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  • スマホ経営で最速意思決定、リアルタイムデータと迅速アクションの効果

 
ビジネス環境やマーケットの変化が激しい時代において、データ活用は、競争力を高め、ビジネスを加速するためのカギとなります。しかし、「データの多様性やサイロ化により活用に至っていない」「リアルタイムに把握ができずビジネス価値に結び付いていない」「データを扱える専門性の高い人材がいない」などの多くの課題を抱える企業も少なくありません。

2022年3月14日に開催された「データドリブン組織フォーラム」では、「スマホ経営で最速意思決定~リアルタイムデータと迅速アクションの効果~」をテーマに、KDDI株式会社シニアディレクター 西田圭一氏、アタラ合同会社CEO 杉原剛氏、アンダーワークス代表取締役社長 田島学が、各社の取り組みとともに、経営者がリアルタイムにビジネス状況を把握し、組織全体で必要なデータを共有して迅速にアクションを起こす方法を議論しました。レポートでは、当日のパネルディスカッションの様子をお届けします。

KDDI、アタラ、アンダーワークスが実現する「スマホ経営」

アタラCEO 杉原氏(以下、杉原):「スマホ経営」というキーワードについて、三社がどのように取り組み、何をもってスマホ経営と呼ぶかを紐解いていければと思います。アタラはデジタルマーケティングのコンサルティングサービスを提供しています。5年前に、企業のデータ活用の自走化をメニューに加えたタイミングで、クラウド型BIプラットフォーム「Domo(ドーモ)」に出会い、今日まで社内でも活用してきました。
 
アンダーワークス代表 田島(以下、田島):私たちもデジタルマーケティングのコンサルティングを行う中で、売り上げの予測をどう立てるか、受注したプロジェクトに誰をどうアサインするかがビジネスの肝になります。私も5年ほど前にDomoに出会い、データを集約できるプラットフォームとして、まずは自社で使い始めました。コンサルタント自身がプロジェクトの中で継続案件をもらってくるようなビジネスなので、営業未経験者も多い中で、CRMやSFAだけで数字をまとめようとすると難しい面もありました。
 

CRMやSFAではなくDOMOでアサイン管理

Domoで管理し始めてから、来月はどのくらい売り上げが上がるかなどを対去年、対目標で見ながら、毎週営業会議をしています。コンサルタントは一人ひとり違うスキルを持っているので、プロジェクトごとに誰をアサインするのか、稼働率やリソースを可視化して皆で確認できるようにしています。これが一番最初にDomoで取り組んだことで、今も成果になっているものです。
 
杉原:コンサルタントの工数をツールで可視化し、労働時間に気を付けて配分していくことは非常に重要ですよね。アタラは創業以来リモートワークを実践して、全国どこでも仕事ができるようにしてきました。それに応じていつでもデータにアクセスできるように、50種類以上のSaaSサービスを活用しています。まずはCRMとマーケティングデータを統合してDomoを使い始めてから、他のツールも接続してきました。

中でも一番気に入っているのは、スマホアプリで使えるところ。画像の右にあるのがスマホの使用画面ですが、データ変化のアラートが飛んできたらすぐにスマホで確認して、必要な指示を出せることがとても便利で、これによってスマホ経営ができていると思っています。
 

アタラのフルクラウド型システム構成図

KDDI シニアディレクター 西田氏(以下、西田):私は現在、コーポレート部門全体のDXを推進しています。同じく5年ほど前にDomoを知り、使ってみて「楽しい」という感覚を初めて業務用アプリで持ちました。若手にも使わせてみると、やはり楽しいと。大企業だと、縦割りの組織が多くある中で、まずはファクトデータを集計することに時間がかかります。Excelで集計してパワポに変換し、さらにレポーティングする際はメールに添付しても収まらない。非常にサイロ化した仕事の進め方になっていたんです。一方、Domoを使うと、伝えたい情報をそのまま相手に見せることができるので、シンプルなカード(可視化された集計データ)をとにかく作ることを目指していました。
  
Domoの機能は、下図の3つを重要視しています。Excelのリレーで仕事をしているケースでは、Domoにデータを入れると、誰がどのくらいのリソースで何をしているかのプロセスを組織横断で可視化できるようになります。トップの人は、業務進捗がどうなってるか、経理の人は決算のやりとりなどを見た瞬間に把握できます。無駄なコミュニケーションがなくなり、忙しい部署を手伝うことができたりする。あとはシンプルに、相手に伝える場面での影響力が大きいですよね。社長にも画面を見せましたが、社長室にいても情報は入ってこないので、スマホで情報収集できることはとても大事。こういったことを、シンプルにやり続けていくことが重要だと思っています。
 

DOMOを活用した新しいワークスタイルを提案(KDDI)

スマホ経営を導入した効果、良かった点、変化した点

田島:在宅勤務がメインの今、家にいるときのスマホの必要性を改めて考えてみました。コロナ前はオフィス以外での移動時間をスマホで有効活用するイメージが強かったですが、今は家にいるほうが、ますますスマホに依存していることに気がつきました。これは一昨日の実際のスケジュールですが、リモートワークだからこそ朝から夜まで会議が詰まり、隙間時間がなくなるんですよ。
  

在宅勤務時代のスマホ経営

次の会議が始まる30秒の間にトイレの中でスマホを見て情報を確認、なんてことも(笑)。データを可視化するという観点では、スマホでExcelやスプレッドシートをみながら仕事をしていると、見辛さもあってなかなか情報整理まではできません。Domoでは、片手で操作しながらグラフや表で可視化されたものを即座に見れるので、迅速に情報をキャッチして会議に移ることができます。
 
西田:一方で、Domoを使い始めても、すぐに”アクショナブル”になるかどうかは別でした。ツールを使うカルチャーもしっかりと作っていかないと、両輪で回っていかない実感を得ましたね。上手くいったチームは、Domoでプレゼンしても良いという心理的安全性がありますが、そうでないと、いかにDomoを映して会議をしてもExcelのときと同じことをやってしまっていたりする。ここが伸び代になると思っています。
 
杉原:ツールの利用を下支えするカルチャーと合わせてもうひとつ、「Single Source of Truth(信頼できる唯一の情報源)」という側面もDomoにはあります。下図では、左はデータを一元化する前を、右はできた後の状態を示しています。Excelは便利ですが、バージョン管理や改ざんされる場合もあるので、まずは信頼できるデータかの認識合わせで時間がかかってしまう。これが、データを一元化できると、データソースから良い情報も悪い情報もストレートに入ってくるので、嘘がつけないんですね。一層、透明性高くオープンに情報共有ができますよね。
 

Single Source of Truth

スマホ経営環境を構築してよかった点は、外出先でも1時間ごとに最新データが見れたり、変化があればアラートが飛ぶのですぐにアクションがとれること。各チームや個人が、会議でデータをもって語るようになったこと。個人的には、数字に強い経営者になれたんじゃないかなと思います(笑)ある程度の数字は見てきましたが、もっと深掘りしたいと思うようになりました。意思決定に必要なデータも、意外と知らないものがあることを含め、より多く知ることができました。あと、データが整理されたおかげで、コロナ禍のBCP(事業継続計画)に矢継ぎ早に対応できたこともあります。

各社の成功のコツと、これから取り組む方へのアドバイス

西田:やるべきこととやらないこと、どちらも大事ですよね。我々がこの3年間で集中して取り組んできたことは、大きく見ると3つのステップです。まず、Domoの使い始めで大きな感動がありましたが、その勢いだけでは使い続けられない。なので、いかにパワーユーザーを育てて自走していけるかを重要視しました。経営管理本部にDomo専門のプロジェクトチームをつくり、全ての事業部からニーズを拾い集めてサポートし、広げる体制も整えたんです。
  
この第一ステップで、この形で仕事をしていいという心理的安全をつくります。次のステップが難しくて、また元のスタイルに戻ろうとしたり、まずい情報を他の人に知られたくないということが非常に多いです。なので、最後はファクトのデータをしっかり皆で議論するスタンス、つまり「本音トーク」にいきつくかどうかです。単に、ExcelやパワポをDomoに置き換えただけで終わるのか、それともそのデータを利害関係者全員で見て議論し合える場をつくれるか。
  
後者であるには、まずは心理的安全をチームでつくらないといけません。面倒で地味ですが、これをしっかりやるかが、花が咲くかの分かれ目です。上手くいくと、事業部門の中でパワーユーザーが育っていって、自分たちでカードを作りはじめるんです。すると、シェアードの状態になる。ツールだとこんなことができる、ということだけで進めるのには限界があるので、誰が何のために使うのか、オーディエンスを中心にした利用シーンを普及させることが大事だと思います。
 

KDDIのDOMO導入のフロー

田島:すごく参考になります。企業の規模感は違えど、当初、私たちは”スプレッドシート禁止令”を出したんですよ。そうした使い始めはDomoが良く見えたけど、強制的にやっても広まらなかったんです。なので、まずはデータを作るなどは考えなくていい、見るだけでいいと。そしたら見る癖がついて、使われるようになっていきました。
 
杉原:私が考えるスマホ経営成功のTipsですが、まずやるべきことは、効果の大きいスモールスタート。そして「アクショナブル」であること、つまり意思決定やアクションにつながるデータかどうかの精査が重要です。あと、データはオープンに透明に、組織共通で使うビジュアリゼーションと自由につくれるものと、バランスをもって展開すると上手くいくと思います。現場のデータについては現場が一番詳しいので、権限移譲してあげて自由に使ってくださいとすると、かなり利用が広がりました。
 
データ設計でいうと、緻密な設計図を作ってから可視化するよりも、スパイラル型で実装し、とりあえず作ってから改変していくアプローチのほうが意思決定のアクションにつながります。やらないべきことは、むやみにダッシュボード化をしないこと。毎日見るべきものは何かを考えてデータを精査しています。また、Domoでデータをオープンにすればするほど、新しい見方を作ってくれるユーザーが増えていくので、信頼がすごく大事になります。社内の知見共有、社外研修、顧客案件で活用していくことも重要だと思います。
 

今後の取り組みや展望

田島:私たちのスマホ経営は、売上予測やアサイン率の可視化から始まり、今はマーケティングや会計データの可視化にまで進んでいます。たとえば、マーケティングでは、Webサイトのコンテンツがどのくらい見られているかをリアルタイムに追えるようにしています。コンテンツは、作った時よりも後でブームがきた時に一気に見られることが多いので、閲覧度合いを見て、コンテンツのブラッシュアップに繋げたりできます。
 
最近は会計データも入れ始めました。たとえば、旅費交通費はコロナ前から7分の1に減っていることがすぐにわかったので、バジェットを新たに作らなくてもここから賄える、などというのを察知しています。こういった動きを増やして、迅速な経営判断を一層できるようにしていきたいですね。
 
西田:今は、コーポレートにも多様なデータが集まってくる時代です。KDDIはスマホや通信を軸に今後の成長に取り組んでいきますが、その周辺分野、たとえば健康やエンタメ、スポーツなど、あらゆるスマホを通じた業界にもどんどんチャレンジするステージに入ります。その際には、攻めに対する”守りの部隊”も必要になります。その守りを担うのが我々コーポレートだと思いますが、この流れの中で、コーポレートも変化していくべきと考えています。
 
SaaS、クラウドでデータを一元化できるこのタイミングを捉え、シェアードサービスを新しい事業として作り、コーポレートとして、管理ではなく「サービス」を提供していこうとしています。まずは、グループの子会社の方々にサービス提供を予定していますが、各企業体において、彼らが一番つらいポイントをコーポレートでしっかり支えられるようなセンターを準備中です。そのテクノロジーのベースになるのが、杉原さんにもご紹介いただいた「フルクラウド」の仕組みで、経理、購買、秘書、総務、人事、広報、マーケティングなどを全てクラウドで固めてパッケージ化した上で、グループ会社に提供していく。そういったことに着手しています。
 

KDDIが目指すシェアードサービス(SSC)

今、DXは大きな企業体からスモールビジネスにマーケットが移っていますが、その流れと全く同じことをグループ内でやろうとしています。今後、経営者の視点を私自身も学んでいかないといけないし、コーポレートも仕事の仕方が変わってくると思います。たとえば、経理や財務にITの知見が加わり、痒いところまでダッシュボードで作ってくれるような人がいたら、きっと引く手数多ですよね。今後のコーポレート人材のキャリアのためにも、これを成功させたいと思っています。
 
杉原:既存のM&Aをしたような会社でも使えたり、今後新しい子会社ができたときには、この仕組みをゼロからつくれるので、わくわくしそうですね。アタラでは、社内展開でいうと、まずは意思決定につなげられる管理会計を拡充していきたいです。人事に関しても、基本的なものは取り組んでいますが、コロナ禍で直接メンバーと話せない中、ある程度測定ができるウェルビーイングなどをDomoに取り込み可視化していけたらと思います。また、複数のSaaSを使用する中で、それぞれがちゃんと稼働しているか、全社員分のライセンスがあるものについては使用できているかなどのモニタリングをしていきたいです。
 
外部に対しては、自社でやっているような管理会計をパッケージ化していきたいです。また、グループ会社管理や、今盛り上がっているEC、D2Cに絡むデータの一元化、あとは社内で保有するデータを外に販売したいニーズも多いと思いますが、Domoはそれができるプラットフォームでもあるので、そのお手伝いをする構想を持っています。
 
西田:人事領域は肝になりそうですね。組織、人、エンゲージメント、モチベーション……私もほとんどの時間をそこに費やしています。便利なツールもどんどん試していきたいですね。
 
田島:HR系のテクノロジーも次々と出てきていますが、一つを導入して終わり というよりも、各社のサービスを組み合わせながら一元管理できるようにする、というのはやっていきたいところですね。
 
杉原:ここまで、スマホ経営のテーマで議論を展開しました。少しでも取り組んでみると、いろんな感動が生まれ、そこから組織にも活用が広がっていくものと思いますので、ぜひ色々と試していってもらえればと思います。

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