“WordPressのプロ”が開発したAltisの魅力と提供価値【後編】

連載企画「CMSの進化を目指すベンダーの挑戦」では、テクノロジーの進化とユーザーニーズの変化に応じ、挑戦するCMSベンダーの姿をお届けしています。今回は、エンタープライズ向けのWordPress開発に特化し、クラウドホスティング・CMS・デジタルマーケティングが一体化したソリューション、「Altis」を提供するHuman Made社にお話をお聞きしました。後編となる本稿では、同社の事業展望を掘り下げ、グローバル市場から見た日本市場にかける期待や成長戦略をお聞きしました。
　
（話：Human Made Limited Director of Sales (APAC) / Jon Ang 氏）

日本におけるWordPressの浸透とエンタープライズ市場のギャップ

――近年日本でもAltisを扱うパートナーが増えてきているとのことですが、日本語対応の現状を教えてください。
　
Altisは日本語も含めた47言語に対応しており、標準で日本語で利用することができる仕様となっています。また、サポート面に関しても、Human Madeには日本語で対応できるスタッフが在籍しています。私たちは今後も引き続き日本国内のパートナーと強力に連携していきたいと考えており、それに見合う充実したサポートや、日本語で問題なくサービスを利用できるエクスペリエンスを提供していくことをお約束します。
　
　
――日本の市場についてどうお考えですか。
　
非常に興味深いことに、WordPressは日本のCMS市場において80％近いシェアを誇っています。つまり、日本で閲覧するウェブサイトの大半はWordPressでできているとも言い換えられますね。これは10年間にわたるコミュニティ活動の努力の結果とも言えるでしょう。一方で、WordPressのエンタープライズ市場のシェアを見てみると、アメリカやヨーロッパと比較してそれほど大きくないことが日本市場の特徴のひとつです。
　
つまり日本企業の多くは、WordPressを活用することで成熟したコミュニティから充実したサポートを受けられる環境や、グローバルに蓄積された豊富なナレッジがあるにも関わらず、それらを活用しきれていないということです。こういった現状を踏まえ、私たちは日本企業とWordPressの間にあるギャップを埋めることに注力しています。
　
世界で多くの企業に利用されるサービスの多くは、強力なブランド力を持ちます。Adobeのように、だれもが名前を思い浮かべることができるソフトウエアは、多大な信頼を勝ち得ています。それと同じように、WordPressがマーケティング活動を強力かつ網羅的に活性化させるソリューションであることを、私たちがHuman Madeのサービスを通じて伝えていきたいのです。企業の課題に寄り添い、課題解決をするためのエンタープライズWordPressの選択肢として、Altisのリリースに至りました。

企業の課題に寄り添い、課題解決を目指すAltisの現状

――日本企業は、Altisを活用して具体的にどのようなことができますか。
　
まず挙げられるのが、日本企業のグローバル進出において重要な役割を果たす「多言語対応サイト」の一括管理です。昨今の日本企業の多くは、グローバルにおける事業基盤を強化しようとしていますね。私たちはそのニーズに応えるべく、多言語で展開されたコンテンツを一括管理できる機能をCMSの一部として提供しています。
　
また、Altisにはオムニチャネルの考え方も組み込まれています。私たちのお客様の中には、Altisのほかさまざまなソリューションを連携してマーケティングを行う企業も少なくありません。例えば、モバイルアプリやテレビアプリをAltisに接続すること、あるいはSalesforceと連携することも可能です。Altisのバックグラウンドには大規模なAPIエコシステムがあるため、企業はAltisを介してマーケティング・テクノロジー・スタックを実現することも、インターフェースを自在に選択しつつAltisのダッシュボードに接続することもできます。
　
　
――Human Madeのサービスはエンタープライズの利用シーンを意識した形で進化しているのですね。
　
そうですね。企業がウェブサイトを立ち上げるとき、プロフェッショナルなサービスとエンジニアリング、加えてホスティングという全ての要素が整っていることが重要です。私たちがクラウドサービスとCMS、そしてパーソナライゼーションなどの分析に役立つソリューションをすべて自社で提供しようと考えているのは、それらの機能を求める企業が利用することを前提としているからです。
　
WordPressは優れたオープンソースである一方、企業の要求を満たすためのネイティブなソリューションがありません。企業はマーケティング・テクノロジーを取り入れるため他社製品を組み合わせていくことに多額の予算を投資しなければならず、運用において難しい選択を迫られています。こういった現状を打破するため、私たちは企業にとって容易かつ安価、そして最適なソリューション提供を目指しています。

ファーストパーティデータを活用した確度の高い分析を目指して

――今後の開発で注力したいことを教えてください。
　
私たちは今後、Altisアクセラレート（マーケティング支援ソリューション）の開発を中心に推し進めることで、企業により実用的なデータの取得と分析という価値を提供していきたいです。
　
この背景にあるのは、昨今の個人情報保護とデジタルマーケティングの関係の変化です。企業の取得データからの個人特定と、それに伴うプライバシー侵害を避けるため、マーケティングを目的としたサードパーティーデータの利用が困難になりつつあります。企業はこのような環境の変化に応じ、ファーストパーティデータ活用を基盤としたマーケティング戦略を再構築しなければなりません。Cookie廃止の動きは現状一時的に延期されているものの、おそらく今後同じような動きが再び活発化するでしょう。
　
私たちがネイティブなシステムを作ることにこだわりを持ってきたのは、ファーストパーティデータを活用したデータ分析を実現することにより、企業が抱える課題の解決に資するソリューションを提供したいからです。個人を特定しなくても、誰がどのように時間を費やしているかを企業が分析できるソリューションを提供することが、私たちの次の目標です。私たちのサービスは、多くの企業の悩みを的確に解決するものに進化していくはずです。
　
　
――Altisが目指す分析機能は、Googleアナリティクスなどの先行するWeb解析ツールとどのような点が異なるのでしょうか。
　
大きな違いとしては、Googleアナリティクスがページレベルの機能として提供されているのに対し、Altisのアナリティクス機能はエクスペリエンスブロックとコンテンツエクスプローラに対して機能するという点です。Altisがコンテンツをブロックレベルで把握し、ユーザーがデータに基づいたカスタマーエクスペリエンスを構築できるようにしているのに対し、Googleアナリティクスでは同じことをやるためには365+を購入し、カスタム構築を行う必要があります。
　
現状多くのお客様は、AltisとGoogleの分析機能を併用しています。しかし、私たちは今後、正しい形でデータを活用しながらより精度の高い分析結果を出していきたいと考えています。将来的に、Altisの分析機能は既存のソリューションを超える価値提供を実現していくでしょう。
　
　
――最後に、日本国内の企業に対してメッセージをお願いします。
　
Human Madeは日本国内におけるプレゼンスはそれほど大きくないものの、その改善に努めつつ、グローバルな視点でデジタルマーケティングの現状や課題を把握していると自負しています。そして今後、私たちは日本企業に対してグローバルで蓄積されたナレッジを活かし、最大限のパフォーマンスを発揮するWordPress活用の在り方を伝えていきたいと考えています。
　
日本では成功したものの、グローバルに進出するにはどうしたらいいのか。あるいは、メディアとして単に情報を発信するサービスの一歩先、次世代のメディアになっていくためにはどうしたらいいのか。こういった課題を抱えている企業には、ぜひ私たちのソリューションと、豊富な知識から提供されるコンサルティングを検討していただきたいです。実はHuman MadeにはWordPressの創始者2人のうちの1人であるMike Littleも在籍しているのですが、これもひとえに、WordPressの未来をリードし続けられるようにするためなのです。
　
そして、日本企業の課題を共有していただくことは、私たちにとっても価値のあることです。異なる文化から生まれるさまざまな視点を共有することで、世界のお客様に一層高い価値を提供していけることを、私たちは願っています。
　
　

　
WordPressの活用に課題を持つ国内のエンタープライズ企業に対し、将来的な課題解決も視野に入れつつ価値提供の意思を強く示すHuman Made。その軸となるデータ分析機能を有するAltisアクセラレートは、デジタルマーケティングの競争力を高めたい企業にとって、さまざまな視点から可能性を秘めたソリューションとして進化を続けています。その戦略の先には、各企業が適切な形でデータを活用し、ユーザーに対して価値を提供していける未来が待ち受けているはずです。