テクノロジーの進化とユーザーニーズの変化に伴い、大きな転換期を迎えているCMS。その渦中で、CMSベンダーはどのような戦略に基づき、どんな製品群を展開しているのでしょうか。連載企画「CMSの進化を目指すベンダーの挑戦」では、その最先端について、各ベンダー担当者へのインタビューを行います。本記事では、CMSの老舗として国内外で多くの導入実績を誇るOpenTextTM TeamSiteのベンダーであるOpenText社の小口氏にお話を聞きました。
(話:オープンテキスト株式会社 ソリューションコンサルティング本部 小口 貴史 氏)
コンテンツ制作の外部委託と内製化を両立する柔軟性
――はじめにOpenText社の会社紹介をお願いします。
OpenTextは1991年にカナダのウォータールーで創業しました。日本法人は1997年に設立されました。皆様にご利用いただいている「OpenTextTM TeamSite」は1997年にリリースしています。DAMやCDPとの連携など、機能を拡張させながら国内外で多くの企業様にご利用いただいています。
日本に上陸してから20年以上が経ちます。ファンケル様、NEC様、コニカミノルタ様、サントリー様、セイコーエプソン様、ニコン様、みずほフィナンシャルグループ様、ヤマハ発動機様、楽天様、といった幅広い業種でご利用いただいています。
――OpenTextTM TeamSiteの優位性について教えてください。
OpenTextではコーポレートメッセージとして、EIM(Enterprise Information Management:企業情報管理)の重要性を訴えてきました。
企業が保持しているデータの8~9割は「非構造化データ」だといわれています。非構造化データとは、契約書やドキュメント、画像や動画などのデジタル素材、Webコンテンツといった散在しているファイルのことです。逆に構造化データは、データベースなどで管理される、行と列で構造化された数字から成るデータです。OpenTextは、構造化データだけでなく、Webコンテンツやデジタルアセットなどの非構造化データの管理まで、企業が扱うあらゆる情報の管理を得意としている会社になります。
OpenTextTM TeamSiteの優位性という面では、主に次の3つの特徴について、多くのお客様から評価をいただいています。
① コンテンツ制作の過程で外部委託と内製化を同時に進められる柔軟性
② マルチサイトの一元管理が可能
③ サイト全体のバージョン管理が可能
とくに、コンテンツ制作の過程で外部委託と内製化を同時に進められる柔軟性は高い評価をいただいています。外部で制作されたコンテンツをコピーするような形でCMS内に取り込める機能は、他のCMSにはないOpenTextTM TeamSite独自の機能で、多くのお客様からご好評をいただいてきました。それと並んで、テンプレートを自作できる機能により、コンテンツの内製化も促進してきました。多くの企業様では、サイトの規模や目的により、運用に携わるリソースや掛けられる費用が異なり、コンテンツの制作方法はさまざまだと思います。このような状況で、サイトに合わせて外部委託と内製を併用でき、その比率はいつでも変更できることが特徴です。
このようにコンテンツ制作に自由度と柔軟性をもたせながら、マルチサイト管理やバージョン管理など、ガバナンスを効かせられる点は大きな特徴です。これらの特徴を評価いただいているためか、他社様のCMSを導入しているお客様であっても、OpenTextTM TeamSiteとの組み合わせを希望されるケースが多いと感じています。
「運用のしやすさ」を重視した機能ラインナップが実現するガバナンス
――SuitesかBest-of-Breedかという議論があるなかで、OpenTextTM TeamSiteはBest-of-Breedの中心的な位置にあるCMSというイメージがあります。
おっしゃるように、お客様が適材適所でうまくご使用いただいている例は多くあります。たとえばOpenTextTM TeamSiteの静的CMSとしての部分を使いつつ、必要に応じて他のCMSで動的な部分に対応されている例もあります。また、デジタルマーケティングを実施していくなかで、MAに特化したツールとの併用なども可能です。お客様の言葉を借りる形になりますが「懐の深いCMS」という評価をいただいています。
ちなみにOpenTextTM TeamSiteは、1つのCMSで静的・動的のどちらにも対応できる点も強みです。これまで静的CMSとしてご利用いただいていたところから、OpenTextTM LiveSite等を使って、動的CMSにも適応していくお客様も多いです。
たとえば、複数のサイトを一社で管理している場合です。ブランドや部門ごとに収益性が違っていて、かけられるコストやコンテンツの制作プロセスにバラつきがある場合があります。それなのに1つの動的CMSで一律に運用しようとすると、コストもかかる上に、運用上うまくかみ合わなくなることが多いです。静的・動的のハイブリッドにより、運用に応じて柔軟に対応しながらガバナンスを高いレベルで保てる点は、OpenTextTM TeamSiteの特徴だと考えています。
――運用面での特徴も教えていただきたいです。
運用面で柔軟性を実現する機能はさまざまなものを実装していますが、主要な5つを紹介します。
1つ目は、外部制作物をそのままコピーするように取り込める機能です。HTMLによる納品にも対応できるなど、CMSの機能に縛られずに外部の制作委託先と連携できます。
2つ目は、視覚的に判断しやすいテンプレートで、見たまま編集できる機能です。HTMLが分からない人でも制作を始められます。とくにニュースリリースやIR情報のように速やかな公開が求められる場面で必要とされます。
3つ目は、ワークフローの設定機能です。会社として全部門に共通したビジネスプロセスを設定することもできますし、部門ごとに違うプロセスも個別に設定できるパワフルな機能を用意しています。
4つ目は、サイト全体のバージョン管理機能です。過去のサイトのバージョンだけでなく、サイト全体におけるリンク間の履歴も管理できるというものです。サイト全体のスナップショットを取るような感覚で管理できます。これもOpenTextTM TeamSiteにしかない機能で、金融機関様をはじめ、厳密な情報公開が求められるたくさんの企業様から高く評価をいただいている機能です。
5つ目は、先ほども触れた複数のサイトを一括管理できる機能です。コーポレートサイト、ブランドサイト、採用サイトなど、目的別にサイトを立ち上げていく昨今の流れに対応できます。静的・動的の両方に対応しているハイブリッド型であることや、テンプレートの設定機能がこうした運用上の柔軟性を支えています。
インタビューの後編では、OpenTextTM TeamSite以外のソリューションによる相乗効果と、最新トレンドを反映しながら運用における柔軟性を実現する機能拡張方針を伝えます。