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AIを業務に根づかせる、組織と信頼のつくり方──Workato WOW 2026 Day2参加レポート

AIを業務に根づかせる、組織と信頼のつくり方──Workato WOW 2026 Day2参加レポート

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R.Yonekura

AIでできることが増えるほど、企業には新たな問いが生まれます。どの仕事をAIに任せるのか。誰がその仕組みを作り、結果に責任を持つのか。そして、実際の業務で安心して使い続けるには、何が必要なのか。

Workato WOW 2026のDay2では、こうした問いに対する具体的な取り組みが紹介されました。

Day1のレポートで取り上げたのは、AIの判断を業務成果につなげる実行基盤と、その動きを統制する仕組みでした。Day2を通じて見えてきたのは、それらを活かすための組織のあり方です。現場のアイデアを形にし、任せる範囲を決め、実際の挙動を確かめながら改善する。その積み重ねによって、AIは日常の業務を担う存在になっていきます。

現場のアイデアを、組織で使える仕組みにする

AIを活用した業務改善の出発点は、現場にある具体的な課題です。

配車サービスを提供するLyft(リフト)は、アプリを通じて乗客とドライバーをつなぐ企業です。今回紹介されたのは、ドライバー向けレンタル車両の損傷確認に、画像を活用する取り組みでした。ハッカソンで生まれたアイデアを数週間で本番導入し、登壇時の説明では、200万ドル以上のコスト削減につながったとされています。

業務課題をよく知る人が、その解決策を短期間で形にできる。この事例は、AIと自動化によって、現場の知識を直接改善へつなげられることを示していました。

ただし、一つの成功を組織全体へ広げるには、別の課題があります。個人の手元で動く仕組みを、複数の人が安全に使える本番環境へ移すことです。

企業向けのLinuxなど、オープンソースソフトウェアを提供するRed Hat(レッドハット)も、この課題を抱えていました。同社には、アイデアと開発能力を持つ人材が数多くいます。しかし、個々の社員が作ったものを全社で使うには、データへのアクセス、実行環境、セキュリティ、コンプライアンスなどの条件を満たす必要があります。

同社が紹介した「Business as Code」は、業務を理解する人が、自ら課題解決の仕組みづくりに参加する方向性です。Workatoは、そのアイデアを組織の基準に沿って本番へ届けるための基盤として位置づけられていました。

登壇者によると、4人のエンジニアがWorkatoのプラットフォームを運用し、社内では約300人のビルダーが活動しています。また、紹介された取り組みでは、本番導入までの期間が約8週間から1週間へ短縮したと説明されました。

ここで変化しているのは、開発を担う専門家の役割です。専門家が個々の依頼をすべて実装する体制から、多くの人が構築できる環境を整え、品質やセキュリティを支える体制へと広がっています。

Workatoが紹介したAI Factoryも、この変化を支える枠組みでした。プラットフォームに加え、業務を理解して開発を進めるチーム、戦略や成果測定を支援するアドバイザー、サポート、ガバナンスの方法論を組み合わせます。AIを継続的に業務へ展開するためには、技術と実行体制を一緒に整える必要があるという考え方です。

会場に並んだ顧客事例のパネル。導入企業のCIOの顔写真とともに、自動化の成果が紹介されていた
会場に並んだ顧客事例のパネル。導入企業のCIOの顔写真とともに、自動化の成果が紹介されていた

現場に開発を広げるために、共通のルールを整える

構築に参加する人が増えれば、扱うデータや接続先、作られるエージェントも増えていきます。そのとき、現場のスピードを支えるのが、共通のガバナンスです。

企業データのバックアップ、復旧、セキュリティを支援するCohesity(コヒシティ)の取り組みは、この関係をよく示していました。

同社では、専門チームが業務部門からの依頼に対応していましたが、需要の拡大によって、そのチーム自体がボトルネックになりました。そこで、再利用可能なワークフローやMCPを整備し、部門が自分たちで構築できる環境へ移行しました。

MCPは、AIと外部のデータやツールを接続するための共通の仕組みです。同社は、こうした接続を共通の管理経路に集約するとともに、データの機密性に応じて作業環境を分け、各部門へ開放したと説明しました。

この事例からは、現場に任せることと、中央で管理することを組み合わせる重要性が分かります。利用できるデータや操作、守るべきルールが明確であれば、各部門はその範囲で改善を進められます。

AIエージェントが複数のシステムを操作する場合、この統制は処理の末端まで届く必要があります。最初に利用者を認証しても、途中から強い権限を持つ共有アカウントで処理すれば、本人には許されていない操作まで実行できてしまう可能性があります。

今回紹介されたAI Gatewayは、モデルやMCPなどへのアクセスに共通のポリシーを適用する仕組みとして、AI Registryは、エージェントや接続先を把握し、発見・再利用するための資産台帳として説明されました。

どのAIクライアントを使っていても、誰が、何の権限で、どの業務を実行しているかを追えること。必要に応じて操作を制限し、人の確認を組み込めること。こうした実行時の統制が、AIを組織全体へ広げる土台になります。

AIに任せる仕事を、人間の責任から考える

安全な実行基盤が整っても、どこまでAIに任せるかは、企業自身が判断する必要があります。

この問いに、人間とAIの関係から視点を与えたのが、AI研究者・起業家・投資家のRana el Kaliouby(ラナ・エル・カリウビ)氏です。同氏は、人の表情などから感情や認知状態を捉える「感情AI」に取り組んできた、MIT発の企業Affectiva(アフェクティバ)の共同創業者です。CEOとして事業を率いた後、人間中心のAIに投資するBlue Tulip Venturesを共同創業しています。研究と事業の両面から、AIが人にどう関わるべきかを考えてきた人物です。

Rana氏が示したのは、AIへの委任を「Rules」「Risks」「Relationship」という3つの観点で考える枠組みでした。

Rulesは、仕事のルールを明確にでき、結果を確認できるか。Risksは、間違えた場合の影響がどの程度あり、元に戻せるか。Relationshipは、人との信頼や共感、その関係自体が価値の中心にあるか、という問いです。

例えば、ルールが明確で、繰り返しが多く、結果を確認しやすい仕事は、AIへの委任を進めやすくなります。一定の曖昧さや影響がある仕事では、AIが分析や選択肢を提示し、人が最終判断する構成が考えられます。重大で取り消しにくい判断や、人間関係が中心となる場面では、人が担う役割を慎重に設計する必要があります。

この考え方は、企業の業務設計にも直接つながります。対象業務を選ぶ際には、自動化によって削減できる時間とともに、誤りの影響、確認の方法、責任を持つ人を明確にする必要があります。

そして、この役割分担は、AIに提供する機能の作り方にも反映されます。

退職者のアカウント停止を例にすると、対象者の確認、入力の検証、共通ログインの停止、各アプリケーションの権限削除など、決められた手順があります。個別の操作だけをAIへ渡すと、その順序や条件をAIが都度判断することになります。

Workatoが紹介したEnterprise Skillsは、こうした業務手順をひとまとまりの機能として提供する考え方です。AIが利用者の意図を理解して適切な機能を選び、具体的な処理は、あらかじめ設計された手順に従って実行します。入力検証やエラー処理、重複実行の防止も、その設計に含めます。

Rana氏が提示した委任の判断軸と、Enterprise Skillsによる業務設計は、AIが判断する範囲と、仕組みで確実に守る範囲を明確にするという点でつながっていると感じました。

信頼は、実際の仕事ぶりを確かめながら育てる

AIに任せる範囲を決めた後も、それが期待どおりに機能しているかを確かめる必要があります。

金融機関やフィンテック企業向けに、金融データの接続・加工・活用を支援するMX Technologiesは、MCPの導入と改善を段階的に進めていました。同社は、アクセスをWorkato経由に集約したうえで、既存のMCPやプロキシを活用し、業務要件に応じて最適化したと説明しました。

同じ質問を複数のMCPに送り、処理時間やトークン消費を比較するほか、標準機能では満たせない人事・財務業務の要件に対して、独自のMCPを構築しています。

接続できたことは、業務で使えることの出発点です。必要な情報を過不足なく取得できるか、適切な操作を選べるか、費用や待ち時間が実用的かまで確認する必要があります。

この確認を本番運用で続けるために重要になるのが、可観測性です。可観測性とは、ログや実行履歴を通じて、システムで何が起きたかを調べられることを指します。

クラウドやアプリケーションの監視・ログ分析サービスを提供するDatadog(データドッグ)は、自社の業務自動化にWorkatoを利用する立場から、その実践を紹介しました。

同社では、会話やツールの呼び出し、成功・失敗、トークン消費などを確認し、実際の使われ方を改善につなげています。似た名称のツールが混同された際には、説明文を見直し、検索と個別データ取得の使い分けを明確にしたと説明しました。

エラーへの対応も、AIの仕事ぶりを左右します。一時的なアクセス制限が起きたときに状況を適切に返さなければ、AIが不要な再試行や別のツール呼び出しを繰り返す可能性があります。処理側で再試行する問題と、利用者に入力の修正を求める問題を分けることが必要です。

こうした事例が示すのは、システム上の成功と、業務上の成功を分けて考える重要性です。エラーなく処理が終わっても、適切な情報を取得し、利用者の目的を達成できたとは限りません。

Day1で紹介されたEvalsは、AIが期待どおりに仕事をできるかを、課題と評価基準で確かめる取り組みです。本番の挙動を観測し、期待した結果と比較し、ツールの説明や業務ロジックを改善することで、評価と運用がつながります。

この改善は、コスト管理にも役立ちます。不要な情報の取得や繰り返しを減らし、仕事に合うモデルを選び、同じ入力を再利用するキャッシュを活用する。AIへ任せる仕事の設計を見直すことが、品質と費用の両方に影響します。

使う人と一緒に、AIを組織へ根づかせる

仕組みが適切に動いても、現場に使われなければ成果は生まれません。そこで重要になるのが、利用者自身の参加です。

建設業向けに、工事の進捗やコスト、関係者間の情報共有を支援するクラウド型管理ソフトウェアを提供するProcore(プロコア)は、営業担当者が普段働く場所へAIを組み込む取り組みを紹介しました。

同社では、営業担当者が日常的に使うSlack上にエージェントを展開しました。さらに、開発の初期段階から営業担当者が参加し、一緒に作り、試し、修正を重ねています。約1,300人への展開に際しても、利用者自身が活用を広げる役割を担ったと説明されました。

また、AIが多くの作業を進め、人が最終確認・承認する半自律型から始め、精度や利用者の信頼を確かめながら、自律性を高める方向性が示されました。AIの能力が上がったときに、どの仕事まで任せられるかを見直していく考え方です。

この進め方は、Rana氏が示したControl、Capability、Cultureという3つの条件とも重なります。責任を持って管理できること、安定して展開できる能力があること、そして人が効果的に使える文化があることです。

Red Hatの事例でも、業務部門が構築を学ぶ一方で、IT部門が業務を学ぶ必要性が語られました。役割が変わる過程では、不安や戸惑いも生まれます。何をAIへ任せ、人がどこに価値を発揮するかを対話し、学び続けられる環境を整えることが、導入を支えます。

夜のメインステージではライブ演奏が行われ、会場は大きな盛り上がりを見せた
夜のメインステージではライブ演奏が行われ、会場は大きな盛り上がりを見せた

Day2を通じて、AIへの信頼は、役割と責任を定め、仕事ぶりを確認し、利用者とともに改善することで築かれるものだと感じました。

現場のアイデアを素早く形にする。共通の基盤で権限と業務ルールを守る。実際の結果を確認し、任せる範囲を広げる。Workatoが支える実行と統制の仕組みは、この取り組みを技術面から支援します。

その仕組みを成果へつなげるのは、業務を理解する人と、組織としての継続的な改善です。AIの導入を、働き方と責任のあり方まで含めて設計すること。その重要性を、具体的な企業の実践から考えることができた一日でした。

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