで、より正確に受注状況をAIが理解できているのかもしれません。 Gensparkによるスライド生成プロセス自体には5〜10分程度を要しますが、完成までの間に監視や手作業は発生しないため、実質の作業時間は10秒程度です。このスピード感は、手作業での資料作成には戻れないほどのインパクトがあります。
 
グラフや数字だけであれば、いわゆるダッシュボードツールをそのまま投影するのと変わらない、と言えます。しかし、AIスライド生成では、数字から状況を分析し、それを定性的なコメントにするところまで担えます。
 
今回は、実験的にあまり多くのデータをGensparkに対して提供していないため、そこまで精度の高い示唆はだせませんでした。より多くのデータをJSON形式に入れることで、もっと精度の高い示唆だしをしてくれるのではないかと思います。

課題と考察

とはいえ、すべてのプロセスが順風満帆だったわけではありません。今回の検証を通じて、いくつかの課題も判明しました。
 
1.プロンプトの設計
GensparkのAIスライドへ意図を正確に伝えるためのプロンプト設計には、試行錯誤が不可欠でした。営業報告の構造(前年対比の見せ方、グラフ形式、色調など)を言語化して伝える必要があり、プロンプトにはJSONの各データ項目が何を意味するかの定義を含める必要がありました。

2.データ抽出項目の選定
Salesforceの膨大な項目の中から「どのデータを抽出するか」という上流工程の設計も、重要な論点です。今回は実験的に主要項目に絞りましたが、実業務で求められる情報の粒度に合わせて、このデータ選定はより複雑になります。
 
3.生成AIの挙動特性への理解
Gensparkのスライド生成も万能ではなく、グラフが意図と異なる形式で表示されたり、テキストと図が重なったりといった事象も発生します。これらはプロンプトの改善で対応可能ですが、AI特有の“癖”を理解し、それに合わせた指示を出すスキルが求められます。
 
4.会議体で使う資料生成の自動化
スライド生成のトリガーとGoogleSlideやPowerPointファイルへの取り込みはまだ機能がないため、手作業になっています。ZapierからGensparkAIスライドをトリガーできるようになり、GensparkAIスライドから会議に利用するGoogleSlideやPowerpointへの取り込みまで自動化されると、完全自動化が実現できます。(時間の問題のような気もします)

AI報告書は今後急速に普及する

上記の課題は存在するものの、週次で繰り返されるルーティン作業をAIに自動実行させるインパクトは計り知れないと思いました。
 
資料作成の時間はもちろんのこと、BIツールやダッシュボードツールにログインして、データを探し、コピーやダウンロードする手間、それらのデータを参照しながら資料にどう落とし込むかを考える時間・・・
 
こうした時間が実質ゼロになっていく未来を感じます。もちろん課題も多くあるはずです。それは会議体そのものの変革でしょう。資料をまとめる段階でなんとなく結論が見えていた、根回しが終わっていた、予定調和的に会議が行われた・・こうした会議の意味がなくなり、AIが作った報告書を全員が初見であるにもかかわらず、打ち手を考えなければなりません。真の意味での生産性が問われることになると思います。
 
今回の検証はその第一歩ですが、今後もアンダーワークスでは、様々な業務への応用可能性を探求していく予定です。

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