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  • 【イベントレポート】マーケターはAIやテクノロジーの未来像に興味を…

 
2023年12月4日から10日の間、コンテンツマーケターのためのコミュニティイベント「CONTENT MARKETING DAY 2023」が開催されました。今回のテーマは「学び、育ち、つながり、新しい冒険をAIと。~AI時代のコンテンツマーケティング~」。アンダーワークスからは執行役員 マネージング・ディレクターの田口 裕が「マーケターが知るべきマーケティングテクノロジーとAIの親和性 ~新たなテクノロジー民主化による変化~」という講演を行いました。本稿ではその内容をお伝えします。
 

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CONTENT MARKETING DAY 2023とは

コンテンツマーケティングの考え方に共感し、実践ノウハウを学ぶコミュニティイベント「CONTENT MARKETING DAY」。今回は、AI時代のコンテンツマーケティングにスポットを当て、コンテンツマーケティングテクノロジー分野で活躍するプロフェッショナルたちが、AIの活用方法や実践ノウハウ、そしてAI時代の人間の役割などについて発表しました。

マネージング・ディレクターの田口 裕がトレンドを解説

今回、田口はマーケティングテクノロジー解説を担当し「マーケターが知るべきマーケティングテクノロジーと生成AIの親和性 ~新たなテクノロジー民主化による変化~」と題した講演を行いました。
 
生成AI技術とマーケティングテクノロジーの組み合わせは、デジタルマーケティングを変革する可能性を持っています。ChatGPTなどの技術は、従来のAIより使いやすく、非エンジニアのマーケターも日々の業務に活用できます。田口は、マーケティングテクノロジーと生成AIの相性についてのトレンドや実例を交えて紹介しました。下記より本編動画をご覧いただけます。
 

ChatGPTの普及〜AIの民主化がすすむ

AIの概念が登場した1950年代以降、技術の進歩と共に何度もAIブームは訪れています。機械学習や深層学習に続いて2022年11月のChatGPTの発表以来、大きな話題となっているのが生成AIです。これまでのAIブームとは異なる速度で認知され、急速に普及しています。
 
これまでインターネットやソーシャルメディアが普及してきましたが、なかでも利用のハードルが低いChatGPTは、2ヶ月で1億ユーザーを獲得するなど、ずば抜けて短い時間で普及しました。これは、「AIの民主化」の始まりと考えられています。
 

<現在は第4次AIブーム>

AIの民主化の概念については、スタンフォード大学のFei-Fei Lee博士が「参入の障壁を下げ、可能な限り多くの開発者、ユーザー、および企業に利用可能にすべき」と述べています。この考え方は、AI技術の進展における重要な思想です。

マーケティングで期待されるAI活用

AIが生まれたのは1950年代で、その後のコンピュータ技術の進展に伴い、ビジネス現場での実用化までには時間がかかりました。1990年代末には商用インターネットやワールドワイドウェブが登場し、2000年代中頃にはPaaSやIaaSといったクラウドコンピューティング技術やGPUなどの技術革新が進みました。これにより、技術の発達と実用化が急速に進んでいきました。
 

大規模言語モデル(LLM)の発展

2019年以降、AI分野では大規模言語モデル(LLM)が登場しました。これはChatGPTにも使用されており、人間の言葉で対話しながら高い精度のアウトプットを実現しています。この技術はエンジニアでなくても扱えるようになり、ユーザーインターフェースの革新と言えます。
 

マーケティング業務におけるAI利用

マーケティング分野では、分析から企画、制作、コミュニケーションに至るまで、AIの恩恵を幅広く受けられるようになっています。
 
米国のコンテンツマーケティング協会による調査によると、7割のマーケターがAIを利用していることがわかりました。なかでも、テキストによる対話から生成されるアウトプットが中心で、画像やオーディオ、ビデオといった非テキストのアウトプットはまだ限定的であるようです。
 

<マーケティングの様々な場面で利用されるAI>

生成AIはソフトウェア革命

生成AIは既に、自然言語のリクエストから必要なコードを生成することが可能です。将来的には、業務をパッケージに合わせる時代から脱却し、ビジネスに合わせて業務に必要なソフトウェアを「生成」する時代へと移行する可能性があります。
 
アメリカでのマーケティングテクノロジー業界が非常に有名なインフルエンサーであるScott Brinkerは「(生成AI)は私達とソフトウェアの関係性を変えるものかもしれない」と語っています。今まではソフトウェアにあわせて業務を実行していましたが、Brinker氏は、これからは何を達成したいかという問いかけにソフトウェアが自己最適化して物事を達成するかもしれないと考えています。

マーケティング業務におけるAIの利用例

生成AIはまだ新しい技術で、さまざまな分野での利用方法やベストプラクティスが試行錯誤されています。しかし、マーケティングテクノロジーとAI技術の融合や連携は既に進んでいます。AIは、既存のマーケティングテクノロジーに組み込まれ、効果的な戦略策定や実行を支援するブースターとしての役割を果たしています。
 

<AIは既存テクノロジーのブースターとして機能する>

現在、データ解析やコンテンツの自動生成、パーソナライゼーションなど、多くの分野でAIが活用されています。いくつかの具体例を紹介しましょう。
 

kumo

エンタープライズ向けデータ分析基盤の「kumo」では、ユーザーの行動データをAIが分析し、より効果的なマーケティング戦略を提案します。これまでは、売上や購買行動など、ユーザーがWeb上で行った行動のデータを多くの要素と共にインプットする必要があり、それは大変な作業でした。しかし、機械学習の深層学習などの技術を取り入れることで、これらのデータを簡単に扱い、AIが自ら学習し、ユーザーの行動を予測します。
 

Twilio

顧客エンゲージメントプラットフォーム「Twilio」では、AIを活用した顧客セグメント・配信テキスト作成が可能になっています。これにより、顧客一人ひとりにカスタマイズされたコミュニケーションを支援します。
 

Tableau

ビジネスデータをグラフ化や分析するためのツールである「Tableau」は、コパイロット機能により、自然言語での分析リクエストに応じて設定やグラフの提案を行うようになりました。その結果、従来の面倒な設定が不要になりました。
 

HelpFeel

生成AIはテキストデータから目的のアウトプットを生成する作業にも適しています。自己解決型の顧客サポートプラットフォームである「HelpFeel」では、FAQの生成や管理が行われ、顧客の問い合わせに対応するための情報を提供します。
 

Google Ads

「Google Ads」では、広告クリエイティブ作成のために、キャンペーン設定に応じてヘッドラインやディスクリプションをAIがサジェストしたり、配信画面にあうフォーマットにアセットを自動変換したり、複数の言語へ自動変化する機能が加えられています。
 

Weglot

AIを使って、ウェブサイトのコンテンツを国や地域の文化を配慮しながら翻訳できる「Welgot」は、SEOの観点からも有用と評価されています。

これからのマーケターに求められること

AIの進化に伴い、マーケティングテクノロジー分野ではAIとの融合が進んでいます。マーケターとして、AIを恐れるのではなく、その可能性を理解し、戦略的に活用することが求められています。2023年に開催されたデジタルマーケティングのイベントでのGoogleのキーノートでは「競争相手はAIではなく、AIを活用する他のマーケター」という言葉が示されました。ここでは、AIを駆使するマーケターに求められる力について考えてみましょう。
 

経験を磨き、新しい技術を取り入れる力

AIは、力仕事を補助するパワードスーツのように、人の業務を補完する役割を担っています。人間としては、直感や経験を磨いていく必要があります。AIと人が融合してくると、だんだん新しい職種みたいなものも出てくるのではないでしょうか。恐れる前に中身を眺めてみて、何に使えるかをポジティブに考えていくのも一つのアプローチです。
 

<AIが進化しても、人の知見と経験を踏まえた意思決定は重要>

AIの利用を目的とせず、計画を立てる力

企業においてAIの利用が目的化しているケースがありますが、本来の目的は顧客理解の深化や施策の品質向上、付加価値の増加、効率性の向上といったビジネスパフォーマンスの改善にあります。AIの単なる使用ではなく、ビジネスの問題点を明確に設定し、AIやマーケティングテクノロジー、人間の力をどう組み合わせるかを総合的に考える必要があります。また、AIを利用する際には、5W1H(誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように使うのか)の枠組みで事前にしっかりと計画を立てることが重要です。
 

問いかけ、対話をする力

自然言語での対話できる生成AIによって、人の対話能力も求められるようになりました。OpenAIのガイドラインにも、明確な指示の出し方やフィードバックの活用方法が示されており、これは人間同士のコミュニケーションにおいても同様に重要なことです。AIが登場したことにより「私たちが何を変えるべきか』ではなく、「AIという技術をより効果的に使うために何を磨くべきか」という考え方が非常に重要となります。
 

先を見通し、変化に適応する力

イノベーションが起きてから広く認知され、やがて普及するまでのプロセスについて示す「ハイプサイクル」という図があります。機械学習や深層学習などのAI技術はサイクルの後半に位置する普及期にある一方で、生成AIのマーケティング利用は現在サイクルの前半に位置し、期待のピークにあります。今後何が可能で/不可能かが明らかになるにつれ、一時的な幻滅期を経て普及期に向かうと予測されます。マーケターはこの変化を前向きに受け入れ、適応していくべきです。
 

<マーケティング分野における生成AIのハイプサイクル>

マーケティングテクノロジーをアップデートするためのテクノロジーカオスマップ

マーケターとしては、以上のような力を身につけ、生成AIをはじめとする様々なテクノロジーを知り、自社のマーケティングに採用できるかどうかを常に判断していく必要があります。アンダーワークスでは、日本国内のマーケティングテクノロジーを俯瞰的に集めてまとめた資料「マーケティングテクノロジーカオスマップJAPAN」の最新版を1月に公開予定です。
 
国内のマーケティングテクノロジーは、ここ数年で増加傾向にあり、ChatGPTをベースとした生成AI製品も増加しています。既存のマーケティングテクノロジーのベンダーも生成AIの付加機能を続々とリリースしており、2023年から2024年にかけては、AIをどのように組み込んでいくかを俯瞰的に見るのが良い時期となるでしょう。みなさんもぜひカオスマップを参考に考えてみてください。

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