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  • 「マーケティングデータ活用実態調査 2023年版」ポイント解説

 
本日(2023年3月22日)アンダーワークス株式会社が発表した、大手企業の顧客データ管理の取り組み実態や、顧客データ活用の動向に関する調査をまとめた「マーケティングデータ活用実態調査 2023年版」について、ポイントを抜粋し解説・紹介します。

顧客接点の多様化と共にマーケティングデータ活用の重要性も増加

現在、企業と顧客のデジタルな顧客接点の多様化と共に、マーケティングにおける顧客データの利活用やテクノロジー活用が進み、データマネジメント(データ統合・分析・施策への活用)の重要性が高まっています。
国内の上場企業について、マーケティングデータマネジメントの取り組み状況を可視化し今後の方針決定における参考にしていただきたく、アンダーワークス株式会社は本調査を実施しました。
 
*マーケティングデータ:オンライン・オフラインを問わず顧客接点から得られる、または外部から購入する、さまざまなマーケティング・販売・営業に関するデータの総称

【サマリー】企業の取り組みステージごとに直面する課題は変化

散在する多くのマーケティングデータを基盤に統合した企業は昨年から1.6倍に増える一方、分析、施策実行、先進的活用に進んだ企業は減少傾向となりました。データ統合を達成した企業が持つ「データ活用」に持つ課題を紐解くと、人材、知識やシステムといったリソース面の課題から、経営層の理解や部門間の調整といった組織面の課題にシフトしており、コロナ禍の3年間に企業が取り組みを進めるにつれて課題が変化しています。
 
マーティング・営業の成果向上におけるデータマネジメントの重要性認識が定着
データマネジメントへの取り組みは二極化
業種による取り組みの差が固定化
・データ統合を達成した企業は増加したが、活用ステージの課題に直面
汎用クラウド基盤を採用する企業が全体の半数
課題のトップに「組織間の連携や部門間調整」が再浮上

調査結果のポイント、企業のデータ活用状況は二極化

データマネジメントへの取り組み状況

「マーケティングデータの活用・管理に取り組んでいますか。」の設問に対し、昨年と同様に約半数の企業が「取り組んでいる」と回答する一方で、その数は昨年からあまり変化は無く、データマネジメントへの取り組みは「未定・予定なし」と回答する企業数もほぼ同数となりました。これはマーケティングデータ活用の取り組み状況の二極化が進んでいることが伺えます。
 

 

データマネジメントへの取り組み状況(業種別)

商社、流通/小売、その他のサービス業においては取り組みが微増に留まっているものの、金融/証券/保険、各種製造業においてマーケティングデータ活用・管理への取り組みが増加傾向にあり、全体では施策に対する継続的な投資が続けられているようです。
 

 

マーケティングデータ統合・活用の成熟度

「マーケティングデータの管理・利活用のステージはどれに最も近いですか?」という設問では、統合基盤に多くのデータを統合済みであると言える企業が23.5%となり、昨年と比べてほぼ横ばいとなりました。一方で統合に留まらず「分析利用」、「施策活用」、「先進活用」のステージにあると答える企業は軒並み減少しており、統合を達成した後に続く利活用ステージで多くの企業が課題に直面していることが伺えました。
 
また、データの部分的なデータの連携のみを実行しており、多くのデータは統合されていないステージの企業は47.7%と半数を占めているものの、昨年と比べると減少傾向にあり、コロナ禍の3年間に徐々に統合に進む企業が増えていることが伺えます。
 

 

保有するマーケティングデータの種類

「御社がマーケティングデータとして保有しているものをすべて選んでください。」の設問を見ると、チャットやレコメンド、問い合わせ、Eメール登録者や配信データといったオンライン接点経由のデータとCRM、名刺、リアル店舗の顧客・販売データといったオフライン接点のデータの保有がそれぞれ増加しており、コロナ禍が沈静化するにつれてマーケティングデータが多様化していることが伺えます。
 
気になる点として、Webサイトの行動ログデータの保有が減少していることが挙げられます。2022年4月に「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」が施行されましたが、この改正で「6か月以内に消去される短期保有データについても「保有個人データ」に含まれる」ということになりました。2018年のGDPR施行以来、Web行動のトラッキングを可能にしているCookieに対する規制が年々強化されていますが、日本にもそのトレンドが本格化してきた現れとも考えられます。
 

 

データ活用への期待・目的

「データ活用の取り組みで期待したい成果は?」の設問を見ると、「営業活動とマーケティングデータの連携(セールスイネーブルメントやABMなど)」に主眼を置く企業が49.6%と最も多くなりました。一方で、次点の回答は「すべての顧客接点の把握、BIなどでの顧客の可視化」(41.0%)となりました。3位は変わらず「自社Webサイトのコンテンツ強化(コンテンツマーケティング)」(40.6%)への注目が高く、昨年の次点回答である「施策の効果測定なども含めたPDCAサイクル実現」が4位となっていることからWebサイト等のデジタル顧客接点で得たデータを分析して営業活動に活用する、コンテンツマーケティングを通じてデータを収集するといった実際の運用が実現していることが垣間見える結果となりました。
 

 

データ統合基盤システムへの投資

「データ統合の基盤となるテクノロジーの利用料として年間どの程度の予算を割り当てるべきだと考えますか。」の設問においては、「年間5,000万円以上」という大きな予算を想定する企業は引き続き増加(2.9%→4.0%)し、1,000万〜5,000万未満も15%台を維持しており、データ統合基盤システムは継続的な投資対象となっていることが伺えます。一方で、「分からない」と回答する企業は昨年と同様の数値(28.8%→28.4%)となり、予算面もデータ利活用への二極化が起こっているように見えます。
 

 

データ統合基盤システムへの投資(大手企業・成熟度の高い企業)

年商2,000億円以上の企業と、成熟度ステージ3(多くのデータを統合済みの企業)以上の企業に絞り、それぞれのデータ統合基盤システムへの想定予算を見ると、昨年と比べて大きな傾向の変化は無く、引き続き投資の優先度は高いですが、データ活用の成熟度が高いからといって想定予算も高くなるわけではないことがわかります。
 

 

利用しているデータ管理の基盤システム

現在利用しているマーケティングデータ基盤システムに関する設問を見ると、回答数としては汎用型のクラウドインフラ・データベースの利用が伸長して全体の半数を占めています。一方で、昨年までは増加傾向にあった「Treasure Data CDP」、「Adobe Experience Platform」、「Snowflake」といった顧客データ専用CDP(カスタマーデータプラットフォーム)の利用数に大きな変化は無く、データ統合を達成した企業が増える一方で活用ステージに移行した企業は減少しているという今年の傾向にマッチしているように見えます。
 

 

データ活用・管理の取り組み課題

データ活用・管理に取り組む際の課題に関する設問では、昨年比で最も増えた回答は「組織間の連携や部門間調整」(43.5%)が再度トップになりました。また、データ活用・管理の取り組みを推進してきた企業では、運用面の経験に基づく課題感が見えてきたことが調査結果にも現れています。「デジタル人材」不足も引き続き重要課題ですが、それを解決しても組織的課題が壁となることが伺えます。
 

 

データ活用・管理の取り組みにおける課題感のコメントを課題のテーマによって分類してみると、経営層や現場でまだまだ重要性の認識や理解が低く、それが取り組みの予算確保や実行体制作りの妨げになっていることをあげるコメントが目立ちました。データ施策は中長期に渡る部門横断的な取り組みとなるケースが多く、投資も戦略的に行うことが必要です。日本企業にありがちな「ボトムアップ型」の実行体制ではこのような施策を全社的に実行していくことが難しく、経営層が施策の重要性を理解してバックアップしていく「トップダウン型」の進め方が必要な局面に来ているのではないでしょうか。
 

 
 

※調査本編資料はこちら

経営層の理解とリーダーシップによる全社的な取り組みへの移行が施策成功の鍵

昨年に引き続き3回目のマーケティングデータ活用実態調査でしたが、コロナ禍の3年間で企業のデータ管理・活用の取り組み実態が「立ち上げ」から「実務」に移ってきたことが伺えました。
 
多様なマーケティングデータを汎用クラウドインフラやCDP等への専用基盤に統合できた企業が増加する一方で、統合したデータを分析や施策実行に利用するステージに入った企業では新たなチャレンジが見えています。データを高度に利用したデジタルマーケティングでは、データ統合基盤にマーケティングツールを多数連携して様々な顧客接点で実際の施策を行うことになります。顧客ニーズ、ビジネス要求、運用プロセスを鑑みて統合的なマーケティング基盤を構築することが必要ですが、ここにはまだまだ専門的知見が求められる領域であり、デジタルマーケティングのコンサルティングや実行支援を専門とするプロフェッショナルが企業をサポートしていくことがますます求められていると言えるでしょう。
 

「マーケティングデータ活用実態調査 2023年版」概要

・調査対象者:東京証券取引所に上場している全企業約3,900社
・調査方法:郵送調査/インターネット調査(日経BPコンサルティングに委託)
・ 調査対象者の業種:全業種
・調査対象者の所属:マーケティング、広報、経営企画、総務、情報システム、営業企画、商品企画、広告宣伝部など
・調査対象者の役職:本部⻑、事業部⻑、部⻑、課⻑、主任クラス
・ 回答社数:278社
・調査時期:2022年12月1日-2022年12月31日

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