この記事は[2013/07/09]に公開した記事を[2023/01/23]に加筆編集しております。

デジタルマーケティングとは

本記事では「デジタルマーケティング」を定義した上で、その概念を「Webマーケティング」と比較してみたいと思います。まずは、私の考えるデジタルマーケティングの概念を定義してみます。

デジタルマーケティングとは、様々なデジタルチャネル・マーケティングデータ・テクノロジーを活用し、あらゆるステージの顧客に対してマーケティング活動を行うこと。分析や自動化などのオペレーションも含み、ときにビジネスモデル創出につながるような施策も含まれる概念。

いかがでしょうか。デジタルと顧客に関わるあらゆることがデジタルマーケティングである、という定義になっています。「デジタルマーケティング」と同じような意味で使われる「Webマーケティング」という概念と比較すると、非常に広い概念である、と考えたいと思います。

Webマーケティングからデジタルマーケティングへ

デジタルマーケティングまでの言葉の変遷

デジタルマーケティングという言葉が広く使われるようになって随分と時間が経ちました。インターネットを利用したマーケティングは、90年代から始まりましたが、「デジタルマーケティング」という言葉が使われ始めたのは意外にも遅く、2014-2015年頃だったと思います。

それまでは、インターネットを活用したマーケティングを指して「インターネットマーケティング」や「ネットマーケティング」、「オンラインマーケティング」と呼んでいました。2000年代に入ると、「Webマーケティング」と呼ばれるようになります。当時の主な施策は、SEOやリスティング広告、LPO(ランディングページ最適化)などでした。そのため、「Webマーケティング」と聞くと、広告やSEOのイメージが強く残っているかもしれません。
 

「デジタルマーケティング」の登場と背景

2015年ごろから、「デジタルマーケティング」という言葉が特に外資系ツールベンダーの間で使われ始めました。初めてこの言葉を聞いた時は、直訳のような印象を受け、バイリンガルの人だけが使う言葉だと思いました。この言葉が広く利用されるようになったのには、当時のトレンドも後押しした要素があったかもしれません。

当時の背景としては、iPhoneをはじめとするスマートフォンが急速に普及し、FacebookやTwitterなどのSNSの利用も増え始めました。企業たちはこれまでの「ネット広告」や「ランディングページ」、「SEO」といった施策だけでなく、様々なデジタル上のマーケティング活動に一斉に力を入れ始めました。また、マーケティングツールがクラウド化され、マーケティングオートメーションをはじめとする様々なツールが市場に登場しました。これによって、デジタルマーケティングは広告やSEOだけでないという雰囲気が広まり、その言葉自体の普及に繋がったのかもしれません。

Webマーケティングとデジタルマーケティングの違いを4つの観点から考察

デジタルマーケティングは、Webマーケティングと比べてより広い概念だとすると、具体的にはどう広いのでしょうか。ファネル顧客接点(チャネル)業務の種類事業へのインパクト、の4つの観点から考察してみます。
 

デジタルマーケティングとWebマーケティングをファネル、顧客接点(チャネル)、業務の種類、事業へのインパクト、の4つの観点から考察
Webマーケティングとデジタルマーケティングの概念比較

第1の観点:ファネルからの考察

Webマーケティングはファネルの上部中心、デジタルマーケティングはカスタマージャーニーを網羅

まずは、ファネル、顧客の購買ステージで考えます。
Webマーケティングは広告やSEO、ランディングページといった認知や集客からコンバージョン・購買といったファネルの上部を中心とした施策のイメージではないでしょうか。

一方、デジタルマーケティングと言ったときにはファネル全体、もっというとカスタマージャーニー全体を指すことが多いと思います。

最近では、購入後の顧客の積極的な支援をカスタマーサクセスとして重視し、LTV(生涯顧客価値)を高める、といったこともよく聞かれます。デジタルマーケティングは、単に購買につなげるだけでなく、より幅広い顧客ステージを考えるといえるのではないでしょうか。
 

第2の観点:顧客接点(チャネル)からの考察

デジタルマーケティングはあらゆる顧客接点を網羅

次に顧客接点(=チャネル)で考えてみます。Webマーケティングが ”媒体や検索サイト上での広告から自社Webサイトへの誘導” を中心に考えることとすると、デジタルマーケティングでは ”あらゆるチャネルを想定した取り組み” だと考えてよいと思います。

SNSやEメールはもちろんのこと、場合によってはオフラインであるインサイドセールス・コンタクトセンター、店舗の取り組みまでを意味することがあると思います。また、オムニチャネルなどとも称されますが、こうした異なるチャネル間を連携させ、より良い顧客体験を作ろう、といった概念もデジタルマーケティングの範疇に含まれると思います。
 

第3の観点:業務の種類からの考察

デジタルマーケティングはデータ分析・データマネジメントなどのオペレーションも含む概念

デジタルマーケティングには、業務内容においても、より広い概念が含まれると思います。例えば、顧客データの管理や分析・セグメンテーションやスコアリング・業務の自動化などです。いわゆるデータマーケティングのような考え方がデジタルマーケティングには含まれていると思います。

ネット広告においてもデータを活用したセグメンテーションの考え方は以前よりありました。しかし、昨今ではそれが非常に高度な形でマーケティング業務に組み込まれていないでしょうか。得られる顧客データを蓄積・管理し、AIツールなども活用しながらセグメンテーションを行い施策に反映させる・・ CDPのようなデータ基盤にあらゆるデータを統合し、顧客理解を深める・・ こうした概念もデジタルマーケティングに含まれるといえます。
 

第4の観点:事業へのインパクトからの考察

新たなビジネスモデル創出もデジタルマーケティングが担うことも

最後に事業へのインパクトです。Webマーケティングにおいては、主にリード創出・コンバージョン向上など顧客の接点増加・顧客獲得が主眼に置かれていると考えられます。

一方、デジタルマーケティング、と言ったときには単に顧客を獲得するだけの概念ではなくなってきているときもあります。正確にはマーケティングDXなどで表現されることもありますが、ビジネスモデルさえも変えてしまうような施策をデジタルマーケティングとして行う企業も出てきています。

単品購入ではなくサブスクリプション型で販売する、店舗内のディスプレイを広告枠として売り出す、ノベルティや会員特典にNFTを利用する・・・など、デジタルマーケティングというよりはデジタルトランスフォーメーションと分類できそうな取り組みも、広義にはデジタルマーケティング、と呼ぶこともあると思います。

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