アンダーワークスの山下です。前回の記事の続編として2023年1月、アメリカ・ニューヨークでのNRF RETAIL’S BIG SHOW開催前後に行った現地リテール店舗の視察報告とそこから感じた日本企業のリテールDXについて前編・後編2回に分けて考察していきたいと思います。
店舗視察も重要なコンテンツ
今回の出張の目的の一つ「リテール店舗視察」は、NRF RETAIL’S BIG SHOW会場内でのExhibitionや常設展示ブースのExpo Tourと同列の重要コンテンツと捉えられており、店舗視察に関するExhibitionは大変な盛り上がりを見せておりました。アンダーワークスもリテール業界のプロフェッショナルにアテンドいただき、イベント参加前後2日をかけてリテール店舗視察を実施しました。
スマートデバイスでOMOを体感
米国リテールではオフライン店舗でのショッピングにおいてもスマートデバイスありきでCXの営みが考えられています。店舗に訪問したユーザは入店直後にスマートフォンでフリーWiFiを取得し、アプリを起動。インストアモードを表示します。お気に入り商品を見つけたら、バーコードをスキャンし、価格や口コミをチェック。おおよそ商品の購入を決めてもレジには向かわず、ECサイトのカートに商品を追加。
一通りショッピングを終え、休憩するついでに館内の飲食店に入店しフードをオーダー。オーダーを待つ間に先ほどカートに入れた商品を再度チェックし決済。食事が終わったら帰り際にピックアップロッカーで商品を受け取ってショッピング終了です。
顧客体験の「ブレイン」 – インストアモード
この顧客体験を創り上げているのが「インストアモード」です。「インストアモード」とは、訪問店舗専用機能を提供するランチャーやウィジェットを指し、多くはネイティブアプリやWebサイトで利用できます。
「インストアモード」の起動においては利用店舗のWiFiコネクトが必須となりますが、WiFiを利用したいユーザが能動的にコネクトするため合理的に完結します。また、データ取得の同意もコネクトと同時のスキームで簡単に得ることができるため、データ活用においても非常に有用な打ち手です。
基本機能としてバーコードスキャン、商品購入、ピックアップロッカー受け取りを提供していますが、独自カラーを打ち出した「インストアモード」も増えています。
近年では、LVMHグループ傘下のコスメショップ「セフォラ(Sephora)」や「ナイキ(Nike)」が展開する「ナイキ ハウス オブ イノベーション(Nike House of Innovation)」で、スタッフとの1to1でアドバイスを受けるための予約機能をローンチしており、顧客体験向上の仕組みは「インストアモード」を中心に更に進化を続けているようです。
この顧客体験を日本でも
視察を振り返ると、進化を続ける米国に対し、国内では導入障壁が依然高い印象を持ちました。百貨店のように多品目・多ブランドの商材を抱えるケースでは、既成品バーコードと自社SKUのデータ整備だけで途轍もない労力を要する上、Webサイトの運用・保守だけで手いっぱいなのに「インストアモード」を提供するアプリを共存運用していく体力(時間・コスト)も相当なものです。
ピックアップロッカーなどのハードウェアとの連携なども考慮すると、当然IT部門の力だけでなくMDなど店舗開発サイドとのコミュニケーションも必要になってきます。縦割りを崩し、横串しで多くのプレイヤーを巻き込まなくては推進できないのがリテールDXです。
今回の顧客体験が日本のカルチャーに完璧にフィットするかは疑問を持ったものの、売上のシェアが今後インバウンドにシフトしていくまでには国内リテール企業の本気を他国に見せつけてくれることを1ユーザとして期待しています。
(後編へつづく)