アンダーワークスは、お客様がエンドユーザーによりよい顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)を提供できるよう、マーケティング戦略の立案からツールの導入、施策実行・運用まで包括的に支援を行っています。CDP (Customer Data Platform)の導入・運用支援もその1つです。今回は、電子部品メーカー様と製薬会社様、2つの企業様の導入事例を紹介していきます。それぞれのお客様にはどういった課題があり、CDPの導入によってどのように課題を解決したのでしょうか?
電子部品メーカーA社様の事例
A社様は国内最大手の電子部品メーカーで、世界各国に販売拠点をもちグローバルで活躍しています。アンダーワークスでは、古くからMA(マーケティングオートメーション)やSFA(営業支援システム)、CMS(顧客管理システム)などの選定や導入を支援してきました。A社様の拠点はリージョン(地域)別に分類され、EUやUSAの子会社がその運営を担っています。A社様が抱えていた課題は大きく2つ。「非効率なマーケティング」と「カスタマージャーニーを把握できていない」ことでした。
2つの課題
2つの課題に共通する要因は、いわゆる「データのサイロ化」です。それぞれのリージョンで収集したデータが統合・管理されておらず、マーケティング施策が非効率であり、正しく顧客理解ができない状態に陥っていたのです。
課題1 マーケティングやセールスの非効率
A社様は、各リージョンごとにでターゲットを定めています。それぞれのリージョンでは複数のチャネルから個人単位でのリード情報を取得しますが、データ統合がされていないため企業アカウントと結びついていません。つまり企業情報とコンタクト情報が紐付いていない状況です。このような状況では、それぞれのコンタクトに対してターゲットかどうかの判断ができず、すべてのリード顧客に対して等しくマーケティングコストをかけることになります。これが、マーケティングとセールスの非効率につながっていました。
課題2 カスタマージャーニーが把握できない
A社様には複数のデータソースが存在していましたが、それらを統合して一元管理するようなプラットフォームがありませんでした。同社のデジタルマーケティング部では、複数チャネルから取得する同一のコンタクト情報を統合し、時系列でカスタマージャーニーを把握することを目標としていましたが、データが分断されていたため、正しくカスタマージャーニーを把握することができていませんでした。
課題に対する解決策
上記のような2つの課題に対して、アンダーワークスでは複数チャネルから取得するデータを任意のキーで統合し、データマネージメントプラットフォームの構築を提案しました。具体的には、各種データをCDPに投入し、企業単位のユニークコードでデータの統合を行い、統合されたデータは正確性を保持するため、マーケティング担当者がクレンジングして管理するという工程を考えました。CDPの構築にあたっては、すでにAWS (Amazon Web Services)の環境があったためパッケージではなく、AWS環境でPOC的に着手することになりました。
CDP導入の成果
現在日本ではデータ統合が完了し、各リージョンでは構築が進行中です。各リージョンでは細かな部分でビジネスモデルが違っていたり、国ごとに商習慣が違ったりしているので、導入完了までにはもう少し時間がかかります。
また各リージョンでの導入完了後には、日本を含むワールドワイドでのデータ共有を検討しており、各国の法規制に準拠するためCMP(コンセントマネージメントプラットフォーム)の構築を別途進めています。CMPは、cookie利用同意だけではなく、個人情報取得や各種ポリシーに対して”いつ、どのポリシーに同意したのか?”を管理するプラットフォームです。各国の個人情報保護の規制は日々アップデートされており、規制が変わるとデータが使えなくなる(越境できなくなる)可能性もあり、グローバルでのデータマネージメントを進める上で、規制の変更には常に関心をもっておく必要があります。
A社様の場合、CDPという概念をとりいれることが自社のマーケティングや運用にあっているのかどうか試す意味でも、パッケージではなく、既存環境を使ったスクラッチ開発を選択し、効果検証を進めています。日本ではCDPの効果を実感しつつあり、今後の拡張やパッケージへのリプレースなども視野にいれています。
導入の苦労話とまとめ
今回のCDP導入では、ヘッドクォーターである日本と各リージョンには微妙な温度差がありました。日本ではCDP導入を契機としてABM(アカウント・ベースド・マーケティング)を実現したいと考えてる一方で、各リージョンでの優先順位は日本とは違いプロジェクトは遅延ぎみでした。
アンダーワークスのプロジェクトチームは、現場のモチベーションや優先度を上げるため、まず各国の担当に対して”“自分ごと化”をしてもらえるよう現場の課題ヒアリングや要望の吸い上げを細かく行いました。ヒアリングの結果がまとまり自社の課題が明確になると、お客様のチーム内でも解決へのモチベーションが上がっていきます。
またA社様ではリージョンごとにエンジニアが在籍している為、上流工程(要件定義〜設計)と実際の開発が分断されていたことも課題になりました。上流工程はアンダーワークスが行い、開発以降はお客様のチームが担当するのですが、どうしてもコントロールがし難くなってしまい開発が思ったように進みませんでした。
CDPを含むツールの導入は、当事者意識の醸成上流から開発までをシームレスに進めるプロジェクトチームづくりが成功の秘訣といえるでしょう。
製薬会社B社様の事例
B社様は、主に病院向けの薬を開発・販売している製薬会社です。アンダーワークスは同社の販促支援をミッションとした部署とお付き合いがあり、MR(Medical Representative:製薬会社の営業部門に属する営業職)の仕事を効率化するミッションを任されています。B社様では、コロナ禍でMRが医師と会えない時期を経験し、DXを推進することで「より顧客理解を深めたい」「営業の効率化を図りたい」と考えていました。
また薬事法の改正で、医師との面談が制限されるという製薬会社特有の事情もありました。この他にも同部門では重要顧客(病院や医師)の選定も行っており、海外のライフサイエンス業界に特化したAIプラットフォームの事例を参考に顧客情報の統合・活用を進めたいと考えていました。
B社様の課題
海外ではMRがどんどん減っているという実態があり、B社様には「日本もいずれそうなる」という危機感がありました。実際にB社様でもMRの数は年々減少しており、限られたMRでどの医師に優先的に会うべきなのか、統合データで効率的にわかるようにしたいという要望がありました。薬事法の改正を含め、さまざまな事情で医師とMRの接点が減っており、営業の効率化が必要になっていたのです。
課題に対する解決策
上記のような課題に対し、アンダーワークスではSalesforceの営業活動データやMarketo(マルケト:MAツール)のデータ、オウンドメディアのログなどのさまざまなデータをDomo(BI)を使って統合し、どの病院や医師に優先的にコンタクトすべきなのか、MRの行動を効率化することを提案しました。
CDPの導入
現在はDomoを使って統合したデータをDataRobotで機械学習にかけ、予測モデルを作るフェーズとなっています。B社様の製品(薬品)を処方したことがない医師をデータから洗い出し、どうやったら処方してもらえるか、薬品を使ってもらえるかを膨大なデータから分析していくのです。B社様では日々PDCAサイクルを回し、予測モデルの精度を上げている最中です。最終的にはこれらの結果を教師データとして学習させ、予測スコアからホットリードを検知しMRが集中的に営業活動を行うことを目指します。
これからのCDP活用
B社様では、すでに特定の製品で予測モデルを作成しています。今後は複数の製品で予測モデルを増やして行く必要がありますが、予測モデルの横展開は非常に難しく、チューニングを繰り返しながら精度を上げていく必要があります。また組織が変更されたり、MRが変わったりした場合に、逐次発生する修正がとても大変であることが今後の課題です。
マーケティング戦略の最適化にCDPは必須(まとめ)
顧客の行動や嗜好に基づいてターゲットを定め、マーケティング戦略を最適化するためには、さまざまなチャネルからの情報収集・活用が欠かせません。CDPは、企業が顧客情報を効率的に収集・統合・活用するための重要なプラットフォームです。
アンダーワークスでは、お客様の用途や目的に適したCDPの提案や、さまざまなCDPの選定や導入支援を行っています。自社に最適なCDPを見極め、導入時のサポートをお求めの事業者様は、ぜひアンダーワークスにご相談ください。