アンダーワークスが毎年ウォッチし続けているマーケティングテクノロジー市場の2023年のハイライトは生成AIでした。登場から1年で多くのマーケティングツールに組み込みが進む生成AIですがコンテンツ制作を助けるライティングツールも多く登場しています。
 
本稿では、マーケティング・テクノロジー・マネジメント・プラットフォームであるCabinetMのCEOであるAnita Breaton氏がMarTechに寄稿した「AIライティングツールに関する考察」を前編・後編の2部構成でご紹介します。
 
執筆:Anita Brearton(CabinetM)翻訳構成:田口 裕(アンダーワークス株式会社)

人気のAIライティングツールとコンテンツ作成のために知っておくべきこと

私は日々たくさんの文章を書いています。2つの出版物に寄稿し、会社のマーケティング資料を書き、毎週顧客エンゲージメントをサポートするために数多くの文章を生み出しています。
 
私は天性の作家ではないし、書くことが好きなわけでもありません。文章を書くのは難しいし、白紙のページを前にすると気が重くなります。それにもかかわらず、書くことが私の仕事のかなりの部分を占めています。したがって、人工知能(AI)を使ってコンテンツを生成するというアイデアは非常に魅力的です。

AIが生成したコンテンツに懐疑的であるべきか?

現在、AIによるコンテンツ生成に対しては否定的な意見も多く見られます。技術の目新しさや、「パンドラの箱を開ける」という感覚を考慮すれば、そのような反応が起こるのは当然かもしれません。
 
主な懸念は以下の3つのカテゴリーに分類されます:
 
・コンテンツの過剰供給:AIが稚拙で意味のないコンテンツを過剰に生成し、見込み客や顧客が時間を無駄に消費してしまう可能性に対する懸念
・真正性の喪失:コミュニケーションにおける信憑性や誠実さが失われ、顧客とのつながりや関係が弱まるのではないかという懸念
・検索エンジンへの影響:AIが生成したコンテンツが検索エンジンのランキングに与える影響についての懸念
※現在、GoogleはAIが生成したコンテンツをスパムとみなし、ウェブマスター向けのガイドラインに違反しているとしています。
 
これらの懸念は理解できますが、私はそれらを克服できると考えています。
 
カスタマージャーニーマップを洗練させ、何が魅力的なコンテンツなのかを調査するために私たちが日頃頼りにしているアナリティクスによって「コンテンツの過剰供給」と「真正性の喪失」は調整することが可能です。
 
私たちが使用している分析ツールは急速に進化しており、現在では多くのツールが機械学習を活用して実践的な洞察と提案を提供しています。
 
「検索エンジンへの影響」で、GoogleがAIによって生成されたコンテンツをスパムとして扱うことについては、その内容が明らかにスパムに見えない限り、検索エンジンはAIによる生成かどうかを容易に判別できません。スパムに見えるコンテンツは非表示にすべきです。
 
生成方法に関係なく、質の高いコンテンツには価値があります。AIの能力が時間と共に進化するにつれ、Googleも適切な対応方法を見つけるでしょう。

AIライティングツールの4つの一般的な使用例

AIのコンテンツ生成能力は現在発展途上にあります。私たちはまだ、人間の手を借りずに完全な記事やブログを書くことができるアルゴリズムを持っているわけではありません。
 
現在、市場に出回っているAIコンテンツ生成ツールは、そのほとんどが「ライター」ではなく「ライティング・アシスタント」として位置づけられています。
 
大きな違いは、

・生産性と時間の節約
・キーワードの特定と使用によるSEOの改善
・文法分析による文章の質の向上
 
であり、AIが生成するコンテンツは、特定の状況下で価値があると考えています。
 

1: 白紙ページへの恐怖心を克服する

最近、私は「マーケティングテクノロジーとマーケティングの関係」についての記事を書き始めるのに苦労していました。そこで、試しにJasper.aiのトライアルに登録してみました。タイトルと記事の概要を1文で作成し、いくつかのキーワードを追加し、話し方のトーンを選択しました。
 
すると、Jasper.aiはすぐに、(少々冗長ではありましたが)まずまず上手く書かれた3つのパラグラフを提供してくれました。これらのパラグラフは、私の記事の良いスタートポイントとなりました。
 
最終的に、AIが生成した文章の中の1つをそのまま使用して残りは削除しましたが、AIが提示したアイデアを私の記事の構成に役立てることができました。全体として、これは非常に有益な経験でした。
 

2: テキストを洗練させる

チームメイトの一人が、メール作成にかかる時間を削減し、内容を向上させる方法を探して、Jasper.aiのトライアルを試してみましたが、その結果にとても満足していました。
 
彼女自身は優れたプロモーションライターですが、プロモーションライティングに苦労する人々にとって、コンテンツを改善し洗練するためのツールを持つことは大きな価値があります。このツールのおかげで、彼女はA/Bテストに使用する最適な素材を見つけることができました。
 

3: ひらめきとアウトライン

AIコンテンツツールは、書く内容は決まっているものの、どのトピックを扱うべきか迷っているときに、良いスタート地点となります。これらのツールは、記事や電子書籍の構成を計画するのに役立つ、推奨されるアウトラインを提供してくれます。
 

4: スローガン、ソーシャル投稿、経歴など

多くのツールは、ブログ投稿だけでなく、様々な種類のビジネスコミュニケーションにも対応しています。特に、広告のコピーを書いたり、ソーシャルメディア用の投稿を作成したりする際に、複数の異なるバージョンをテストする必要がある時には大変便利です。
 
また、個人的なコミュニケーションにも対応し、辞職の手紙、結婚の誓い、誕生日カード、履歴書のカバーレターなどのコンテンツを提供するツールも存在します。
 
一部では少し気味悪く感じられるかもしれませんが、こうしたコミュニケーションを困難に感じる人々にとっては有用なツールとなる可能性があります。
 


今回は、Anita Breaton氏がMarTechに寄稿した「AIライティングツールに関する考察」の前編として、AIが生成したコンテンツに対する懸念点やAIライティングツールの主な使い方について紹介しましたが、いかがだったでしょうか。後編では、今人気のAIライティングツールの紹介や、それぞれのツールを使った文章の言い換え・ブログの文章の生成について、実例を元に紹介していきます。
 
 

著者略歴

Anita Brearton / CabinetM CEO

Anita Breartonは、マーケティング・テクノロジー・マネジメント・プラットフォームであるCabinetMの創設者兼CEOです。長年のテクノロジーマーケターである彼女は、企業の設立からIPOや買収に至るまで、マーケティングチームを率いてきました。マーケティングチームのテクノロジースタックの構築と管理を支援するために書かれたワークブック「Attack Your Stack」と「Merge Your Stacks」の著者であり、CMS Wireの月刊コラムニストとして、マーケティングテクノロジーについて頻繁に講演しているほか、「50 Women You Need to Know in MarTech」の一人として認定されています。

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