「オムニチャネル」とは、異なる様々なチャネルを全体最適の視点でシームレスに連携させるマーケティング戦略のこと。
 
これは、Eコマースの分野で増々台頭するAmazon.comに対抗するために、米国小売業(WalmartやMacy’s、Nordstromeなど)の生き残り戦略として注目を集めている戦略だ。 MIT Technology Reviewの2013年11月号では、「Beyond the Checkout Cart」と題して、Eコマースの特集を組んでいるが、Eコマースと並んで取り上げられている話題はその「オムニチャネル」。 その中で、米国小売業大手Macy’sのオムニチャネル施策が掲載されていたので紹介してみたい。

テクノロジーを駆使する老舗百貨店のMacy’s

Macy’shttp://www.macys.com/)(本社シンシナティ/ニューヨーク)は1851年創業の老舗百貨店であり、全米33州及び海外に800店以上の店舗を保有している全米でも有数の小売企業。
 
映画「モダン・タイムス」や「三十四丁目の奇蹟」などにも登場するなど、伝統的な小売業の象徴と言って良いかもしれない。売上高は2013年で約2兆8000億。
 
伝統的小売業の象徴であるMacy’sだが、テクノロジー活用に関しては非常に先進的。 ソーシャルメディアやEコマースなどへの取り組みも非常に早く、2011年にCEO自らが「オムニチャネル宣言」をしたことも有名。まさにオムニチャネルと言えばMacy’sなのだ。その後、Macy’sのオンラインの売上は毎年40%以上の成長率で拡大を続け、他の小売業が追随する戦略を打ち出し始めるなど、成果も大きく挙げている。

Macy’sのオムニチャネル施策

Macy’sのオムニチャネル施策に関しては、様々な記事がでているのでどこかで網羅的にまとめてみたいが、MIT Technology Reviewで紹介されていた取り組みは以下のようなものだ。
 
・TVコマーシャルでは、セレブリティを使ってスマートフォンアプリを大々的に告知し若年層とスマートフォンでの接点を築いている
・スマートフォンアプリからは、Macy’sの店舗リストからユーザーに最も近い店舗を表示し店舗へ誘導している
・店舗内ではアプリとQRコードを使って商品のスキャンを可能にしている(カタログからもスキャンが可能)
・全米で500以上のMacy’sの店舗の裏にミニ配送センターを設け、オンラインからの注文に対しての物流拠点となっている
・Webサイト上で24種類ものトラッキングタグでユーザーのブラウザにクッキーを埋め込んで計測している
 
1つ1つの施策は誰もが思いつきそうな単純なものだと思う。だが、これをストーリーとして見事に戦略に落とし込んでいる。
 
マス広告からスマートフォン、スマートフォンから店舗、店舗からスマートフォン・ECサイト、ECサイトからリアル店舗というように、リアルとデジタルを上手くシームレスにつなぎ合わせたバリューチェーン/顧客体験(オムニチャネル)が実現している。
 
また、トラッキングタグを大量に活用して、ユーザーのデータを蓄積している。これらを分析することであらたな機会を模索しようとしていることが伺える。 米Macy’s.com、IT活用で売り上げを最大12%向上、SAPソリューションを採用 最近になって上記のような分析を軸とした施策にも積極的に取り組んでいる。小売業のみならず、オムニチャネルの施策を検討する際にはベンチマークすべき企業の筆頭ではないだろうか。
 

MIT Technology Review 2013年11月
MIT Technology Review 2013年11月

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