• HOME
  • メディアDMJ
  • おすすめのCMSってあるの?選び方と注意すべきポイントを解説

 
事業活動において重要なインフラであるCMS。企業にとってCMSの選定は非常に大きな経営判断といえます。一度CMSを導入すれば、中長期にわたって企業のデジタルマーケティングを支える主要システムとして機能し続けます。当然ながら「導入してみたら考えていたものと違った」となるのは避けなければなりません。
 
企業のCMS導入を支援するなかで「数あるCMSをどのように比較すればいいのかわからない」「どのようなプロセスを踏むのがいいのか」「おすすめのCMSがあれば教えてほしい」という要望を受けることがあります。そこで今回は、CMSの選び方とポイントについて説明していきます。
 

あわせて読みたい! 【CMS完全ガイド】CMSのメリットや種類、選定方法や運用方法など

知っておくべきCMS選定における大前提

CMSの選定を始める前に押さえておくべき前提があります。それは「CMSですべての課題に対応することは理論上可能だが、膨大なコストがかかる」ということです。当然のことのように思えるかもしれませんが、実はCMS導入プロセスで陥りがちなテーマなのです。CMSの選定作業では、実装したい機能の優先順位と費用対効果の視点をもちながら、「必要なものは何か」を決めることが最重要といっても過言ではないのです。

CMSによって得意分野は異なる

CMSの選定において大きな要素となるのが、構築しようとするWebサイトの用途です。用途によって求められる機能や性能は大きく異なり、用途別に費用対効果の高いCMSは違ってきます。ここではWebサイトの用途を大きく4種類に分けて、それぞれで求められる機能や特徴を紹介します。
 

コーポレートサイト

コーポレートサイトは、一般的に静的CMSで構築されることが多いWebサイトです。ユーザーの属性に応じて表示させるコンテンツを変えたりする、動的な機能はあまり求められません。それよりも、セキュリティの高さや安定した稼働、ニュースリリースなどタイムリーな情報発信を着実に行うための進捗管理機能などが重視されます。
 
また、バックエンド側の操作性や視認性の良さも選定に影響を与えます。これは、公開されるコンテンツの制作を、広報担当者やマーケティング担当者といった専門的スキルがない社員が担うことが多いためです。
 

ブログ・オウンドメディア

ブログやコラムをはじめとするオウンドメディアでは、読者にとっての操作性や検索性の良さ、テンプレートが重視される傾向があります。SEOの観点で必要となるサイトマップ構築や見出し、タグ付け、内部リンクといった基本的な機能だけでなく、近年はさまざまな機能が注目されるようになってきました。
 
たとえば、バックエンド側の機能です。事前に設定したレギュレーションとの照合・チェック機能や進捗管理機能などが挙げられます。これはコンテンツ制作の外部委託が増えたことが理由として挙げられます。また、海外ユーザーの獲得を目指すような大規模メディアの場合は、多言語対応のCMSを選ぶケースもあります。
 

ECサイト

ECサイトに求められる基本的な要件は、商品閲覧から決済までの一通りの流れをシームレスに実行することです。ECサイトの規模にもよりますが、多くの商品を登録する場合にサーバー負荷が大きくなり、応答性が下がることがあります。規模が大きい事業者の場合は、大量アクセスにも耐えて問題なく決済ができる安定性が求められます。また、ECサイトの管理はITリテラシーが低い人でも行えることが求められるため、扱いやすいバックエンド側のインターフェースも重要となります。
 
さらに、現在はPOSシステムによる在庫管理が当たり前になっています。店頭販売とECサイト販売で在庫管理を連動させる機能や、決済代行、運送会社への発注、アンバサダーへの報酬機能など、APIによる外部連携機能も標準的に使われるようになってきています。
 

会員サイト

会員サイトとは、一般公開されていない会員限定のクローズドなサイトです。会員の個人情報や興味・関心に関わる情報を保持し、会員個別に最適化(パーソナライズ)された内容を表示します。たとえば、就活サイトや動画配信サイト、宿泊予約・交通機関予約サイトなどが挙げられます。先に紹介したECサイトも会員サイトの1つです。
 
会員サイトは、ECサイトに求められる機能に加えて、パーソナライズされたコンテンツを表示する機能が求められます。以前は、会員におすすめする情報は任意に選ばれるか、すべてのユーザーに同一内容が表示されていました。しかし現在は、属性や行動履歴に基づいてレコメンドされます。さらに、CRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援システム)との連携、メールマガジンによる販売促進、ABテストなどのデジタルマーケティングツールと連携するサイトが増えてきています。

CMS選定の進め方

CMSを選定する際に重要となるのはRFP(Request For Proposal:提案依頼書)です。CMSベンダーに開示されるこの資料には、自社が求める機能や仕様についての情報が凝縮されており、ベンダーはRFPに基づいて提案・見積もりを行います。
 
「ベンダーからの提案内容が良くない」「実際に導入してみたら自社に合っておらず、ベンダーに責任があると思う」という声をよく聞きますが、大抵の場合、原因は企業側がRFPに対して重要性を十分に認識していないため、未熟な内容のままベンダーに開示してしまう点にあります。ここでは、失敗しないRFP作成の流れを説明します。
 

1. 導入目的とゴールの明確化

Webサイトの導入目的とゴール設定は非常に重要です。「同じ会社の人間、同じ部署の人間であれば、わかっているだろう」と決めつけて導入目的の確認を怠ると、後々認識のずれによる混乱が生じてしまいます。その結果、ベンダーに一貫性のない要求を行うことになり、納期遅れや費用の増大を引き起こす恐れがあるのです。
 
ポイントは、ゴールについて具体的な数字で議論することです。目標としての数値が大切なことはもちろんですが、関係者それぞれのゴールのイメージを数値化することで、認識のずれが生じにくくなります。
 

2. 現状把握

導入目的やゴールに対して、自社の現状を整理します。CMS導入の担当部門の視点だけでなく、さまざまな角度から検討することが重要です。たとえば、ユーザー視点、従業員視点、データからの定量的視点、競合他社との比較などが挙げられます。必要に応じて関係部署にヒアリングをしたり、調査会社に依頼して、客観的な評価を集めたりすることも選択肢の1つです。こういった取り組みを通して、ゴールと現状のギャップが明確になります。
 

3. 課題の整理

ゴールと現状のギャップが明確になったら、それを埋めるための課題を整理していきます。課題はデザインなのか、コンテンツなのか、もしくは機能・インフラなのか、といった視点で議論していきます。
 
ここではじめて、CMSに求める要件の議論が行われますが、重要なのは冒頭で紹介した「CMSですべての課題に対応することは理論上可能だが、膨大なコストがかかる」という前提です。誤解されがちですが、CMSは万能ではありません。そして得意・不得意な分野があります。それを理解した上で、CMSで解決できる課題と、解決できない課題に分けていきます。
 

4. RPFの作成

ここまで議論してきた課題とCMSに求めることをRFPとしてまとめます。RFPの作成にあたっては、ベンダーを比較する評価軸としての視点をもちましょう。コンペでベンダーごとの提案内容がバラバラだと評価軸が定まらず、提案する側も選ぶ側も比較に苦労することになります。
 
ここまで議論してきた目的、ゴール、現状、ギャップを埋めるための課題、そしてCMSに求める要件を具体的に記載すれば、各ベンダーから、具体的でイメージのできる、かつ自社に合った優れた提案を引き出すことにつながるはずです。
 

5. ベンダーからの提案検討・選定

RFPをベンダーに提供し、提案を受けます。提案内容の評価については、選定作業や経営層からの決済をスムーズに得るために、事前に評価項目と配点を決めておく評価形式をおすすめします。事前に評価項目や配点について経営層の承諾を得ておけば、審査時に社内で混乱することはありません。
 
評価項目には、CMSの機能に関する項目だけでなく、サポート体制、金額、デザインやサイト構成など、RFPと整合する形でさまざまな視点を盛り込みます。評価項目と配点は、ベンダーに開示する場合と開示しない場合があり、いずれにしても自社の考え方に基づいて判断することになります。

まとめ

ここまで、自社に合ったCMSを選ぶための考え方やプロセスについて紹介してきました。CMSに「おすすめ」というものはありません。どれだけ有名で高機能なCMSであっても、自社に合わなければ価値は半減します。逆にマイナーなCMSだとしても、自社が求める要件に最も適合しており、満足して長く利用できるのであれば、そのCMSこそが正解です。CMSの選定をこれから始めるという方は、あらためて自社の課題や求めることをより深く掘り下げてみてはいかがでしょうか。
 

あわせて読みたい! CMSの進化を目指すベンダーの挑戦 | 連載企画

関連記事

デジタルマーケティングジャーナル 一覧