• HOME
  • メディアDMJ
  • アドビが見据えるCMSの未来像——データとコンテンツの融合【後編】

 
テクノロジーの進化とユーザーニーズの変容の渦中にあるCMSベンダーに迫る、連載企画「CMSの進化を目指すベンダーの挑戦」。その第二弾として、アドビのCMS製品を構成するテクノロジーや活用事例について、前・後編に分けてお届けします。後編である本記事ではアドビが目指す顧客体験のあり方について、さらに深掘りしていきます。
 
(話:アドビ株式会社 デジタルエクスペリエンス事業本部 パートナーセールス シニアマネージャー 今井 徹氏)

3D技術を活用したリッチメディアによる顧客体験

——BtoCだけでなくBtoB企業での導入実績も増えているのですか?
 
現状、全体としてBtoCのお客様がやや多いものの、とくにここ数年はBtoBのお客様との取引が増えています。たとえば、光学製品や計測・解析装置などを開発・製造されている浜松ホトニクス株式会社様は、BtoBのお客様です。
 
すでに弊社のCMS製品を導入していただいている法人のお客様は、製造業や航空業界、自動車産業など多岐にわたります。特定の業界に偏ることなく、さまざまな分野でBtoB企業様にご活用いただいているのが特徴です。
 
——BtoB企業の導入事例が増えてきた主な要因は何でしょうか?
 
要因の1つは、やはりコロナ禍の影響でBtoB企業においてもデジタル化の機運が高まったことにあると考えています。CMSはBtoC企業がやや先行して導入を進めてきましたが、近年は本格的に導入を検討されるBtoB企業様も増えてきました。
 
もう1つの要因として、BtoBのお客様には国内に留まらずグローバル規模でビジネスを展開されているお客様が多いことが挙げられます。複数の国や地域に拠点をお持ちのメーカーなどでは、グローバル市場を対象としたコンテンツが必須というケースも少なくありません。
 
複数の国・複数の言語でコンテンツの継承関係を保ちつつガバナンスを効かせ、さらに国や地域ごとの実態に合わせて変更するといった制御ができることはAdobe Experience Managerの強みです。こうした点を高く評価していただき、Adobe Experience Managerをご採用いただいたという事例も多々あります。
 
——Adobe Experience Managerで技術が花開いた、というイメージでしょうか?
 
その通りです。近年では、メーカー企業様がお持ちの3DのデータをWebサイトでも表現したいといったご要望も増えています。以前からアパレルメーカーの企業様などから多数のお問い合わせをいただいていたのですが、他業種のBtoBのお客様からも同様のご相談を承るケースが多くなってきました。
 
たとえば3Dに関しては、Adobe Substance 3Dという製品があります。本来はデジタルメディア側の製品のためCreative Cloudのラインナップに含まれるのですが、Adobe Substance 3Dで作成した3DモデルからWeb形式にエクスポートし、Adobe Experience Manager上で表現することもできるのです。こうした製品間のインテグレーションにより、BtoBのお客様のご要望にもお応えできるソリューションを実現しています。
 
具体的な事例では、カシオ計算機株式会社様にAdobe Substance 3Dをご利用いただいております。Webサイト上でG-⁠SHOCKを回転させて、さまざまな角度から製品を閲覧可能なリッチメディアの顧客体験を提供するために、Adobe Substance 3Dの技術が活用されているのです。
 
近年ではBtoC/BtoBを問わず、Webサイト上の情報を元に製品への理解を深めるのは一般的なことになりつつあります。取引先の企業様がWebサイトで製品情報を確認したのち、主に金額等について個別にご相談いただくといったケースが増えているようです。
 

グローバル規模のパートナーネットワークの強み

——日本以外にも拠点をお持ちですが、国内にはどのようなパートナー企業様がいらっしゃるのでしょうか?
 
国内には数十社のパートナー企業様がいらっしゃいます。Adobe Experience Managerに関しては、パートナー企業様は大きく3つのタイプに分けられます。
 
1つめは業務コンサルやDXのコンサルといった顧客体験のコンサルのように、上流工程を得意とするパートナーです。2つめはAdobe Experience Manager自体の設計や開発が得意なパートナー、3つめとしてはコンテンツやアプリケーションの運用といった、運用全般が得意なパートナーが挙げられます。
 
もちろん1社ですべての役割を担うことができるパートナーもいらっしゃいますし、パートナー同士でお互いの特徴を生かしながら共同でプロジェクトを進めるケースもあります。
 
——海外拠点とは、具体的にどのような関わりがありますか?
 
いくつかのパターンがありますが、1つの例としては日本発のプロジェクトでお客様がパートナー様を選ぶ際に、海外を含めてカバーできる企業を選ぶパターンです。あるいは、各ローカルのパートナー様をアドビから紹介するというバターンもあります。
 
他にも、アドビは北米やヨーロッパ、アジアをはじめ全世界の国や地域を網羅していますので、それぞれのリージョンに対してパートナーを紹介するケースもありますね。
 
——どこの国でも利用できることは、大きな強みですね。
 
CMSではグローバル市場を対象としたコンテンツを扱うケースが多いので、海外部門を含めた体制でプロジェクトがスタートすることはめずらしくありません。現地パートナー様との協業体制を構築できる点は、アドビのパートナーエコシステムの強みといえるでしょう。
 
——大企業でなくてもAdobe Experience Managerの導入は可能ですか?
 
結論からお伝えすると、大企業でなくても問題なくご活用いただけます。Adobe Experience Managerには「Managed Services」「Adobe Experience Manager as a Cloud Service」「オンプレミス」の3つの形態があります。
 
Managed ServicesとAdobe Experience Manager as a Cloud Serviceは、どちらもクラウド形態で提供しています。アドビが管理しているクラウド環境で製品が提供されるため、インフラの調達や保守をお客様ご自身で行う必要はありません。
 
セキュリティに関してもISO 27001やSOC2に対応していますので、安心してご利用いただけます。とくにAdobe Experience Manager as a Cloud Serviceは、ボリュームベースでのライセンス課金体系になっており、サイトの規模感に応じて導入できる点が大きなメリットです。大規模なシステムを必要としないお客様にとって、導入をご検討いただきやすい提供形態といえるのではないでしょうか。

今後の展望

——アドビの今後の展望について教えてください。
 
AIをさらに活用した製品開発がますます進んでいくはずです。Adobe Summit 2023では、画像生成が可能なジェネレーティブAIモデルを活用した「Adobe Firefly」のベータ版を発表しました。作成したい画像の内容をテキストで入力するとAIが自動的に画像を生成してくれるサービスです。
 
Adobe Fireflyが実現した背景には、画像のマーケットプレイスであるAdobe Stockというサイトの存在があります。Adobe Stockが保有する3億点以上の画像をAdobe Fireflyが活用しているのです。
 
今後、コンテンツのパーソナライズやオムニチャネル化が進むことによって、向こう2年間ほどで現在の5倍以上のコンテンツが必要になるとアドビでは考えています。こうした状況に対応していくには、AIテクノロジーを活用してより早くコンテンツを作成し、生成したコンテンツをマーケットに出品していく必要があるでしょう。アドビが目指す「Creativity for All (すべての人に「つくる力」を)」を達成するためにも、こうした機能を誰もが活用できる世界を実現していくことが求められていると考えています。


 
——マーケターがAIに代替されるというより、AIを活用していくイメージでしょうか?
 
マーケターの仕事がAIに奪われるのではなく、効果的に活用することでAIとパートナーシップを組むことになると考えています。マーケターはCo-Pilot(副操縦士)のような立ち位置で、AIと関わっていくことになるでしょう。
 
先ほど、向こう2年間でコンテンツが5倍のボリュームになるというお話をしましたが、たとえば1,000のプロダクトにそれぞれ25のアセットがある場合、これらを15箇所のリージョンに展開するとコンテンツ数は37万5,000になります。さらにパートナライズに伴い各コンテンツが改変されていった場合、ミリオンクラスのアセットを管理する必要に迫られるはずです。AIを活用することは、こうした膨大な量のアセットを適切に、かつ効率よく管理していく上でも重要なポイントとなるでしょう。
 
——膨大な数のアセットを管理するためのプラットフォームが求められているのですね。
 
ミリオンクラスのアセットを用意するとなれば、Adobe FireflyのようにAIを駆使して膨大な量のバリエーションをそろえる必要があるでしょう。今後求められる可能性の高いプラットフォームを、アドビが提供していきたいと考えています。制作すべきクリエイティブや管理すべきアセットが急増する時代にこそ、アドビのポテンシャルが発揮されるはずです。
 
 


 
Best of Adobe Summit – Japan Edition 2023
開催日時:2023年05月24日 (水曜日) 14:00
 
本イベントは、2023年3月21日(火)~23日(木)に米国のLas Vegasにて開催された​「Adobe Summit」での基調講演や最新テクノロジーなどを​日本の皆様に向けて凝縮してお届けします。
https://event.on24.com/wcc/r/4186425/CEA4A8E6D3705B0FED2204D25AAA8C8A?partnerref=psm01
 


 

【今井 徹氏 経歴】
前職の日系ベトナムオフショア開発企業でMagento Opensourceに出会い、2017年にMagento社シンガポールとパートナー契約締結。2018年にアドビがMagento社を買収後、日本で初のAdobe Partner Award Commerce(2019)受賞。国内最大手ネットスーパー、グローバル製造業B2B、玩具メーカーB2C、国内初のB2Cヘッドレスコマースプロジェクトなど、多くのコマース案件にプリセールス、マーケティング面で参画。2021年2月にアドビに入社。国内、国外のパートナー支援、エンゲージメントを通して企業のデジタルマーケティング強化に携わる。ネットワーク・インフラ分野のキャリアが長く、ネットワーク機器メーカー、データセンター事業社などで、データセンターの企画、Iaas/Paas/Saasのマーケティング業務を経験。

関連記事

デジタルマーケティングジャーナル 一覧