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  • 後編|GA4移行、今から準備すべき?UAサポート終了に向けてやるべきこ…

 
2023年6月を以てユニバーサル アナリティクス(UA)のサポートを終了することがGoogle社より発表されました。本記事ではUAからGoogleアナリティクス4(GA4)への移行を考える担当者に向けて、現場視点での導入メリットやケーススタディ、導入準備のプロセスを解説します。移行の概要について知りたい方は、前編をご覧ください。
 
(話:アンダーワークス アソシエイトマネージャー 米川泰輔、聞き手・文:宿木雪樹)

UAとGA4の違い――GA4活用のケーススタディ

はじめにUAとGA4の違いについて、具体的な活用シーンを想定しながら解説します。GA4を利用することで、現場ではどのような可能性を新たに見出すことができるのでしょうか。
 

AIが推奨するセグメントに対する広告配信が可能に

Googleアナリティクス4(以下、GA4)の強みとして第一に挙げられるのは、AI/機械学習を活用した予測機能実装です。

たとえば、ユーザーがECサイトである商品を購入した場合、そのユーザーが過去に閲覧したページや性別、年齢層などの特性を元にAIがセグメントを割り出します。それを元に、最適なセグメントに対して広告配信が可能になる「予測オーディエンス」の機能も登場しています。本機能は、特にユーザー数の多いBtoC事業を展開する企業の新規顧客獲得などのシーンで活用が期待されます。
 
ただしこのAIの精度に関して補足すると、移行当初は高い期待を寄せられるレベルではない可能性もあり、この機能を主軸とした広告配信を行うのはまだ早急とも言えます。一方で、今後学習データの量が増えるに伴い、セグメントの精度も高まると考えられます。
 
なお、このAI/機械学習による推薦の背景には「Googleシグナル」という技術が活用されます。Googleシグナルとは、Googleサービス群を基軸に、クロスデバイスでユーザーを特定するデータで、GA4上での施策にも活用することができます。本技術は広告のカスタマイズを有効にしたGoogleユーザーの情報を利用するため、匿名化に配慮された設計であることも特筆すべきポイントです。
 

BigQueryとの連携で分析の幅が拡大

次に挙げられるのは、分析の可能性を広げるBigQuery(ビッグクエリ、以下BQ)との連携についてです。UAでは有料版のみだったBQとの連携ですが、GA4ではデフォルトの機能として備わっており、GAで集めたデータをBQに取り込み、BIツールでそのデータを可視化したりSQLを書いて分析したりといった手段を、以前より容易に選択することができます。
 
GA4内でのレポート作成などに不便を感じていたり、既に利用しているTableauやDOMOといったBIツールでGA4のデータを見たりレポートを作りたい場合に有効な機能です。ただし、本機能はGA4内で完結するものではなく、活用には一定の知識やスキルが必要になってきます。
 

データの保持期間の制限がなくなる

最後に、データの保持期間について解説します。UAではデータの保持期間を無期限に設定することができましたが、一方、GA4ではデフォルトでは2ヶ月、最長でも14ヶ月間しかデータを保持しない設計になっています。先に挙げたBQへのデータ蓄積をかけ合わせることで、2年以上をさかのぼった過去データも分析することができます
 
データを分析する際、2年前、3年前と年単位で状況を比較するケースは往々にしてあるので、このデータ保持期間の無制限化は多くの企業にとってメリットになるでしょう。

GA4移行の4つのステップ

実際に現場の担当者がUAからGA4の移行をするためには、具体的にどのようなプロセスでの準備が必要になるか、4つのステップに分けて解説します。
 

1. 自社で計測が必要なデータの整理・現状把握

まず、上図のようなシートを使い、自社で計測が必要なデータを整理します。レポートの目的、指標、ディメンション、データソース、レポートの閲覧者・編集者などを一覧化し、現状を把握しましょう。多くの場合、Googleタグマネージャー(GTM)で取得しているデータなどもこの時点で洗い出しておくことになるでしょう。
 
こうした整理を行うと、誰も確認していないレポートや、新たに計測が必要なデータ、見直しが必要なKPIといったものが可視化されます。自社のデータ取得の状況を棚卸しすることで、これまで不必要であったもの、逆に必要であるものを改めて確認できるため、データを一層活用するための土台を作る効果も期待できます
 

2. 要件定義・マッピング

次に、1で整理した現状に基づき、GA4で取得するデータやレポートの要件を再定義します。マッピングとは、UAで確認しているものとGA4上で確認すべきものの紐づけです。例えば「UAで直帰率と呼んでいたものはGA4ではこの指標」というふうに、移行にあたって変わる部分を整理し、GA4上で何を取得すべきか、何を見るべきか確認していきます。
 

3. データ取得設定・設計とテスト

2の要件定義から設計書を作り、GA4上のデータ取得の設定を行います。また、それらの設定から期待通りのデータを取得できるかテストします。なお、初期設定時に最低限対応してほしいチェックポイントは、下記の6点です。

・データ保持期間を14ヶ月へ変更
・関係者IPの計測除外
・クロスドメイン設定
・Googleシグナルをオン
・計測したいイベントの設定
・コンバージョン設定
 

4. ローンチ

テスト結果を見て、GA4をローンチ(本番化)します。
 

運用面でのフォロー

なお、この3から4のステップにかけて、GA4を実際に扱う運用担当者に対する運用マニュアルやガイドラインを作成することも大切です。問題なく運用できる体制を万全に整えるためには、担当者のトレーニング期間を設けると良いでしょう。これらの運用面で不安がある場合は、デジタルマーケティング支援を行う外部企業のサポートを受けるのもひとつの手段です。

GA4移行の成功の鍵を握るのは自社データの正確な把握

前述した4つのステップの中で、最も重要なプロセスは「自社のデータ計測の現状把握」と「要件定義」です。
 
前編でも言及しましたが、GA4はUAよりもできることが増え、AI技術などを活かした機能が備わっているからこそ、自社に適した設定・設計を行うことの重要性が一層高まります。そのため、自社のデータの棚卸しのプロセスには手を抜かず、細かに現状を把握していくことが大切です。データ整理が不十分なままGA4を設定してしまうと、その後期待したレポートを得ることができません
 
現在自社の取得データの全貌について正確に把握できている企業ならば問題ないかもしれませんが、この棚卸しのプロセスには、多くの企業がある程度の時間を要します。そのため、2023年6月のUA終了までにGA4移行を済ませるためには、余裕をもった準備期間を設ける必要があるでしょう。
 
今回はUAからGA4への移行をテーマに、前後編に分けてマーケティング担当者が何を行うべきか解説してきました。まだGA4移行対応に踏み出していない担当者の方はこの記事をヒントにしつつ、まずUAとGA4を併用し、使い方に慣れつつ上記のような移行準備を進めることをおすすめします。

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