テクノロジーの進化とユーザーニーズの変化に応じ、挑戦するCMSベンダーの姿を追う連載企画「CMSの進化を目指すベンダーの挑戦」。今回話を聞いたのは、金融業界をはじめさまざまな業界の国内企業に独自のCMSプロダクトである「HeartCore CMS」を届け、国内ナンバーワンの実績を守り続けるハートコア社です。CMSから領域を拡げ、グローバル展開にも挑戦するハートコア社の今と製品の強みについてお聞きしました。
話:ハートコア株式会社
CX本部 CX営業部 芝 広 氏
CX本部 CX戦略部 間宮 淳一 氏
売上シェア国内ナンバーワンの実績を誇るハートコアCMS
――ハートコア社について教えてください。
ハートコアは2009年設立のCMSベンダーです。東京本社とサポートセンターである沖縄支社が拠点で、2022年現在は従業員44名という体制で運営しています。代表取締役社長 神野(純孝)はアメリカ在住で、現地のデジタルマーケティングテクノロジーやDXといった領域で新たに会社を立ち上げ、そちらも事業展開が進んでいます。2022年2月に日本で3例目のNasdaq証券取引所への上場を果たし、資金調達にも成功しました。こうした展開の礎には、HeartCore CMSを主軸とした事業成長があったと考えています。
神野は以前から上場に対して熱い想いを抱いていて、日米を比較するとアメリカのほうが短期上場の実現可能性が高いこと、大規模な資金調達が可能であることなどを加味し、Nasdaqを選択しました。
――事業の全体像はどのようなものでしょうか。
私たちハートコアはCX(カスタマーエクスペリエンス)事業とDX(デジタルトランスフォーメーション)事業の2つの柱で事業を展開しています。今回お話するHeartCore CMSはCX事業にて提供されているもので、CMSのほか、他社との連携を通じたデータベースのサブスクリプション販売なども行っています。一方のDX事業では、企業の業務改善につながるコンサルティングやソリューションを提供しています。たとえば、業務自動化のためのRPAなどを扱っています。
――HeartCore CMSの概要を教えてください。
HeartCore CMSの、パッケージCMSとしての売上シェアは7年連続国内ナンバーワン(富士キメラ総研発刊「ソフトウェアビジネス新市場」アプリケーション/CMSパッケージのカテゴリ:国内金額ベース)を達成しており、これまでに650社の導入実績があります。ご愛用いただいている企業の業態は幅広く、製造業をはじめ流通、小売、金融、公共関係などがその一例です。その中でも特に多いのは、金融業界でのご利用です。金融業界では国内発CMSにこだわるお客様が多いことが、現在の実績につながったと考えられます。
国内産の強みを活かし、“CMSに必要な機能”を全て標準搭載
――HeartCore CMSの強みや特徴はどのようなところにありますか。
強みは3つあります。1つ目は使いやすい管理・編集機能です。ブラウザで表示されるレイアウトのまま感覚的に操作できるWYSIWYGエディターを用いて効率的にWebページを制作できます。コンテンツビルダー機能も搭載していて、部品をドラッグすることで画像の差し替えや記事入稿の作業を簡易化できるのも特徴です。ここにオリジナル部品を登録すれば、自社のページに合わせて最適化されたコンテンツ制作が可能です。
また、進行管理面においてもワークフローを柔軟に設定できます。担当者や承認段階などを自社のチームや進行管理方法に合わせて設定できるため、誤った記事公開や削除などのヒューマンエラーを未然に防ぐことに長けています。
2つ目の強みは、ヘッドレスCMS機能を標準搭載していることです。スマートフォンのネイティブアプリや外部システムからREST APIを通じてコンテンツを呼び出すことができるので、オムニチャネルの配信ハブとなる機能を備えていると言えます。
そして強みの3つ目が、@関数です。@関数を用いれば、1行書くだけで動的機能を実装できます。これに加えてエクステンション機能があり、パンくずリストの出力や月次カレンダーの出力など、独自実装した処理の呼び出しも可能です。また、問い合わせフォームやログインフォームなどに活用できる標準プログラムも幅広く用意しています。これらを組み合わせることで、各種機能をローコードで実装できます。
これらの強みを総じて、「CMSに必要なすべての機能を備えたCMS」である、とお伝えしたいです。
――金融業界のお客様が多いと聞きましたが、金融系のページは静的コンテンツを好む印象があります。動的なCMSであるハートコアが好まれる理由はありますか。
実は、静的なページは改ざんのリスクが高いというデメリットがありますので、セキュリティの面では動的なCMSのほうが強いです。静的なコンテンツはサーバーに設置されますので、外部からの攻撃で書き換えられてしまうリスクがあります。HeartCore CMSではコンテンツの情報はデータベースにありますので、書き換えが難しいです。もちろん、SQLインジェクション対策などは行っています。
先ほどの強みの中にはあえて挙げませんでしたが、セキュリティの高さ大量アクセスへの対応力などもハートコアのCMSは備えているのです。
大量アクセスへの対応として、CDN(コンテンツ配信ネットワーク)の利用がありますが、動的なCMSですと、CDNが利用できないという懸念があると思います。しかし、HeartCore CMSはCDNを利用して大量アクセスを処理することができます。
市場競争に打ち勝つポイントは、ユーザーの声を活かした機能改善と幅広いパートナーとの連携
――機能面以外の部分で、HeartCore CMSが国内シェアナンバーワンの実績を誇るほど多くのお客様にご利用いただいている理由はありますか。
いくつかの要因が考えられますが、国内ベンダーとしてお客様のご要望をできる限りヒアリングし、柔軟に標準機能に取り込んできたことが第一に挙げられるポイントです。それに加え、価格帯もできる限りハードルを下げるよう心がけています。競合と比べ、ライセンス費用を極力下げていることが競争力という点では大きな武器になっているのでしょう。
――パートナー企業も多くいらっしゃると聞いています。
はい、パートナーの多さはハートコアの歴史からは外せないポイントです。パートナー第一号となったTISをはじめ、日立情報システムズ、NECやCTC(伊藤忠テクノソリューションズ)、制作会社としてはトライベックなど、多岐にわたるパートナー企業の存在があることは、ハートコアの事業成長に多大なる影響を与えてきたと思います。現在、登録ベースでは70社を超えるネットワークがあり、うち30~40社が現在進行形で商談が進んでいるアクティブなパートナー企業という状況です。
国内ナンバーワンの実績を守り続けるハートコア。その実績の背景には、国内ベンダーというポジションを活かした機能の充実と営業戦略、そして強力なパートナー企業の存在がありました。インタビュー後編では ハートコア社のグロバールネットワークの現状をはじめ、そこから描く将来展望などをお伝えします。