• HOME
  • メディアDMJ
  • コンポーザブルDXPの思想から進化を遂げたSitecoreのCMS【前編】


テクノロジーの進化とユーザーニーズの変化に伴い、大きな転換期を迎えているCMS。その渦中で、CMSベンダーはどのような戦略に基づき、どんな製品群を展開しているのでしょうか。連載企画「CMSの進化を目指すベンダーの挑戦」では、その最先端について、各ベンダー担当者へのインタビューを行います。本記事では、20年の実績を持ち、多様なソリューションを展開するSitecore株式会社の原水氏にお話を聞きました。

(話:サイトコア株式会社 セールスグループソリューションエンジニア ディレクター 原水 真一氏)

国内外の多様なニーズに応える強力なネットワークと実績

――はじめにSitecore社について教えてください。

Sitecore社は2001年、マイケル・サイファートがデンマークで起業した会社です。当時Web時代の到来を感じたマイケルは、CMSに着目してサービスを開発しました。そして創業から10年後の2010年、事業拡大に伴い日本法人が誕生しました。

2022年現在、Sitecoreは全世界で5,200以上ものお客様にご利用いただいており、パートナー企業は1,400社にのぼります。グローバルでの存在感はもちろんのこと、日本ではセイコーウオッチや中部テレコミュニケーション、トヨタファイナンスといった各業界のお客様にご愛用いただいております。


 製品群も20年以上の実績と時代のニーズの変化を受けて多様化し、近年はCMSから派生した領域にも進出しています。従来のオールインワンといった形ではお客様の成長支援に限界があると判断し、コンポーザブル(※複数の要素を組み合わせることが可能な)という概念を取り入れつつ、CDPや、EC支援などお客様のビジネスモデルに合わせた機能を持つサービスも展開しています。

 

――導入時のポイントとなる国内のパートナーやコミュニティについて伺いたいです。

国内パートナー企業は約40社で、Sitecoreの構築や導入支援などの観点では、うち20社程度が対応可能です。お客様から見た選択肢は比較的広いとは言えますが、今後より多くのパートナー企業との連携を強めていきたいです。

特に、先に述べたようなコンポーザブルなサービスを提供していくにあたり、エンジニアの知見とコンサルティングスキルを併せ持つようなパートナーの強化が必要かもしれません。お客様の要件をヒアリングし、改善策を技術的な観点から提案できると、お客様に対してより良いサービスを提供できると考えています。

コミュニティについては、デベロッパー・コミュニティが存在し、エコシステムとして機能しています。グローバルでは2万名以上の会員の皆様が日々情報共有を活発に行っており、日本国内に限って言えばまだ規模が大きいとはいえないものの、セミナー開催をはじめ、Sitecoreに対する知見が深い方とのコミュニケーション・パスはつねにおこなっています。Sitecoreコミュニティ内ですぐれた人材を表彰するMVPプログラムでも、日本国内で活躍する方々が毎年表彰されています。

そもそも日本のエンタープライズ領域に関しては、デベロッパー・コミュニティという文化そのものが定着していないという難しさもあるわけですが、今後ヘッドレスCMSなどのサービスを展開していくことで、こうしたコミュニティ活動もより活性化していくのではないかと考えています。

――グローバルに事業を展開する企業にとってのSitecoreの強みも、併せて教えてください。

日本法人がグローバルサイトを構築したい、かつ日本のパートナーを紹介してほしいとご希望をいただいた場合は、エンジニアが日本だけでなく海外におり、海外でPMを回すことができるような国内パートナー企業を紹介させていただいています。

最近増えているのは、日本ではなく、海外のスタンダードに基づいた開発を希望されるお客様です。こういった場合は、アライアンスチームが日本法人の子会社を通じた窓口を設けつつ、構築・マーケティングを包括して海外で回すような体制を整えます。

このように、さまざまなニーズに応じてグローバルな連携力を活かしたご支援をしている形ですね。

ユーザーの使いやすさを徹底した主力製品のSaaS化

――SitecoreのCMS製品群とその特徴を教えてください。

まず、Sitecore Experience Managerについて紹介します。こちらは現在数多くのエンタープライズ企業に導入いただいているコンテンツ管理システムで、Webページを“見たまま”で編集できる操作感や、それに紐づく運用コスト軽減といった点が大きな強みです。

ローカルでの開発環境を提供しているところも特長の一つです。従来のCMSのようにサーバー上で操作する必要がなく、Dockerにも対応しているため、デベロッパーの方がより開発しやすい環境になっています。

また、これらの機能にオプションとして提供するManaged Cloudは、近年ご相談が増えたWebサイトのホスティング監視を行うサービスです。

こうした従来の強力な製品に加え、2022年7月には上記のSitecore Experience Managerの機能をSaaS提供するSitecore Experience Manager Cloud(以下、XM Cloud)をリリースしました。

XM Cloudはクラウドアーキテクチャを採用しており、既存のOSやデータベースミドルウェアのバージョンアップを必要とせず、所有コストの大幅な削減を実現しています。ビルドサーバーもSaaSとして提供するため、ビルド・デプロイの自動化や、ステージング環境・本番環境の切り替えに対応するポータルを利用できます。

他社製品との比較ポイントとしては、“見たまま”編集ができるヘッドレスCMSであることが挙げられます。これまで提供してきたSitecore Experience Managerのノウハウを活かした編集ツールとヘッドレスでのサイト構築機能を双方持つ点が大きな特長です。編集ユーザーに応じたページ編集機能の提供や、コンテンツ公開に合わせた関連ページの自動更新など、制作業務を大幅に効率化する機能が充実しています。さらに従来からあったWebサイト以外でのコンテンツの再利用といったニーズにも対応し、多様なチャネル・顧客接点でのアプローチも容易です。

また、サーバーレス環境の提供という点も魅力になるのではないでしょうか。WebコンテンツをホスティングするサービスやCDNと組み合わせることで、大量なトラフィック処理にも対応しやすくなりました。

――Sitecoreの製品の強みと、その背景にある設計思想なども聞きたいです。

まず前提にあるのは、お客様の使いやすさを徹底した製品の改善を続けていることです。これまでSitecoreはコンテンツと表示するページを分けて管理することで、効率よく開発できる環境の提供に注力してきました。

ヘッドレスというニーズが生じてからは、早い段階からデベロッパー・コミュニティとコミュニケーションを重ね、今回のようなSaaS提供という新たな展開へとたどりつきました。構築のしやすさを鑑みながら、お客様が使いたい機能をタイムリーにリリースする。そして使いやすさは引き継ぎつつ、トレンドに応じて製品をアップデートしていく。この積み重ねは、20年間Sitecore社が一貫して取り組んでいるところです。

今回リリースしたXM Cloudを通じ、その真価がさらにお客様に届きやすくなると考えています。

コンポーザブルDXPで迅速なビジネス展開を支援

――改めて、ユーザーフレンドリーなCMSの提供を追求した結果、いまSitecoreの製品群は転換期にあるという印象を受けました。

そうですね。冒頭でもお話した通り、Sitecore社の方針としては、お客様への提供価値をより高めるためにコンポーザブルな概念を取り入れたソリューション開発に注力しています。

私たちはこれまでSitecoreのCMSに合わせてマルチエクスペリエンスやパーソナライズに対応していただく、いわばトラディショナルなDXP(デジタルエクスペリエンスプラットフォーム)を提供していました。一方、今後はコンポーザブルDXPの考え方に基づき、すでにご利用がある他社製品や既存のインフラとも柔軟に連携し、その全機能を呼び出せるような管理画面なども提供する予定です。極端な例を挙げれば、SitecoreのCMSのご利用がなくとも、SaaSを通じて迅速なビジネス展開をご支援できれば、と考えています。

インタビュー後編では、 Sitecore社が構想するコンポーザブルDXPについてより詳しく解説するとともに、CMS領域を超えてSitecore社が提供するサービスの魅力を伝えます。

関連記事

デジタルマーケティングジャーナル 一覧