前回は、GDPR対応を全社的に進めるにあたり企業が構築すべき体制をお伝えした。グローバルでのプライバシーへの取組みを強化している企業であれば、既にプロジェクトチームを立ち上げ、情報収集や対応に努めていると思われるが、まだGDPRについての情報収集が序盤であれば、前回の記事をご参照いただきたい。

GDPR(EU一般データ保護規則)とは?覚えておくべき3つのポイント
GDPR施行前に企業が構築すべき体制とは
 
今回はGDPR対応において最も気にすべき事のひとつながら、一番見落とされがちなデジタルマーケティングとGDPRの関連について見ていきたい。

EU圏内でのデジタルマーケティングは控えるべきなのか?

一部の企業では、冗談交じりでGDPR対応が面倒なら、デジタルマーケティングを控えようとか、EU圏から撤退しようと言う声もあるが、これは「まだ施行前で何が該当するかわからない」「制裁金が天井知らず」という2つの理由からGDPRを恐れているからだろう。
 
しかしながら、ビジネスの成長においてデジタルマーケティングは必要不可欠なものになっており、グローバル化が進む昨今、日本国内に絞った対応というオプションはあり得ないため、GDPRを正しく理解することに努めて、正しく施策を実施することが大事になるだろう。

マーケターがGDPR対応で考えるべきこと

デジタルマーケティングにおけるGDPR対応という意味ではCookieの適切な利用が対策の第一歩となる。 先進的なデジタルマーケティングツールはCookieを使用していることが多く、先進的な企業であれば複数のツールを組み合わせ、さらに蓄積しているデータを駆使した施策を展開していることも多いだろう。ここに、課題の根深さが潜んでいる。
 
デジタルマーケティングツールが1つであれば、そのツールだけを制御すればよい。しかし前述の通り、現在では数多のツールやデータを利用しており、結果その数が多ければ多いほど、マーケターによる制御は困難になっている。
 
この課題に対する2つのアプローチ+1をあげていこう。

1.タグマネジメントでデジタルマーケティングツールを管理する

まずやるべきことは「増え続けるデジタルマーケティングツールとそこから得られるデータを適切に管理すること」だが、この当たり前のようなことが中々難しい。 主なデジタルマーケティングツールは、タグ(スニペット)をWebサイトに埋め込むことで挙動させている。タグマネジメントツール(タグマネ)ではそのタグの管理を行っている。 タグマネの中でも高機能の代表格は米国発のTealiumである。
 
Tealiumでタグを元にデジタルマーケティングツールの挙動タイミングやデータの送信ルールを細かに設定することが可能だ。Cookie利用において、ユーザーの同意を得られない場合には、タグ自体を出さない。ユーザーからの明確な同意が得られた場合には、適切なリージョンに記録させる。といった機能によりGDPR対応を可能としている。
 
また、Tealium自身、企業の永続的な発展のためにGDPR対応の指南をしている。

https://tealium.com/the-general-data-protection-regulation-gdpr/

2.オンラインプライバシー通知を徹底する

Webサイトにどのようなタグが埋め込まれているかどうか把握することはもちろん、Webサイトに埋め込まれたタグの元であるデジタルマーケティングツールの利用同意をユーザーに取り付ける必要があるが、このような通知を簡単に行えるものとしてはDetaSignがオススメだ。
 
DataSignはWebサイト上でどのようなデジタルマーケティングツールを利用しているかを把握することが可能だ。検出したタグからオンラインプライバシーポリシーを生成し、各デジタルマーケティングツールベンダーのオプトアウトページに誘導する機能が備わっており、Cookieの利用を希望しないユーザーは各ベンダーのページからオプトアウトができる。
 
DataSign自体はタグ管理はしていないため、基本的にタグの出し分けなどは出来ないが、まずは適切な通知から対策する場合には安価で速攻性のあるソリューションである。また純国産(日本製)ツールであることもポイントと言えるだろう。

https://datasign.jp/

番外.Webサイトのヘルスチェックを行う

上記の対策においてツールを利用する際、それらのツールのタグ自体が埋め込まれていないページがあったとしたら、管理から漏れてしまう。また、個人情報が不適切に表示されたページがある場合、そのようなページを素早く検知することが必要だが、このような作業を人手で行うことには限界がある。
 
そういったWebサイトのヘルスチェックはツールを利用して作業を自動化しつつ、チェック頻度やその精度を高め、その結果からタグマネジメントが正常に全ページに埋め込まれているか確認を徹底すれば、より安全性が高まるだろう。
 
このようなWebサイト自体の品質管理ツール(QAツール)としての代表格では、Siteimproveがあげられる。Siteimproveはリンク切れチェックはもちろん、アクセシビリティや自社規則に基づくチェック、CMSとの連携やAnalytics機能も追加できる品質管理の統合プラットフォームであるため、Webサイトのヘルスチェックには非常に有用といえる。

https://siteimprove.com/

デジタルマーケティングツールがまた増えるのか・・・と感じる方も多数いらっしゃることだろう。
 
ただ、今後ビジネスの競争で優位に立とうとすれば、これらのツール利用は必要不可欠である以上、効率的かつ安全に管理していくための仕組みを構築することは避けられない課題である。
 
来たるGDPR施行に向けて、まずは自社の内情を明らかにし、取り扱う個人情報や自社のデジタルマーケティング施策、ツール群の棚卸しと整理整頓を1日も早く開始しておくことを強くお勧めしたい。

関連記事

デジタルマーケティングジャーナル 一覧