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  • コンポーザブルDXPの思想から進化を遂げたSitecoreのCMS【後編】


テクノロジーの進化とユーザーニーズの変容の渦中にあるCMSベンダーに迫る、連載企画「CMSの進化を目指すベンダーの挑戦」。その第一弾として、SitecoreのCMS製品、及び全製品群の進化や背景にある戦略について、前・後編に分けてお届けします。後編である本記事では、Sitecoreの新たな戦略軸となる「コンポーザブルDXP」にフォーカスし、提供価値の変化や今後の展望を聞きました。

(話:サイトコア株式会社 セールスグループソリューションエンジニア ディレクター 原水 真一氏)

コンポーザブルDXPと強力な製品群

――Sitecore社の今後の戦略を象徴するコンポーザブルDXPについて教えてください。

まず従前のサービスを振り返ると、私たちはいわゆるトラディショナルなDXP(デジタルエクスペリエンスプラットフォーム)を提供してきました。それはあくまでSitecore社のCMSを主軸とした価値提供、機能の拡張といった側面が大きく、なるべく自社開発でお客様に製品をお届けする姿勢を貫いてきました。

一方、現在私たちが実現を目指しているコンポーザブルDXPとは、独立したコンポーネントを提供することで、他社製品や既存のインフラと柔軟に連携するDXPです。お客様のニーズや環境に合わせて基盤を自由に構築できることが、管理コストの削減や開発期間の短縮、顧客体験の向上といったさまざまなメリットをもたらします。


そうした思想を体系化したSitecore DXPは、「コンテンツ」、「エクスペリエンス」、「コマース」という3つのカテゴリに属する製品群を総称するものです。それぞれの製品をお客様のビジネスやニーズに合わせて組み換え、3つの工程が結びつくSitecore DXPで統合管理することで、カスタマージャーニーを網羅したアプローチや顧客体験改善を実現します。

――Sitecore DXPにはどのような製品がありますか。

Sitecore DXPが内包するいくつかのSitecore製品について簡単に説明します。

まずSitecore CDPは、顧客データをオムニチャネルで取得、統合、活用できるプラットフォームです。リアルタイムのセグメンテーションや精度の高いリターゲティングで、社内のデータ資産から生まれる収益を最大化します。本製品は従来のCDPに求められるデータを貯める仕組みだけでなく、パーソナライズなどの機能も有するユニークな製品と言えます。

2022年1月にリリースされたSitecore Order Cloudは、ヘッドレス・コマース・ソリューションです。製品管理やオーダー管理、サプライヤー管理といった機能を備えており、必要に応じてお客様側で開発することで、ECサイトを構築することができます。また、本ソリューションはBtoBコマースのシナリオにも対応している点が大きな特長です。

Sitecore Sendは、エンタープライズ向けに開発されたメール・コミュニケーション・サービスです。顧客との関係性を醸成するメール作成・送信プロセスの自動化や合理化を促進します。

これらは「エクスペリエンス」や「コマース」カテゴリに属するもので、これに「コンテンツ」カテゴリに属す、連載前編で紹介したSitecore XM Cloudや、従前から提供していたSitecore Content Hubなどで、Sitecore DXPと総称しています。
(参考:https://www.underworks.co.jp/dmj/2022/10/20/cms-sitecore-01/

これらの製品群はSaaSとして提供され、いずれもSitecore DXPに連携することで統合管理することができます。もちろん他社製品と組み合わせることも、製品単体で利用することも可能です。

“MACH”に基づく企業課題に寄り添ったサービス提供

――こうした多様なソリューションを急速に展開できた背景についても教えてください。

こうした一連のSaaS製品の充実の背景には、コンポーザブルDXP実現を含めたSitecore社の成長戦略があります。

直近Sitecore社では、強力なAPIを持つSaaS企業の買収に注力していました。買収企業のテクノロジーを、MACHアーキテクチャに基づいた形で合わせてリリースすることで、柔軟な連携力を持つSitecoreのソリューションとして体系化することに成功しました。

MACHアーキテクチャとは、グローバルで注目されているコンポーザブルに関するアーキテクチャのガイドとなっており、MACH Alianceという業界団体も立ち上がっています。2022年1月にはAWSが参加するなど、業界で注目を浴びているアーキテクチャといえます。「Microservices」「API-first」「Cloud-Native SaaS」「Headless」の頭文字を取ったMACHアーキテクチャを積極的に採用して開発されたSitecore DXPをご利用いただくことで、最新のテクノロジーとそこから生まれる価値を獲得できます。

――こうした成長戦略や原則は、どういった課題意識から生まれたものなのでしょうか。

お客様の課題をすばやく、幅広く解決したいという思いがこうした戦略につながりました。これまで私たちは「検索エンジンを改善したい」「パーソナライズを実践したい」といったお客様のニーズに応える形でCMS製品を中心にリニューアルしてきました。しかし、テクノロジーの進化やデジタルマーケティングの変容を受け、その姿勢を抜本的に変える必要があると考えたのです。

「新しい技術で課題を解決できるのか」「既存のコンテンツをどう改善すべきか」「オペレーションの変化にはどう対応したらいいのか」。顧客のデジタル体験について、企業はこうしたさまざまな悩みを抱えていますが、反してWebのリニューアルはそう頻繁にできるものではありません。

お客様が最低限のコストで顧客体験の改善を続けるためには、既存のリソースを活かしつつ、必要な機能だけ取り入れるほうが理想です。また、ビジネスの拡張や変化にも柔軟に対応し、都度アップデートにコストがかからないことも重要なポイントと言えるでしょう。こういった課題感から、機能によって分かれた製品を組み合わせることを前提に、その管理・連携を支援するサービスを提供することこそ、私たちができることだと考えました。

機能強化とアライアンスで新たなフェーズへ

――Sitecore社の製品群を包括した今後の展望を教えてください。

これまでの製品リリースや2021年の企業買収によって、Sitecore社のコンポーネントはさらに充実しました。もちろん、今後ニーズに応じた新たな買収というケースもあり得ますが、基本的には現在のコンポーネントでお客様の幅広いニーズにカバーできる形が整ったと認識しています。したがって、今後はこれらの製品の機能強化をしていくことが一つの目標になるでしょう。管理画面のマルチ言語対応は、今後取り組んでいくことの一例です。

また、コンポーザブルDXPの基盤づくりというフェーズの次は、他社とのアライアンスによるお客様への価値提供といったフェーズへと移行していきます。ソリューションを提供する会社間が各機能のメンテナンスといった側面も含めて相互に連携し、常に最新のものをお客様にご利用いただける。そういった展開ができるパートナーアライアンスを今後一層強化し、“つながる”ことによるSitecoreの存在感を高めていきたいと考えております。Sitecoreという一つのステージに、多様なパフォーマンスを秘めたタレントが集結し、いよいよ舞台の幕が上がる段階、といったところでしょうか。

コンポーザブルDXPを基軸に、大きな戦略転換を決断したSitecore社。その狙いと紐づく製品群は、さまざまなビジネスを網羅的に支援する形で急速に進化しつつあります。CMSベンダーから、顧客のデジタル体験を演出する基盤・コネクタを提供する存在へ。そこから生まれる価値の拡張性は、大きな期待を持てるものです。時代の変化に応じて提供価値そのものを見直したSitecore社の挑戦は、まだ始まったばかり。コンポーザブルなシステムを構築したいと考える企業の方は、成長の只中にあるSitecoreと共に、その挑戦に踏み切ってみるのも良いかもしれません。

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