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  • マーケティングテクノロジーへの投資収益率(ROI)を計算する

 
アンダーワークスでは様々な業種におけるマーケティングテクノロジー導入戦略立案を支援していますが、どのプロジェクトにおいても投資収益率(ROI)の考察は高い関心事です。
本稿では、マーケティング・テクノロジー・マネジメント・プラットフォームであるCabinetMのCEOであるAnita Breaton氏がMarTechに寄稿したマーケティングテクノロジーへの投資対効果(ROI)に関する考察をご紹介します。
 
執筆:Anita Brearton(CabinetM)翻訳構成:田口 裕(アンダーワークス株式会社)

マーケティングテクノロジーのROIを測定する公式はあるが、製品そのものやスタック全体の評価も必要

私はマーケティングテクノロジーの会社を経営しており、チームの誰もがその重要性と価値を明確に理解しています。ところが、自社のスタックに新たに何かを追加する提案を私や他の誰かがすると、私の共同創業者は真っ先に”その製品を買った場合の投資収益率(ROI)は?”と尋ねるのです。
 
最近、私たちはROIについて活発に議論しています。私たちは比較的小さなチームなので、通常は議論で十分なのですが、組織の規模が大きくなると議論だけでは不十分で、もっと規律と構造を持たせて意思決定する必要があります。
 
他の人がこの課題にどのように取り組んでいるかを調査して(ググって)みました。マーケティングテクノロジーに特化したものは見つかりませんでしたが、IT技術のROIの計算に関する参考になる記事がいくつか見つかりました。
 
新しい収益、測定可能な生産性の向上、コスト削減など、目に見えるコストベネフィットがある製品については、以下のような単純なROIの計算が有効です。

ROIの計算式

(利益ーコスト)÷コスト)× 100 = ROI率

 
この計算式を利用する際の注意点をいくつか挙げておきます。
 
1. 期間は3年間が最も一般的な利益計算の期間

2. コストには、月額や年額のサブスクリプション費用だけでなく、3年間の製品の導入と管理に必要なすべての費用を含める(トレーニング費用といったものも含む)
 
3. 利益とコストの計算では、3年間の間に製品ユーザーがさらに増えることを想定して、両者の軌跡を考慮することが重要
 
4. 最初のROI計算結果は最良ケースの見積もり。実際のROIを検証する唯一の方法は、製品を導入して時間の経過とともに定期的に仮定を見直すこと。実際のROIを測定することで、構造や価値が類似している新製品のROIを予測するのに有効なデータを得ることができる
 
5. 計算を再検討に際しては、仮定した諸条件を詳細に文書化しておくこと
 
6. 可能な限り「基準」を設定する。例えば、生産性におけるコスト削減を計算する場合、組織内の全員が各職務に対して同じ時間あたりの費用を使用していることを確認する必要がある
 
7. この計算にどのようにアプローチしたらよいかわからない場合は、ベンダーに支援を依頼する。ベンダーは製品・サービスが与える価値に関する情報、他の顧客の事例から参照できるデータを持っているはず 
 
8. 定量化可能なリターンが複数ある場合は計算が複雑になるものもある。参考にCabinetMを見てみると、その価値は、テクノロジーにかける費用の削減、生産性の向上、無駄なコストの回避、さらに細かい要素の数々によって定量化できる。もし、すべての要素を定量化することなく、望ましいROIを得ることができるのであれば、それで十分です。複雑で変数が多ければ多いほど、すべてを把握するのは難しくなるため、最も大きな影響を与える要素に焦点を当てる
 
製品によっては、ROIを定量化することが事実上不可能なものもあります。そのため、私はスタック内の製品やスタック自体を定性的に評価する方法について考えるようになりました。
 
前職ではエンジェル投資グループに所属しており、アーリーステージのスタートアップに資金を提供する際の最も難しいタスクの1つは、企業に価値(バリュエーション)を割り当てることでした。バリュエーションの計算式は少なくとも8種類(おそらくそれ以上)ありますが、いずれも企業の財務情報を使って計算されます。
 
アーリーステージのベンチャー企業では、会社の財務はベストな推測であるため、それに対して計算すると欠陥が生じます。 そのため、エンジェル投資家の多くは、類似企業のバリュエーションと定性評価の組み合わせに依存しています。最も一般的なのは「Berkus Method」です。「Berkus Method」は、アイデア、チーム、プロトタイプ、人間関係/ビルドオンデマンド、販売の5つの重要なリスク要因を特定し、投資家は各分野における企業の進捗状況に基づいてそれぞれにドル価値を割り当て、最終的な評価額に到達させるものです。

マーテックのための「Berkus Method」

私たちには、マーケティング・テクノロジーのための「Berkus Method」に相当するもの、つまり、私たちが使用する製品やスタック全体の価値評価を迅速に算出する方法が必要です。これは、各コンポーネントに現金価値を割り当てる代わりに、評価を割り当てるというものです。主要な構成要素について考えてみたところ、第一案として次のようなものを思いつきました。
 
・想定した用途(ユースケース)を満たす
・追加のユースケースをサポートするために拡張可能である
・スタック内の他の製品との統合が可能である
・導入と使用が容易である
・データを提供する
・データソースである
・収益と顧客生涯価値の向上に貢献する
・顧客獲得コストの低減に貢献する
・ポジティブな顧客体験の創造に貢献する
・顧客エンゲージメントに貢献する
・新たなマーケティング機能を実現する
・新しいマーケティング・チャネルを実現する
・データコンプライアンスをサポートする
・セキュリティを強化する
・マーケティングに欠かせない
 
各コンポーネントについて、ユーザーはスケール(1~5または1~10)で貢献度を評価し、その評価を合計して評価されたコンポーネントの数で割ります。すべてのコンポーネントがすべての製品に関連するわけではないので、評価されるコンポーネントの数は製品によって異なり、それぞれのケースで適切なコンポーネント、多いほうがいいのか、少ないほうがいいのかといった条件は変わります。
 
このアイデアに磨きをかけ、コンポーネントリストを完成させ、これを拡張して全体的なスタック価値を生み出す方法を考える上で、マーケティングテクノロジーに関わるコミュニティの皆様のご協力をお願いしたいと思います。あなたの考えを直接お聞かせください。 皆さんの組織でこのようなもの、または代替案を作成された方で、共有したいと思われる方はいらっしゃいますか?マーケティング・テクノロジーにますます多くの資金が費やされている今こそ、テクノロジー・コストの削減を迫られる前に、これに取り組むべき時なのです。
 
この記事はMarTechにて掲載された記事を著者の許可を得てアンダーワークスが日本向けに翻訳したものです。
 
関連記事:社内のテクノロジーを一元管理、CabinetMでデジタルガバナンスを実現

 


 

Anita Brearton / CabinetM CEO

Anita Breartonは、マーケティング・テクノロジー・マネジメント・プラットフォームであるCabinetMの創設者兼CEOです。長年のテクノロジーマーケターである彼女は、企業の設立からIPOや買収に至るまで、マーケティングチームを率いてきました。マーケティングチームのテクノロジースタックの構築と管理を支援するために書かれたワークブック「Attack Your Stack」と「Merge Your Stacks」の著者であり、CMS Wireの月刊コラムニストとして、マーケティングテクノロジーについて頻繁に講演しているほか、「50 Women You Need to Know in MarTech」の一人として認定されています。

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