アンダーワークスでは2017年から毎年、「マーケティングテクノロジーカオスマップ」を公開してきました。マーケティング領域における多様なツール・サービスを体系的に可視化するこの一枚のスライドは、日本国内におけるマーケティングテクノロジー選定・理解のための資料として、多くの企業・担当者にご活用いただいてきました。 (ありがとうございます)
マーケティングテクノロジーカオスマップ JAPAN 2017 10分野272製品・サービスをカオスマップに掲載
そして2025–26年版となる今年、私たちはこのカオスマップの制作において、大きな挑戦に踏み出そうとしています。それは、「カオスマップを生成AIで制作する」ことです。
カオスマップの原点:社内研修用Excelから始まった
カオスマップの最初の姿は、社外公開を前提としたデザイン資料ではありませんでした。2017年当時、社内研修用にマーケティングテクノロジーの全体像を共有する目的で、私自身がExcelに各種ツール名を手作業で書き出し、分類を行っていたのが始まりです。
ある時、もしかしたら「クライアント企業がツール選定する際に、この資料は役立つのではないか」と思い、体裁を整えて外部向けに公開したのが、初代カオスマップでした。
以降、毎年更新を重ねるなかで、マップの構成・視点・フォーマットは少しずつ変化しながらも、常に「複雑化するテクノロジー群の整理と構造化」というテーマのもとで制作されてきました。
これまでカオスマップ制作 ー社内プロジェクトとして半年かけてつくる一枚ー
カオスマップの制作は、社内でプロジェクトチームを組み、3〜5名のメンバーが3か月〜半年にわたって取り組む、地道な作業の積み重ねでした。
日々の業務と並行しながら、以下のようなプロセスを経て、一枚のマップに仕上げていきます。
・新たな分野・トレンド・ツールの統廃合など市場トレンドを考察
・カテゴリ分類の見直し・統廃合・新設を行う
・国内外の主要マーケティングツールを分類(長大なスプレッドシート)
・ロゴや公式リンクを収集・整理する
・見やすいレイアウトを設計する
その過程では、「このツールはCRMと呼ぶべきか?SFAとするべきか?」といった細かな判断を、何時間もかけて議論することも少なくありません。
つまり、カオスマップとはただの一覧表ではなく、現場感覚に根ざした知的作業と合意形成の成果でもありました。
「AIで一瞬で作れる」時代のカオスマップ制作
2025年、私たちはあえてこのプロセスを、生成AIによって再構築しようとしています。
今やChatGPTをはじめとした大規模言語モデル(LLM)がどんどん普及し、エージェント型AIは調査・分析だけでなくアプリケーション(コーディング)やスライド作成まで代替し始めています。人はどのような仕事をし、AIはどこまで業務を代替するのか・・・ まさに変革の始まりを我々は目の当たりにしています。
それは私達のようなプロフェッショナルサービスに従事する者にとって、仕事のあり方を変える大きな転換点でもあります。
もちろん、現時点において、高度な専門知識を持つプロフェッショナルが長い時間をかけて制作したものが容易にAIによって代替できるとも考えてはいません。むしろ、だからこそ、現時点でAIでどこまでできるのかをチャレンジしたいと考えています。
AIでどうやってカオスマップを作るのか
では、具体的な今年のカオスマップ制作の構想です。
まず、これまでPDFを最終アウトプットにしてきたカオスマップをWeb化したいと思います。これは以前よりあった構想なのですが、Webサイト(HTML)化することのコストや期間に鑑みて断念してきたことでもあります。生成AIであれば、PDFで作成するよりもHTMLで作成するほうが簡単にできそうです。Webサイトであれば、検索機能や並び替え機能、ツールページへのリンクなど、これまでPDFでは提供できなかった機能も追加できるのではないかと思います。
どのAIを利用するのか。これは、用途に応じて複数のAIを活用したいと思います。企画・構想などでは壁打ちとしてのChatGPT(反応速度が早いため)、文章作成・構成用にGemini、分類やツール情報収集、HTML化にはManusというような使い分けです。実際にやってみるとわかる特徴もあるので、フレキシブルに使い分ける想定です。
データは、スプレッドシートからJSON形式やマークダウン形式にしていきたいと考えています。また、ベクター化してPineconeなどのデータベースに蓄積し、生成AIの学習に利用できないかとも考えています。今年は難しいかもしれませんが将来的には、カオスマップに特化したAIとしてリリースできたらとも考えています。
実験としての価値、制作プロセスの再定義としての意義
今回の取り組みは、生成AIを活用して「カオスマップを速く作る」ことが目的ではありません。
むしろ、「これまでの知的作業がどこまでAIに委ねられ、どこに人の判断が残るべきか」を体験的に検証することにこそ、価値があると考えています。
・AIが構造化できること
・AIが見落とす可能性のあること
・AIが提示する新たな視点
・人間が担うべき意図や編集の部分
こうした違いを実感することで、今後のマーケティング業務全体におけるAI活用の在り方を考えるための、一つのケーススタディにもなるはずです。
アンダーワークスのマーケティングテクノロジーカオスマップは、9年間にわたり、技術の進化とともに更新を重ねてきました。2025-26年版は、生成AIで制作される初めてのマップとして、私たち自身にとっても大きな転機となる試みです。
公開に向けて、進行状況や取り組みの中間報告なども、順次このデジタルマーケティングジャーナルにて共有していきます。引き続き、注目いただければ幸いです。