• HOME
  • メディアDMJ
  • ヘッドレスCMSとは?導入するメリットと代表的ツールを紹介

  
従来、ユーザーとWebの接点はパソコンのみでしたが、近年では様々なデバイスでのWeb接続が可能となり、マルチデバイス化が急速に進んでいます。スマートフォンは爆発的に広がり、日本での普及率は2015年時点で70%を超えるまでになりました(*1)。タブレット、ネット対応テレビ、ゲーム機、メガネなど、今後もマルチデバイス化の流れは止まらないと考えられます。
 
一方で2010年、Googleの検索順位を決めるアルゴリズムにページの表示速度が組み込まれ(*2)、2018年にはモバイルファーストインデックス(スマートフォンのインデックスを優先して評価する方向性)が発表されました(*3)。マルチデバイスへの対応とユーザビリティの両立が求められる時代となっているのです。
 
更に、サードパーティのCookieに対する規制が始まり、企業が自社サイトのオウンドコンテンツで独自に収集するファーストパーティのCookieの重要性が増していきます。つまり、マルチデバイス、ユーザビリティ、そしてオウンドコンテンツ強化が今後のデジタルマーケティングにおける大きなトレンドになると予想されます。そのような流れの中で注目されているのが、ヘッドレスCMSなのです。
 

あわせて読みたい! 【CMS完全ガイド】CMSのメリットや種類、選定方法や運用方法など

 
*1:令和4年 情報通信に関する現状報告の概要, 総務省https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/html/nd238110.html
*2:Using site speed in web search ranking, Google Search Central
https://developers.google.com/search/blog/2010/04/using-site-speed-in-web-search-ranking
*3:Rolling out mobile-first indexing, Google Search Centra
https://developers.google.com/search/blog/2018/03/rolling-out-mobile-first-indexing?hl=ja

ヘッドレスCMSとは

ヘッドレスCMSとは、コンテンツ管理に特化したバックエンド機能のみで構成されるCMSのことです。従来のCMSはバックエンドとフロントエンドがCMS内で連携しています。表示先の端末がある程度決まっている場合は従来型で十分に機能していましたが、マルチデバイス化が進む中で、その方法では限界が出始めているのです。
 
デバイスごとにUX(User Experience:コンテンツに触れることでユーザーが抱く感情)に差があるとユーザーの離脱を招くリスクが高まります。そこでデバイスごとにフロントエンドを開発する必要が出てきますが、従来型のCMSではバックエンド側と密接につながっているため、技術的調整が必定になり開発の妨げとなっています。
 
そのような背景で生まれたのが、ヘッドレスCMSです。「ヘッドレス」とは「フロントエンドがない」という意味です。バックエンド機能のみを残して、デバイスに応じたフロントエンドの開発はCMSの外で行われます。

従来のCMSと比較したヘッドレスのメリット

従来のCMSと比較することで、ヘッドレスCMSのメリットが理解しやすくなります。4つのメリットについて紹介します。
 

マルチデバイス対応しやすい

従来のCMSでは、フロントエンドで対応できるデバイスがある程度決められており、新しく出てきたデバイスへの対応には柔軟性を欠いていました。ヘッドレスCMSはフロントエンド機能を切り離してバックエンド機能のみにしています。そしてAPI連携により、個別に開発されたフロントエンドにコンテンツを送り表示させます。こうすることで、採用しているCMSでは限界があったマルチデバイス対応が容易になったのです。
 

UX向上によりSEOに有利に働く

動的CMSの場合、従来のCMSはコンテンツのデータファイルと閲覧用の動的ファイルをやりとりする工程があり、表示スピードに遅れが出ることがありました。ヘッドレスCMSの場合は、APIの通信に集約され、フロントエンド側との通信量が圧縮されるため即応性が高まり、UXにプラスに働きます。また、通信環境が不安定になりがちなスマートフォンやウェアラブル端末のような場合でも、比較的スピーディな通信がしやすくなるといわれています。こうしたUXの向上がSEOでプラスに有利に働きます。
 

フロントエンドの自由度が高まる

従来のCMSでは、フロントエンドとバックエンドのどちらかを変更しようとすると両方に影響が及ぶため、差し障りのない範囲内でしか開発ができませんでした。ヘッドレスCMSの導入で分離されたことにより、バックエンドとのAPI連携に準拠さえすれば、自由度が高くフロントエンドを開発できるようになります。
 

開発の効率化

従来のCMSでフロントエンドを開発する場合、バックエンドとの整合性を確認しながら進める必要がありました。システム内連携はベンダーによりブラックボックス化されていることが多いため、CMSを導入したベンダーに開発を委託し、ベンダーのスケジュールに大きく左右される状況が多々ありました。フロントエンドが分離されることで開発効率が高まり、より早い対応が可能になります。

ヘッドレスCMSのデメリット

ヘッドレスCMSは現在進行形で開発が進んでいる分野であり、デメリットの部分の改善も進んでいます。ここでは、現在よく指摘されているデメリットについて説明します。
 

マーケティング担当者による確認がしづらくなる

フロントエンドが分離され自由度が増すことで、外部のデベロッパーに開発をまるごと任せられるようになります。しかしその反面、企業全体のブランディングを統括するマーケティング部門は状況を把握しづらくなり、「納品されてみたらブランディング方針と乖離するフロントエンドだった」ということが発生する可能性があります。つまりマーケティング戦略との分断が起こりえるのです。効率的で自由度の高い開発を維持しつつも、ガバナンス維持については注意が必要です。
 

リアルタイムなパーソナライズに遅れが生じる

従来は、CMS内でフロントエンドとバックエンド間でユーザー情報が連携されていたため、リアルタイムなパーソナライズが可能でした。しかしそれが別システムとして分離されることで、ユーザーデータの受け渡しにタイムラグが生じ、パーソナライズに遅れが生じる可能性があります。これはデジタルマーケティングにおいて大きな損失になりえます。

ヘッドレスに対応した主要CMSツール

ヘッドレスCMSには大きなメリットがある一方で、見逃せないデメリットも存在しています。そうした問題を解決すべく、主要なCMSベンダーの多くは従来型とヘッドレスの「ハイブリッド型」を採用していることが多いです。ハイブリッド型は、API連携により外部のフロンエンドにコンテンツファイルを送信する機能を設けると同時に、これまで通り指定したデバイスで表示するフロントエンド機能をシステム内に保持しています。ここではヘッドレスに対応している主要なCMSツールを紹介していきます。
 

AEM(Adobe Experience Manager)

クリエイティブやコンテンツ管理などに強みをもつCMSです。オプションとしてヘッドレス機能が提供されています。従来型とヘッドレスの両方を同時に行うハイブリッド運用が可能です。
 
【取材記事】アドビが見据えるCMSの未来像—-データとコンテンツの融合(前編)
 

Sitecore

世界的に豊富な実績をもつCMSです。ヘッドレスのデベロッパーコミュニティを早い段階から作り、開発に取り組んできています。こちらも従来のCMSによるパーソナライズと分析機能を維持しながら、ヘッドレスも実現するハイブリッド型です。
 
【取材記事】コンポーザブルDXPの思想から進化を遂げたSitecoreのCMS(前編)
 

HeartCore

国産で国内No.1*の実績をもつCMSです。ヘッドレスCMSを標準搭載しています。従来のCMS機能を維持しながらも、対応していない端末へのヘッドレスによるコンテンツ配信が可能です。
 
*出典:富士キメラ総研発刊「ソフトウェアビジネス新市場」アプリケーション/CMSパッケージのカテゴリ:国内金額ベース
 
【取材記事】7年連続国内ナンバーワンの実績を誇るHeartCore CMSの強み(前編)
 

Acquia

Drupalのパッケージングサービスです。開発者向けにヘッドレスCMS開発ツールを提供しており、50%近い開発作業の効率化を実現しています。
 
【取材記事】高いセキュリティで世界から高い信頼を得るアクイア(Acquia)製品群の魅力とは(前編)
 

OpenTextTM TeamSite

世界的なCMSの老舗です。オプションサービスであるOpenTextTM LiveSiteには、WebサイトのテンプレートからのAPI呼び出しと、それに対してコンテンツを提供する2つの機能があります。コンテンツ提供する機能はヘッドレスCMSとしての役割も果たします。
 
【取材記事】OpenText™ TeamSiteが長く愛される理由――今こそ問われるCMSの基本的価値とは(前編)

まとめ

将来的なデジタルマーケティング業界の変革に対応する、高い潜在力があるヘッドレスCMS。欠点や、現時点で未確定な部分が多いですが、ヘッドレスが今後普及していくのは間違いないと思われます。自社のマーケティング戦略に照らし合わせながら、導入可否を検討してみてはいかがでしょうか。
 

あわせて読みたい! CMSの進化を目指すベンダーの挑戦 | 連載企画

関連記事

デジタルマーケティングジャーナル 一覧